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Stella
2025/05/15 23:16

コクトーの「人間の声」をもとにした映画

◆コクトーの戯曲「人間の声」が原作の映画

 フランス映画ではないが、新旧のジャン・コクトーの戯曲「人間の声」をもとにした映画をご紹介する。オペラ作品でも45分の短いもので、抒情悲劇になる。

◆「アモーレ(L’amore) 」(1948)

 イタリアの ロベルト・ロッセリーニ監督の作品で、「アモーレ」の中の第1話「人間の声」になる。アンナ・マニャーナが主演する。

 アパートで絶望し、一人ぼっちの名もなき女性が、かつての恋人と電話で最後の会話をしている。彼は彼女に手紙を返すように頼む。二人の会話が何度も中断されるうちに、男が彼女を捨てて別の女性のもとに行ったこと、そして彼女が悲しみのあまり自殺を試みたことが明らかになる。最後のお願いとして、彼女はかつて彼と彼が滞在したマルセイユの同じホテルに彼女を連れて行かないでくれと彼に懇願する。


◆「ヒューマン・ボイス(The Human Voice) 」(2020)

   スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督がパンデミック下の2020年夏に、様々な安全基準の制約の中で撮り上げた自身初の英語作品の短編映画。「人間の声」を原作に、去っていった恋人からの連絡を待ち続ける女性の3日間の心の軌跡を、イギリスの女優ティルダ・スウィントンの一人芝居で描いていく。30分の短編になる。

 
 
(c)El Deseo D.A.

 ◆所感

 2つの作品を比べてみて、まさに、2020年は電話が受話器なしの携帯電話になっている。「ヒューマン・ボイス」の方は、主人公の女性がまだエネルギーをもっている様子がつたわる。後半は破滅的な状況で終わる。

 「アモーレ」の「人間の声」は結構原作に忠実に描かれていて、字幕にはないがベルサイユ等も出てくる。「ヒューマン・ボイス」も、女性の友人の名前はマーサで原作のフランス語のマルトと同等である。

「ヒューマン・ボイス」は、プチブルジョアの婦人のスタイリッシュなインテリアやおしゃれな洋服等が登場し、まさに俯瞰された作りになっている。ここはティルダ・スウィントンに合わせた洗練された舞台になる。

 それに較べると「アモーレ」の「人間の声」は、アンナ・マニャーナでイタリア語とあって、悲痛で人生に疲れた様子が全面にでている。庶民的であまり品格は感じられない。


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