Discover us

私の好きな映画

趣味は洋画
2023/10/23 02:39

法廷映画の傑作に迫る その⑤

裁きは終わりぬ(1950年・フランス、モノクロ、102分)

 

この映画は「人が人を裁くことの困難さ」に主眼をおいた作品です。
「裁判員制度」と「陪審員制度」の相違点というむずかしい問題はあるものの、本作では7人の陪審員が登場、それぞれの人生観や宗教観までも口にしながら議論します。


そして、各々の人間模様が取り巻きの人々とともに描かれ、有罪か無罪かの評決に微妙に影響するのです。この一連の流れが、実に見事に描かれた秀作といえます。

 

裁判の開廷、扉が開き、被告人エルザ(クロード・ノリエ)が登場するシーンは思わず息をのみます。どんな人物なのだろう...(まるでマレーネ・ディートリッヒが登場するかのような興奮

 

彼女は情人をモルヒネで安楽死させた罪に問われ、裁判にかけられたわけですが、まったくの無表情で、発言にも感情の起伏がみられません。(概ね被告人はそうなのかもしれませんが)
演じたクロード・ノリエは、52年「赤い風車」(ジョン・ヒューストン監督)で主人公ホセ・フェラーの母親役を演じたのが印象深い...

 

7人の陪審員を俳優名で記すと、
ヴァランティーヌ・テシエ :未亡人の骨董商。ホテルで知り合った青年との関係に意味あり。
ノエル・ロクヴェール         :昔気質の退役軍人。若者に対する偏見のなか、娘には優しい。
マルセル・ペレス                  :働き者の農夫。法廷に出た留守中、妻を作男に寝取られる。
ジャン・ドビュクール         :中年のタイル製品商人。ミクラウン未亡人(V・テシエ)にのぼせる。
レイモン・ビュシェール     :カフェのボーイ。恋人との結婚を強く望んでいる。
ジャン・ピエール・グルニエ:カソリック信徒。一人息子がテンカンに生まれたことを悲観。
ジャック・カストロ       :身分の高い馬主。女性にだらしない色事師。

 

アメリカの法廷劇の名作、「十二人の怒れる男」(57年/シドニー・ルメット監督)と明らかに違うのは、陪審員全員のエピソードを描き、それが彼等の出す結論に大きく影響していること


本作に描かれるように陪審員達も日常に問題を抱えている。実際に裁判員だったアンドレ・カイヤット監督はそんな状況を提示しながら、果たして人が人を裁けるのかという陪審員裁判制度そのものに対する疑問を投げてくるのです。


突出した主人公という設定はなく、7人の陪審員、被告人、裁判長、そしてミシェル・オークレール演ずる被告人の恋人も含め、ほぼ同じレベルでの位置づけとなっています。
(クレジット順も定まった根拠はない)

 

ナレーターは俳優のピエール・フレネーです。

 

日本で裁判員制度が施行されたのは2009年5月21日。
私事ですが、それから3年後、候補者に選ばれて管轄の裁判所に出向きました。
残念ながら(?)抽選に漏れ、望みが絶たれたのが鮮明に甦ってきました。

 

この映画が公開されて73年が経っているのですが、まったく色褪せていません。

コメントする
1 件の返信 (新着順)
かずぽん
2023/10/24 11:04

本作、10年くらい前に観たことがありますが、ほとんど忘れてしまいました。
確か、安楽死つながりでの鑑賞のつもりが、実は陪審員制度の方がメインテーマだったのか…と思いました。

「人が人を裁くことの困難さ」は勿論、そのためには何が必要か?あるいは何を排除しなくてはならないのか?など、難しいテーマでした。
因みに、ディスカスで検索する時は『裁きは終りぬ』です。老婆心ながら…失礼しました。


趣味は洋画
2023/10/25 10:31

かずぽん(kazupon)さん
コメントありがとうございます。

そして私の間違いをご指摘いただき感謝しています。
誤「裁きは終わりぬ」
正「裁きは終りぬ」
ですね。

私が邦題を間違って投稿したものですから、担当スタッフの方にいつもお世話になっている「作品の画像」を添付していただくことが出来ず、イメージ画像となりました。
もっとも、私自身が画像検索して添付すればいい話なのですが、超アナログ人間のため果たせておりません。
いつもですと、作品画像が添付されて、その下に ‘作品登録はこちら’ という意味のような表示がされております。
(本作に興味を持たれた方のために)
この場をお借りして、本作はTSUTAYA DISCASさんでもリストイン可能であることをお知らせしておきたいと思います。

かずぽんさん、ありがとうございました。
これから広場のほうにお邪魔します。
2023.10.25
趣味は洋画

かずぽん
2023/10/25 12:18

画像を付けたり色々大変なんですね。私も超アナログ人間なので、お話を聞いただけでビビッてしまいます。
本当にお節介かなと思ったのですが、確かにディスカスでレンタルしたことがあるのに検索に引っかからないので不思議だったのです。試しに「クロード・ノリエ」で検索したら出て来たので気が付いた次第です。
でも、几帳面に情報を整理されている洋画さんなので、このマガジンへの投稿は洋画さんに合っていると思います。これからも楽しみに拝読させて頂きます。

趣味は洋画
2023/10/25 18:22

ありがとうございます。