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Stella
2024/03/27 21:02

「アマンダと僕」(2018)から:「エルヴィスは建物を出た(Elvis has left the building)」

■はじめに

 横浜フランス映画祭2024の初日に、「愛する時」(2023)ヴァンサン・ラコストが登壇し生の声を聴いたり、最近「緑の香水」(2021)や「幻滅」(2022)等も鑑賞し、”好きな映画”で投稿しているので、その他の作品も見て観ようと思った。しかしながら、彼はまだ30才という若い俳優さんだけど、役柄の影響はあるものの、あまりスマートで器用なタイプではないけど、素直そうな感じが好印象なので、もう少し映画情報を整理して取り上げてみたい。

 

■「アマンダと僕(Amanda)」(2018)の作品概要

   この映画の存在は、以前から知ってはいたものの、借りて視聴する候補に挙げることがなかった。また、セシル・ドゥ・フランス主演の「少年と自転車」(2011) の様な作品なのかなと勝手に想像していた。

 映画の内容は、ある日突然、無差別テロで大切な姉を失い、遺された7歳の姪を引き取ることになった青年ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)の戸惑いと、一緒に暮らしていく中で次第に芽生えていく確かな絆を描いたヒューマン・ドラマ。監督は長編3作目のミカエル・アース。

■ダヴィッドの周辺の人々と慣用句“「Elvis has left the building(エルヴィスは建物を出た)」”

 パリでマンション管理等の便利屋として働くダヴィッドには、シングルマザーで英語教師の姉がいて、時々7歳の姪アマンダの面倒も見ている。リオンからパリにやって来た美女レナとは恋人同士。テロで仲の良い姉を亡くしレナも手に重症を負いピアノを教えることができなくなった。アマンダの面倒をみてくれる父方の叔母もいた。最後に、幼い頃に去っていった実母とはロンドンで再会したが・・・。決して恵まれた家庭環境ではなかった様子。★急な事件(事故)によるロスや不幸なできごとがかさなり逆境にあいながらも、最後はアマンダの面倒を見る決意をし、レナとの関係も継続させる決断をしている。

(c)2018 NORD-OUEST FILMS - ARTE FRANCE CINEMA
(c)2018 NORD-OUEST FILMS - ARTE FRANCE CINEMA

   娘が母親に「Elvis has left the building」の意味を訪ねたところ、英語の慣用句で、もともとエルヴィス・プレスリーのコンサートが終わっても、会場を去らない観客に向かって、「もう帰って欲しい」という意味で放たれた言葉だと説明している。このあとで、エルヴィスの「Don’t Be Cruel(冷たくしないで)」に合わせて楽しそうに踊り出すが、もともとは「楽しいことは終わった」、「望みはない」や「おしまい」等のネガティブな言葉らしい。❤今回はセリフではないが、フランス映画の中で話題となった英語なので取り上げてみた。

(c)2018 NORD-OUEST FILMS - ARTE FRANCE CINEMA

 ■この映画の印象

 2015年の同時多発テロの社会情勢の変化が背景にあるとは思わなかったので、話の展開にはかなり驚いたのだけど、主人公も姪もポジティブに生きようとする姿に清々しい気持ちになり、感銘を受けた。不安な時代だからこそ、他人事ではない等身大の映画という意味では名作である。東京国際映画祭の受賞は納得できる。

 ミカエル・アース監督の、「午前4時にパリの夜は明ける」(2022)も早く観てみたい。

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