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私の好きな映画

cine-ma
2023/10/14 21:48

2023年に観た映画(36) 「アンダーカレント」

昔「(原作を)読んでから見るか、見てから読むか」って角川映画のキャッチコピーがありましたが、駄作はどんな順番で観ても駄作。問題はそれが良作の場合。

銭湯を営むかなえ(真木よう子)の前から消えた男と現れた男。かなえが営業を再開した6月からの半年間の日常を、ゆったりとした時間の流れと居心地の中で描きながら、各々が抱える秘密を少しずつ紐解いてゆく。
2時間23分の長尺でありながら、最後までダレない、飽きさせない。一見長閑でありながら、かなえの抱えるトラウマが観客の不安感を煽る。それが徐々に正体を現すことで居心地の土台が崩れてゆくのですが、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太の3人の男性が各々のスタイルで真木よう子と対峙するその関係性が、最後まで心地好くこの世界を保ち続ける。

作品を観終わってから、原作が漫画であることを知った。電子版でその冒頭を試し読みしたところ、映画の出だしが原作の完コピに近い事もそこで知った。
実にマイナーな作品でありながら、国内外で評判を得ていた原作を購入。

たまたま漫画という表現手段で描かれた「アンダーカレント」という秀作。自分の奥底をオブラートに包んだままのナイーブな男女3人が、図らずも周囲の力(心優しいおせっかい)を借りながら前に進むお話。
原作の存在を知らなかったので、「観てから読む」順番にならざるを得ませんが、本作のおかげで原作にも出会えたのは幸運でした。順序の是非は何とも言えませんが、この映画を論じるには原作も読んでおかないと始まらない気はした。かなえと堀(井浦新)の出会いのシーンとか、実写化の醍醐味をすごく感じる。本作は、原作を大切にしながら映画化に成功した好例となるのでしょうが、やはり一点だけ引っ掛かる。
アカデミー賞などは「脚本賞」と「脚色賞」という具合に明確に分別していますが、例えば台詞の大半が原作通りの本作などは、エンドロールで「脚本 澤井香織/今泉力哉」とクレジットする事に対して何の躊躇いも後ろめたさも感じないのだろうか?とは思った。

今泉力哉作品は、淡々とどこか捉えどころがないまま終わっていきながら、後を引く作品が多いような。この原作との相性の良さも見て取れました。

№36
日付:2023/10/9
タイトル:アンダーカレント
監督・共同脚本:今泉力哉
劇場名:小田原コロナシネマワールド SCREEN7
パンフレット:あり(¥900)
評価:6

(c)豊田徹也/講談社 (c)2023「アンダーカレント」製作委員会
(c)豊田徹也/講談社 (c)2023「アンダーカレント」製作委員会
(c)豊田徹也/講談社 (c)2023「アンダーカレント」製作委員会
(c)豊田徹也/講談社 (c)2023「アンダーカレント」製作委員会
(c)豊田徹也/講談社 (c)2023「アンダーカレント」製作委員会

 

パンフレット(¥900)

<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー
・相関図
・キャスト
・対談 真木よう子×今泉力哉
・スタッフ
・原作者コメント
・レビュー 森直人(映画評論家)
・レビュー 吉田大助(ライター)
・プロダクション・ノート
・クレジット

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1 件の返信 (新着順)
じゅーん バッジ画像
2023/10/16 15:01

台詞までほとんど同じだったんですね!
私も同じく今泉力哉監督との相性がバッチリな作品だと思いました!


cine-ma
2023/10/18 03:20

コメントありがとうございます!
はい、重要な台詞の大半はほぼ原作の通りでした。