ハロウィン🎃記念 ゾンビになりたい人へ~ゾンビ初級講座(笑) ①~
とりっくおあとり~~~~とォ!!!
元気ですかぁ!椿です。
もうすぐハロウィンがやってきますね。
私が子供のころなんて、ハロウィンといえば、カーク船長のマスクをかぶった殺人鬼が肉切り包丁を持って人を殺しまくるという印象しかなかったけれど、今や、渋谷で仮装した大人が集まり大騒ぎして問題になったり、私が住んでるようなその辺の町中でも、子供達が仮装して練り歩くなんて姿を普通に見かけるようになりました。世の中、変わるものだわ。
さて、そんなハロウィンの仮装ですが、最も人気のある仮装(コスプレ?)がゾンビの仮装なのだとか。確かに、顔を白く塗って口元あたりに血のりを付けて心ここにあらずなようにぼーっとした表情をしていればある意味成り立ってしまう。コスパの良いハロウィンコスプレなのでしょうね。
ところで、皆さんは「ゾンビ」というと何を連想されますか?
・蘇った死体
・人肉を食らう
・動きが遅い
・頭を破壊すると死ぬ
・噛まれるとゾンビになる
こんな感じでしょうか?
でも、このほとんどが古くから伝わる「ゾンビ」の定義ではなく、1968年に公開された「ある映画」によってもたらされたことを、皆さんはご存知でしょうか?
ゾンビとは?
南米ハイチの伝承宗教「ブードゥ教」の呪術師〝ポゴール”によって蘇らされた死体。それが「ゾンビ」と呼ばれるものの正体。
これはハイチに渡りブードゥ教の呪術師と生活を共にしたW・シーブルックが1920年代に記した書籍により文明社会たるアメリカに紹介された初の「ゾンビ」です。
実際にシーブルックは著書の中でゾンビを目撃したことを記載しています。焦点の定まらない目をして農作業に従事させられていたとのこと。ゾンビは犯罪者の死体で、生前の罪を償わせるために呪術師が蘇らせ、労働をさせる。当然食料なども必要なし、疲れを知らないので労働力としてうってつけだったわけです。
また、その後の研究ではゾンビパウダーなる、猛毒テトロドトキシンを含有する粉の存在が登場。ゾンビとはその粉を擦りこまれて仮死状態になった人間だ、とも言われています。
まあ、そもそも「呪術により死者がよみがえる」というオカルトな話なので、真偽のほどは定かではありませんが、シーブルックの著書によりゾンビ人気が高まり、1930年代には初のゾンビ映画が製作されます。
ゾンビが銀幕に
※以下、リンクの貼ってある作品名をクリックするとレンタルまたは配信サイトに飛びます
それが『恐怖城(ホワイトゾンビ)』という作品。
二人の男が一人の女性を取り合うというドラマに呪術師が割り込み・・的なお話。前年にユニバーサルのホラー二大看板『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』が製作されホラーが大人気になったところを弱小映画会社のプロデューサーが目をつけたのが「ゾンビ」。ユニバーサルのセットを借り、魔術師役に『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシを起用。折からのゾンビブームも手伝いヒットを記録します。
その後、その人気を追うように次々とゾンビ映画が製作されます。そのほとんどが低予算で作られ、歴史に埋もれそうな作品ばかりですが、そんな中には 『月光石』や『ブードゥリアン(私はゾンビと歩いた!)』といった傑作ホラーも何本か含まれます。
ただ年月が経つにつれ、ドラキュラやフランケンの怪物等の人気モンスターたちがたどったように、「恐怖」の対象から「笑い」の対象へと扱いが変わり、やがて忘れ去られる存在となってしまいます。
1950年代後半より、イギリスのハマーフィルムがかつてのユニバーサルホラー映画の花形だったドラキュラやフランケンの怪物を総天然色で残酷シーンを織り交ぜながらよりスピーディにスタイリッシュに蘇らせると、再びホラーブームが巻き起こり、アメリカでも再度ホラー人気に火が付きます。
生きる屍(しかばね)の夜
そうして1960年代。ゾンビ映画史に燦然と輝くある男とその作品に多大なる影響を及ぼす映画が何本か製作されます。なかでも『地球最後の男』と『恐怖の足跡』はその代表的な2本。『地球最後の男』はリチャード・マシスン原作による作品。謎のウィルスが地球上に蔓延し、人々は死に絶え吸血鬼になってしまう。ただ一人生き残った医師が夜になると自分を襲いに来る吸血鬼を殺すため昼間のうちに吸血鬼討伐に向かうという話。『恐怖の足跡』は交通事故で九死に一生を得たオルガニストが、事故以降、謎の男に追い回される幻覚を見る。がやがて、だんだん自分を追い回してくる人数が増えてきて・・・という話。
あらすじだけ見ていると『恐怖の足跡』の方はあまり関係ないように思われるけれど、両作とも、ゾンビの表現方法がのちの作品に色濃く反映されいています。この2本に強い影響を受けたという事は、その男本人が語っているので間違いありません。
そして1968年。この年は『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』といったSF超大作が発表された年。まさに同じ年、映画界を、そしてのちに社会現象にまでなる作品の原典となる映画が発表されます。その映画が『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』です。監督はジョージ・A・ロメロ。
そう、この映画こそ、そしてロメロ監督こそ現在のゾンビの原型である「死体がよみがえり、生者を襲い肉を食らい、襲われた者もまたゾンビになる。息の根を止めるには頭を破壊する以外に方法はない」というスタイルを作り上げたのです。
母親の墓参りにやってきた兄妹。そこで女性が謎の男に襲われ、助けようとした兄は男に殺される。逃げ回りとある一軒家に身を隠す女性。しかし、家の周りには続々と変質者が集まってくる。やがて、その家に逃げ込んできた黒人男性。さらに家の地下室に身を隠していた1組のカップルと親子連れが現れる。一軒家に籠城するうち、大量の変質者に囲まれてしまう。テレビでも暴徒に襲われる事件を報道しているが、やがてそれが、死んだ人間であり、彼らは生者の肉を食らうということが分かる・・・。
息が詰まるようなヒリヒリした人間ドラマが展開し、家の外では何百といううごめく死体、中では仲間割れというサスペンスな展開。そして待ち受ける衝撃のラスト・・。
人肉を食らうという直接描写は必要最小限度なうえ、モノクロ映画なので残酷な描写もほとんどない。しかし、非常にドラマチックなコワさを持った作品で「アメリカ国立フィルム登録簿」に永久保存されることになりました。
本作は非常に驚きをもって迎えられ、深夜のドライブインシアターでの熱狂的な若者の支持により大ヒットを飛ばします。アメリカだけではなく、ヨーロッパでも高い評価を得ます。
ロメロによって「ゾンビ」の存在が大転換したことから、「ゾンビ」映画をロメロ前、ロメロ後で評価されるようになり、ロメロ後のゾンビのことを「モダンゾンビ」、それ以前のものを「古典ゾンビ」とゾンビ研究家の中では定義されてもいます。
ですが、この「ゾンビ」が世界中を席捲する存在には、実はまだなっていないのです。日本では当時劇場未公開でしたし、アメリカやヨーロッパでも亜流作品が生まれましたが、映画界に影響を与えるといったほどの作品でも量でもありません。
ちなみに日本で初めて「人の肉を食らう」「襲われたらゾンビになる」ゾンビを登場させた映画が公開されたのは、日本でオカルトブームが起きていた74年のイタリア・スペイン合作で作られた『ナイト~』の亜流作品『悪魔の墓場』です。(この『悪魔の墓場』はカラーで裸女の臓物を搔きむしりだしたり、目玉をくりぬいてムシャムシャしたりといった、本家もびっくりの残酷描写がふんだんに収められた、「怖いゾンビ映画」と評価の高い作品です)
世界中を席捲することになる「ゾンビ」の登場は、『ナイト~』の10年後。またしてもあの男による一本の映画の登場を待つことになります・・・
(ゾンビ初級講座②に続く)
【編集後記】
一本のコラムでゾンビ映画を俯瞰しようと作り始めましたが、相変わらず長くなってしまい、結局複数回に分けることにしました。ここまで読んでくださった方にはとても感謝です。
ゾンビ映画に興味がある方でしたら、少しは役に立つコラムかもしれませんが、そもそもそんなにゾンビに興味のある人が居るのか?という不安と、ゾンビ好きの人にとっては、みんな知ってるようなことばかり書いてあって楽しんでいただけないのでは?という更なる不安をもって書いてしまいました。
第二弾はハロウィン終了後になっちゃうなぁ・・。
ダメだこりゃ。
あなたに素敵な映画ライフを送っていただける一助になれたら幸いです。
それでは第二弾でまた、お会いしましょうっ!