季節を先取り・・・秋冬に観たくなる北野作品(DOLLS、キッズリターン)
Dolls 平成14年(2002年)公開
恋と乞い。切なくそこはかとない感情に揺さぶられる作品。
この作品を観終わった時に、互いの「気持ち」ってわかっているの?と 北野監督から突きつけられた感覚なる。
ストーリーは近松門左衛門作の「冥途の飛脚」(めいどのひきゃく)人形浄瑠璃の演目のひとつをモチーフとした男女3組によるそれぞれの悲哀をあらわした。これまでのバイオレンス作品よりも「残酷な現実」を突き付けられる。秋になると無性に観たくなる。 月夜の晩、余韻に浸れます。
映像美と音楽の絶妙な調和のとれた作品で北野監督ファンの中でも評価が高い。
愛と死。
この作品のテーマは愛と死。これまでの他の作品は愛のための「死」は美化をしているイメージ。
ドールズでは愛で死を包み込んでもやっぱり死は「残酷」なものと感じる。映像美もさることながらいろんな感性をもって観る事も出来る作品です。北野流の恋愛映画をご堪能下さい。
Kids Return (キッズ・リターン) 平成9年(1996年)公開
冬空をイメージさせる映像美と童心に帰るような声で始まる音楽が高揚感を上げる。同級生ながら上下関係のあるマサルとシンジを中心とした北野監督の”フィルター”を通した「恋愛模様がほとんど描かれていない青春物語」
名台詞の背景
シンジ(安藤政信):マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかなぁ?
マサル(金子賢):バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ!
このセリフを「バカヤロー、まだ始まってもいねぇよ!」と少し変わった形で覚えられているセリフでもあります。私自身の事で恐縮ですが事故の後遺症で自暴自棄になっていた時、なんとなく再視聴して このセリフとシーンが心に残り、自分にとって「生きる原動力」になった言葉でもあります。
このセリフにはバイク事故後の監督自身の思いが投影されている。もうたけしは終わった!再起不能などの報道が目に着いた。その時に「冗談じゃない!まだ終わっても、始まっちゃいねぇよ!」との心境がこのセリフに込められたと思う。
北野武監督自身の「キッズリターン」
キッズリターンはシンジとマサルの甘酸っぱさ0の青春物語。
実は作品の内容については若い時の北野監督が経験してきた事(漫才コンビ結成、ボクシングジムへ通う、タクシーの運転手、ジャズ喫茶店のボーイ等)を出演者に投影した作品でもある。ヤクザ世界には多分憧れの思いがあったのかと思う。まさにキッズの頃にリターンした物語。