2025年に観た映画(2) 「型破りな教室」

基本、実話を基にした映画を良しとしません。冒頭で"Based on a True ..."とか出てくると、またかと溜息つきたくなります。「事実は小説よりも奇なり」を認めてしまってどーすんの?と思うし、ズルくね?とも思ってしまう。事実のなぞり方も様々ですが、お決まり事のようにそのエンディングで実在する本人が登場したりするのも、なんだかなぁって感じです。フィクションを現実と混同するのは少々危険だとも思います。
と言いながら、映画の出来が良ければそんな(屁)理屈も吹っ飛んでしまう。振り返ると2017年公開の「ドリーム」には★5付けていました。
本作もまた、そんな1作になってしまいそう。
犯罪が日常と隣り合わせの治安最悪なメキシコのとある町を舞台に、学力テストの成績も全国最下位の小学校に赴任した一人の教師が、淀み切った教育の現場に活気をもたらすお話。
子供達を危険から守る城塞のような小学校というのは外国の風景として何度か目にしていますが、通学路に死体が転がっているのはなかなかお目に掛らない。町も学校も荒み切った中で、教師セルヒオが始めたマニュアル無視の課外授業が面白い。
本作で描かれるのは、「教える」&「学ぶ」事の本質的な大切さ。正解のない教育の現場で、それも最低な現場で、型破りな教師が生徒のやる気を引き出すところまでをとことん正攻法で描き切る。
元来、先生と生徒が主人公の、教育現場を舞台にした映画ってのをあまり観ていません。映画としてのお伽噺の舞台として、あまり食指がそそられない。桜中学校の3年B組が観応えあったのは金八先生≒武田鉄矢の個人プレーであって、新八や仙八や寛八じゃダメなんです。
この点において、本作で教師セルヒオを演じるエウヘニオ・デルベスは「コーダ あいのうた」でも魅力的な先生役を演じていた。もしかして只者じゃないかも!
この新任教師の活躍で、
「クラス全体の成績は飛躍的に上昇。そのうち10人は全国上位0.1%のトップクラスに食い込んだ!」
のだそうですが、実在するセルヒオが現実世界でどんな魔法を使ったのかは判らず仕舞い。生徒のやる気スイッチを押しただけでは、そんな成果が上がる訳がないので、この宣伝文句はちょっとズルい。
とはいえ本作は現実の問題に向き合いつつ、教育に必要な熱量を失わない大切さをちゃんと訴えてくる。全国の教師の皆さんが本作を観たらモチベが上がるのか、反感覚えるのか、はたまた意気消沈してしまうのか、感想聞いてみたいです。
№2
日付:2025/1/11
タイトル:型破りな教室 | RADICAL
監督・脚本:Christopher Zalla
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン3
パンフレット:あり(¥800)
評価:7.5





<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー
・プロダクション・ノート
・ディレクターズ・ノート
・スタッフ
・キャスト
・レビュー 大場正明(映画評論家)
・レビュー 子どもと教育 養老孟司(解剖学者・東京大学名誉教授)
・レビュー 呉美保(映画監督)
