東宝俳優録11 佐藤 允/瀬木俊一
新人を三人セットにして売り出すというのは昔からあるパターンであり、東宝でも三人の新人俳優を「スリーガイズ」と名付けて売り出そうとした。その三人とは、夏木陽介、佐藤允、瀬木俊一である。夏木と佐藤は長く活躍したので、みんな知っているだろうが、問題は瀬木俊一で、活動期間がわずか2年余りで引退してしまったので、知らなくても無理はないのである。

そんなわけで、彼に関して判明しているプロフィールはほとんどなく、名前の読みが「シュンイチ」ではなく「トシカズ」と読むのが正解ということぐらいだろうか。デビューの経緯も、ニューフェイスなのかスカウトなのか劇団出身なのかも不明である。

デビュー作と思われるのが「大学の人気者」(58年)である。次の「青春白書 大人に分からない」(58年)で、夏木や佐藤と共演し、続く「若旦那は三代目」「若旦那大いに頑張る」(59年)では、二人を差し置いて主役に抜擢、つまり若旦那を演じているのである。

ここでのヒロインは水野久美であったが、そのあとは中島そのみとの共演が続き、「侍とお姐ちゃん」(60年)ではスリーガイズとお姐ちゃんトリオ(団令子、重山規子、中島そのみ)との顔合わせ。同じくお姐ちゃんトリオが主演の「お姐ちゃんはツイてるぜ」(60年)にも出演しているが、夏木と佐藤は出演せず、替わりに高島忠夫と岡田真澄が出演している。東宝ニューフェイス出身でありながら日活へ移籍した岡田真澄はこれが初の東宝出演のようだ。これを最後に瀬木は俳優を引退している。その理由はやはり不明であるが、割合順調な役者生活を送っていたように見えるので唐突に思える。
その後の瀬木についても当然不明なわけだが、検索するととある団体の代表として瀬木俊一の名が出てくる。そこには、32年に韓国で生まれ45年に日本に帰ってきた、と書いてある。世代的には丁度合致しており、本人の可能性もあるが同姓同名の可能性もある。

佐藤允は34年生まれ。出身は佐賀県の神埼市。4歳のときに父は戦死し、教員の母に育てられたが、腕白(不良)だったため、高校は4つも変転しているという。日大三高を卒業とウィキにはあるが「日本映画俳優全集」では日大二高となっている。より新情報であるウィキの方が正しい気がするが、前述のように両校に通った可能性もある。
高校卒業後、俳優座養成所に4期生として入団。同期には宇津井健、仲代達矢、中谷一郎、佐藤慶などがいた。劇団のユニットで「坊っちゃん」や「思春の泉」(53年)に端役で出演。後者の主演は同期の宇津井であった。佐藤充名義だったらしいが、允(まこと)があまり一般的な字ではないために似た文字にしたのか、それとも本人の意向ではなく単純に字を間違えられた可能性もある気がする。
56年に東宝入りし、「不良少年」で映画デビュー。少年院にいる少年役であった。日本人離れしたアクの強いマスクなこともあり、当初は凶悪犯やチンピラといった悪役での出演が多かった。
58年に「昭和刑事物語 俺にまかせろ」で初主演。宮口精二と親子刑事を演じている。妹役は若林映子であった。「手錠をかけろ」(59年)でも刑事役を好演。

そして「独立愚連隊」(59年)である。主演の佐藤と監督の岡本喜八の出世作となったと言っていいだろう。本作はシリーズ化され、第2弾として「独立愚連隊西へ」(60年)が制作された。ちなみに前作とのつながりはない。
この60年にスリーガイズの一人とされていた瀬木俊一が引退し、スリーガイズは自然消滅したが、瀬木とほぼ入れ替わるように東宝に入社してきたのが加山雄三であった。「独立愚連隊西へ」では、早くも佐藤と並んで主演扱いとなっている。以降、佐藤と加山、そして夏木陽介がトリオで出演することが多くなる。「紅の空」(62年)は、三人が主演だが、本作で「爆発トリオ」と銘打たれている。

「どぶ鼠作戦」(62年)は、愚連隊シリーズの第3弾であり、やはりこのトリオの主演である。佐藤によれば、二枚目同士というのはお互いをライバル視するので、加山と夏木は仲が悪かったと語っている。佐藤自身は「自分は三枚目なので」二人とはそれぞれ仲良くやっていたという。

ちなみに、このシリーズは4作目以降は監督が交替し、「やま猫作戦」(62年)、「のら犬作戦」(63年)、「蟻地獄作戦」(64年)と続いている。
69年に東宝を退社し、70年代は各社の映画やテレビドラマで活躍した。個人的に佐藤を認識したのは必殺風の時代劇である「狼・無頼控」(73年)だった気がする。当時は既に「和製ブロンソン」と言われていたと思うが、若い頃はリチャード・ウィドマークに似ていると言われていた。
俳優業は08年を最後に引退し、トークイベント等に出演していた。12年に急性肺炎のため78歳で亡くなっている。
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投稿を表示佐藤允さん!
本当に渋くて、日本人離れした表情、演技、素晴らしいですよね!
特集してくださりありがとうございます
もし、もっと展開されるのであれば是非お願いします