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椿五十郎 バッジ画像
2023/11/01 01:20

あ~あ、ハロウィン🎃に間に合わなかった・・ゾンビ初級講座(笑) ②

    👆ジョージ・A・ロメロ                           nicolas genin - originally posted to Flickr as 66ème Festival de Venise (Mostra), CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7936953による

みなさんこんにちは

 

椿です。

 

さてさて、お待たせしました!(誰も待っちゃいない・・

(;^_^A)

ゾンビ初級講座の第二弾、始まり始まり~っ

 

前回は…

 

・そもそも「ゾンビ」とはブードゥ教の呪術で蘇らされた死体。労働に従事するために生き返ったのであって、人間を襲ったり、襲われた人が「ゾンビ」になることはない

・1930年代から始まった、第一次ゾンビブーム(多数の映画に登場)
・現在の「ゾンビ」像を確立した作品はジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』である。

・ロメロ以前のゾンビを「古典ゾンビ」、ロメロゾンビ以降を「モダンゾンビ」と呼ぶ

 

とまとめました。

 

さぁ、今回は、世界中に最も強烈な印象を与えたゾンビ映画を紹介します。

 

死者の夜明け

 

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でモダンゾンビの基礎を作り上げたジョージ・A・ロメロ。この後、ホラーを中心に地道に映画をつくってゆきますが、最大のヒット作である『ナイト~』の続編の企画を温めていました。
その続編は、前作よりもスケールの大きなものになりそうで資金的にかなり厳しい。

と、『ナイト~』続編の企画の噂を聞いた、世界的著名なホラー監督が、製作の協力に手を挙げたのであります。彼は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にいたく感銘を受けていたのです。
その監督の名は、イタリアホラー界の巨匠。ダリオ・アルジェントその人であります。ダリオ・アルジェントといえば、すでにその時点で『サスペリア2(赤い深淵)』『サスペリア』、その他ゴア描写を取り入れたサスペンス「ジャーロ」もので世界中に名を馳せていた監督さん。その彼が、欧州を中心とした、アメリカ以外での配給権を持つことを条件に、ロメロの新作に資金提供をしたのです。

 

そうして作られた映画が、ゾンビ映画史上、ホラー映画史上、いや、映画の歴史上の最も重要な位置付けとなる作品となり、映画はおろか、小説、テレビ、ゲームなどのサブカルチャーや、大学の学問にまで影響を及ぼすという、ゾンビを社会現象にまで祭り上げてしまったのです。

 

その作品が
 

『DAWN OF THE DEAD』。日本公開名はそのものズバリ

 

(c)1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.

『ゾンビ』

 

【あらすじ】
物語は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』から、おそらく数日後。
既にものすごい勢いで死者が蘇り軍隊の規制線を突破。大混乱の社会の様子を報道するテレビ局。ゲストの学者が「死人が出ても悲しむ暇も、丁重に弔う暇もない。即焼き尽くすこと。そうでないと蘇り生者の人肉を食らうようになる」と警告するも、その学者の説が信じられない者も多く、混乱しながらもテレビ放送を続けるテレビ局員のフラン達。しかし、フランは恋人のスティーブンとともに、ヘリでこの混乱した状況から脱出を試みる。スティーブンの友人のSWAT隊員ロジャーと、その同僚ピーターも同乗。飛行途中で見つけた巨大なショッピングモールへと籠城し、モール内のゾンビを一掃して、自分達の城として優雅に生活を送るもつかの間、突然モールに、もはや私設軍隊と化した暴走族の集団が乱入。そのせいで大量のゾンビもモール内になだれ込む。ゾンビと暴走族相手に戦争を強いられるスティーブン達。果たして、彼らは無事生き残れることはできるのだろうか・・・。
 

 

モノクロだった前作からカラーへと移り、大量の血のりと食いちぎられる腕や首、腹から引きづりだされる臓物、ライフルやナタで破壊される頭部と、残酷描写がスクリーンいっぱいに展開され、公開当初の観客の衝撃はすさまじいものでした。それまで公開されたどのホラー映画よりもおぞましく、大量かつリアルな人体破壊描写。それは、残酷描写に慣れきってしまった現代のホラーファンが今見ても、ワンシーン、ワンシーンがとてつもなく印象に残る、まさに伝説。

 

その残酷描写を担当したのは、ロメロと同郷のメーキャップアーティストのトム・サヴィーニ。ベトナム戦争の従軍カメラマンだったサヴィーニは戦地で見た、破壊された人体という恐ろしい光景を本作にあらんかぎり叩きつけました。その仕事が高く評価され、以後、人体破壊と言えばサヴィーニ、と言われるほど、様々なホラー映画に参加。『13日の金曜日』『マニアック』『バーニング』『ローズマリー』『悪魔のいけにえ2』等といった80年代スプラッターホラー映画ブームのけん引役として大活躍し、後続のメーキャップアーティストにも多大な影響を与えます。
(ちなみにサヴィーニは本作で役者とスタントでも参加。暴走族の司令塔のような役でかなりカッコイイです)

 

しかし、この作品が伝説と呼ばれる所以は残酷描写だけではありません。物語、登場人物の描写、だんだんと破滅に向かってゆく社会状況。このどれもがしっかりと作りこまれていて、「ディザスタームービー」としても引き込まれるし、よく言われることですが、ショッピングモールに大量に集まってくるゾンビをして、「大量消費社会への揶揄」が物語全体のテーマになっているところが、この作品に大きな深みをもたらしています。

 

また、大切な人、仲間がゾンビになってしまったらあなたはどういう決断をくだすのか。人間の尊厳とは?それも、深く問いかけてきます。

 

そして冒頭の混乱するテレビ局の描写からして、もう引き込まれるのですが、全編、ドキュメンタリー的な乾いた質感により、ゾンビに席捲されてゆく社会状況を、何か第三者の目、ニュース番組を通してみるような感覚にとらわれ、それがリアルな物語として感じられてしまうのも、ロメロの巧みな演出によるものです。

 

そのドキュメンタリータッチな一方で、痛快な娯楽要素も盛り込まれているところが本作の人気な点。アルジェントの参加により、彼の作品に欠かせないプログレッシブロックの旗手ゴブリンが音楽を提供。要所要所で彼らの音楽がかっこよくぴったりとハマり、アクション映画としての面白みも味わえます。

(c)1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.


『ゾンビ』日本では・・・

 

「地獄の底から這いだして、ゾンビが食う、人間を食う!残酷映画史を真紅の血糊で塗り替えた驚異のスーパー残酷!肉をくれ!もっと若い肉を!」

 

という、いかにもな当時のおどろおどろしいキャッチコピーですが、まぁ、まったくこのとおりの残酷描写てんこ盛りで、リアルタイムで鑑賞した観客を震え上がらせ、また、大興奮の渦に巻き込みました。
当時のコンテンポラリーダンスの舞踏団を宣伝に駆り出し、ゾンビの恰好をさせ都会の町を練り歩かせたなんて宣伝もしたそうです。

 

ところで、『ナイト~』でも『ゾンビ』でも、何故死体が蘇ったのかの原因は言及されていません。何かの感染症なのか?放射能なのか?ニュースの中で原因について触れられる箇所はあっても、はっきりとした理由はわからず仕舞いです。

 

しかし、なんと日本公開版ではその原因を冒頭で言及してしまいます。巨大隕石が地球に衝突するパニック映画『メテオ』での惑星爆発シーンを映画の頭に挿入して「惑星爆発により発生した放射線が地球に降り注ぎ・・」それがゾンビ発生の原因としてしまったのです。

 

また、日本での配給権もダリオ・アルジェントから得たものだったため、いろいろなシーンをカットされて短い時間となったアルジェント版(アルジェントが本作に手を加えヨーロッパ公開したもの)を基にしたものを、更に残酷描写を大量にカットしたり、モノクロにするなどの処理を施し、残酷描写がマイルドにされて公開。それでも、その残酷さに観客は熱狂しました。
 

そして、ロメロよりもアルジェントの方がネームバリューが高かったため『ダリオ・アルジェント監督作品』として紹介。ロメロは共同監督みたいな形で小さな扱いで紹介されるにすぎませんでした。

 

数年後、テレビ放送されるのですが、これがファンの間では『ゾンビ サスペリア版』として語り草となります。使用された音楽が同じゴブリンのものでも、「ゾンビ」の曲は一切使用されず「サスペリア」の音楽が使われたのです。これは、洋画をテレビ放送する際、吹き替えバージョンを作るにあたり、フィルムとサウンドトラックが権利元から送られてきて作成するらしいのですが、テレビ放送までに、音楽を収めたサウンドトラックがテレビ局に届かないというハプニングが発生。苦肉の策で、同じゴブリンだからいいか!とサスペリアの曲を使ってしまった、とのことです。当時はともかく、今では世界の「ゾンビ」ファンにも「貴重な」バージョンとされています。

やがてレンタルビデオ黎明期となる80年代。様々な映画がビデオ化される中、ホラー映画、とりわけ残虐シーンを盛り込んだ「スプラッター映画」が大ブームとなり、ビデオ業界のドル箱となると、にわかに、あの名作『ゾンビ』のビデオ化が望まれます。この時点では、『ゾンビ』の監督はアルジェントではなく、ロメロであるという事実は広く知られるようになりました。また、ファンの間では、日本で公開された作品よりも時間の長い127分の映像が存在することがわかり、ついに、その127分版がビデオ発売されレンタル市場に出回ります。もともとの「ゾンビ」原典版にかなり近く、残酷描写もしっかり挿入され、このビデオ版で『ゾンビ』に夢中になる人間が増殖しました。
 

この127分版が、現在ディスク化されている『ゾンビ 米国公開版』です。

ちなみに、『ゾンビ』ビデオ化とほぼ時を同じくして、ロメロの監督作の中でも面白いとされた日本劇場未公開の3本『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『マーティン』『ザ・クレイジーズ(テレビ放送のみあった)』も同時にビデオ化されています。

 

このビデオ等ですっかり『ゾンビ』に感化された人々が更に研究を重ね、「更に長いバージョンが存在する。カンヌに出品したやつがある!」と発掘された137分の『ディレクターズカット版』、アルジェントが欧州で公開、アルジェントが音楽やカットを施した119分の『ダリオ・アルジェント版』を同時に劇場公開。そして現在は両バージョンともディスク化されて見ることができます。

ディレクターズカット版は、音楽が既存の音楽集からロメロが選んだ曲が多く使われていてゴブリンの曲はそう多くない。更に重く暗い方向に話が進む感じがする。逆にアルジェント版は軽快なゴブリンの曲を多数使用し、ドラマシーンをカット、快活なテンポで物語が進む換わりに物語の深みを犠牲にしてしまった感は否めません。

 

そしてそして、日本公開40周年を記念して『ゾンビ 日本公開復元版』なるものがクラウドファンディングで資金を集め製作されました。冒頭の惑星爆発シーンも再現、残虐シーンのカットや特別なフィルター加工も再現して、日本劇場公開当時の再現を見事成し遂げ劇場公開されました。なお本作はクラウドファンディングの謝礼品としてディスクが配られたのみで市販されてはおりません。

 

 

日本でこれだけもりあがった「ゾンビ」
熱狂的ファンがもちろん欧米中心に世界中にごまんといて、本作に大いに刺激された人々がやがて、映画製作に、ゲームクリエイターに、小説家に、アニメーターになり、『ゾンビ』を基礎におきながら、それぞれのフィールドでゾンビ増殖計画を実行してゆくのであります!!
 

今回は、最も世界中に影響を与えた作品『ゾンビ』について書きました。
次回、そのゾンビの世界が映画の中でどう広がっていったのか、みてゆきたいと思います。

👇ディレクターズカット版とアルジェント版のビデオが発売された際の広告映像です





 

 


 

 

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