ポランスキーの「戦場のピアニスト」とショパンの名曲
◆「戦場のピアニスト(The Pianist)」(2002)
第55回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールの栄冠に輝き、第75回アカデミー賞でも作品賞ほか7部門にノミネートされ、監督賞、主演男優賞など計3部門で受賞を果たした、ロマン・ポランスキー監督、エイドリアン・ブロディの主演の戦争ドラマ。第二次世界大戦におけるワルシャワを舞台としたフランス・ドイツ・ポーランド・イギリスの合作映画になる。
ナチスドイツ侵攻下のポーランドで生きた、実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの自伝を映画化している。
1939年ナチスドイツがポーランドに侵攻。ワルシャワの放送局で演奏していたピアニストのシュピルマンは、ユダヤ人としてゲットーに移住させられる。やがて何十万ものユダヤ人が強制収容所送りとなる中、奇跡的に難を逃れたシュピルマンは、必死に身を隠して生き延びることだけを考えていた。しかしある夜、ついにひとりのドイツ陸軍のヴィルム・ホーゼンフェルト将校に見つかってしまう。
ヴィルム・ホーゼンフェルト将校はシュピルマンを助けたが、敗戦後は、ソ連軍に捕えられ、シュピルマンからの擁護は叶わなかったという。
◆ポランスキー監督の体験
監督のポランスキー自身もパリでポーランド人の両親のもとに生まれ、収容所で母親を亡くし、各地を放浪して生き延びたという体験を持つため、過去に「シンドラーのリスト」の監督を打診された際も、あまりにも重なるということで断ったという。
今回のピアニストの自伝では、客観的に受け止めることができ、満を持しての作品制作となり、また、自身の記憶が制作にも活かされたという。
◆缶詰のシーン
ドキュメンタリー映画作品の「ロマン・ポランスキー 初めての告白」で、エピソードを聴いたのだけど、シュピルマンが、ひっそり隠れていた際にグリーンピースの缶詰をあけるシーンがあるが、これは、監督の経験により描いたシーンらしい。映像は全て暗いトーンにもかかわらず、緑色が鮮やかに映し出されていたのが印象的だったが、他にも、赤色とかの単色を強調して演出されているシーンが見られた。
◆劇中のピアノ曲(ショパン)
放送局が爆破されたために、演奏を中断した曲は、ショパンのノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)でテーマ曲になっている。エンドロールでは、ショパンのアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調作品22になり、愛国的なショパンのピースが選ばれている。
シュピルマンを助けた将校は、ベートーベンのピアノ・ソナタ第14番作品27-2「月光」を弾いていた様だ。★サントラのCDの動画では、シュピルマン自身の録音(1948年)も1曲挿入されている。
ちなみに、このショパンのノクターンは、 あまりメジャーではない様ですが、TVの「風のガーデン」で平原綾香の英語詞がつけられているので楽譜を再度購入したのですが、暗い曲だと思い躊躇してましたが、改めてレパートリー曲にしたくなりました(既に、楽譜のラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」はレパートリーにしています)。
◆◆感想
ナチスドイツの映画というと、一方的に、ユダヤ人の悲劇だけが語られるのだが、この映画では、敗戦後のドイツ側の悲劇も一緒にかたられているのが印象的だった。
シュピルマンは身を隠している際には、音を出さずにエアでピアノを弾くしかなかったのだが、音楽の力によって生きぬくことができたのが、素晴らしい。
シュピルマン(楽器を演奏する人)という意味で、まさに楽士としての一生を全うできたのだ。
★エイドリアン・ブロディは、個人的に容姿の点で、細面で好みであるが、この映画では、10㎏減量したということで、さらにナイスな時期だったのかもしれない。
ブロディは、ウッディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」(2011)の様に、ダリの役で豪華なキャストの一人として出演しており、ウエス・アンダーソン監督作品の常連でもあるが、恋愛系などの映画作品も見てみたい。
◆関連作品
・「ロマン・ポランスキー 初めての告白(Roman Polanski: A Film Memoir)」(2012)