石橋正次の出演映画
石橋正次は48年生まれ。本名は字面は同じだが「マサツグ」と読む。小学生の時、児童劇団に入団。親に無理矢理入れさせられたのだという。舞台専門だったのか映画やテレビなどの出演記録はない。そのうち舞台俳優を目指すようになり、高校卒業後に新国劇に入団した。新国劇は日本史の教科書にも出てくるような劇団だが、剣劇を主としていた。緒形拳や若林豪などを輩出したが、やはり新国劇といえば、辰巳柳太郎と島田正吾のイメージであろう。31年に共に当時26歳だった二人が主役に抜擢。87年に劇団が解散するまで、50年以上そのも中心であり続けたのである。まあ、その後継者が作れなかったということでもあるのだが。
数本のテレビドラマに出た後、日活映画のオーディションを薦められ合格。それが「非行少年若者の砦」(70年)であった。監督は藤田敏八で、藤田自身で面接を行ったらしいが、石橋はそれを知らず「監督はどこですか?」と言ってしまったと本人が語っていた。
逆に気に入られたのか、石橋は主役の高校生に抜擢される。ただクレジットは二番手でトップは地井武男であった。他に南田洋子、江原真二郎、伊丹十三といった他社で活躍していた面々に加え、松原智恵子、梶芽衣子、隅田和世といった顔ぶれ。変わったところでは、音楽担当の稲垣次郎がバーマスターの役で出演している。
そして、次に出演したのが「あしたのジョー」(70年)である。要するに漫画の実写版だが、近年はこの実写版の存在も知られるようになった気がする。まあ実写版映画が成功と言われることは滅多にないけれども。
先に新国劇による舞台版があり、そこで主役の矢吹丈を石橋が、丹下段平を辰巳柳太郎が演じていたのである。新国劇といえば、固いチャンバラのイメージがあり、人気漫画を舞台化していたとは意外な気がした。
製作は新国劇映画(+日活)となっており、そのままジョーを石橋が、丹下を辰巳が演じている。辰巳が眼帯をしてあの扮装をしているのに多少驚く。後は映画版でのキャストということになると思うが、力石徹は亀石征一郎、青山を小松政夫、マンモス西は山本正明、白木葉子は高樹蓉子が抜擢された。イメージに近い俳優をということなのだろうが、少年院を出て、それほど経っていない時期の話である。特別少年院であれば最大22歳までが収容されているらしいが、小松は当時28歳、亀石に至っては当時32歳であった。高樹は(新人)付きであったが、デビューは68年である。芸名の「ようこ」は役に合わせたわけではなく元々(本名も)ようこである。
他の出演者は中山昭二、見明凡太郎、武藤英司など。また、ウルフ金串役を現役ボクサーだったスピーディー早瀬が演じた。
主題歌を石橋自身が歌っており、歌手デビューということになるが、歌をやるのは嫌だったという。当時は主演が歌を歌いう風潮があったため、歌うことになったようだ。