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私の好きな映画

cine-ma
2023/06/27 10:24

“THE 名画”選 ① 「タクシー・ドライバー」

中1の冬休みから観た映画を記録し続けていますが、当時はとても面白かった作品を久し振りに観返すと、あまり心に響かなかったり大して笑えなかったりする事があります。逆もまた然りで、2回目にして初めて心震えたり、生まれる前のモノクロ作品に圧倒される事も。
そんな中から、個人的に時を超えてその“映画力”を感じた作品達をご紹介したいと思います。

 

レンタルはこちら

 

日付:1976/10/22
タイトル:タクシー・ドライバー | TAXI DRIVER
監督:Martin Scorsese
劇場名:福岡中州ピカデリー1(閉館)
パンフレット:あり(¥300)

怪しいタクシー運転手が歩を進める狂気を孕んだ異端の道。そして迎える平穏無事な結末を理解できなかった。日本の中学3年生だった当時の私には、色々と不可解な点が多かった作品です。
娼婦役のジョディ・フォスターが日本でも一躍名を馳せました。印象深かったのが、デ・ニーロ演じるトラビス・ビックルがデートに選んだポルノ映画館のシーンでスクリーン一杯に広がったボカシ画面と受精シーン、それに彼が発案した袖口から飛び出す銃の仕組み。"ガシャンガシャン"って感じのあの装置、欲しかったなぁ。

(C)1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc.All Rights Reserved.

 

それから38年余りを経た2015年に、改めて自宅で観賞。
名画は名曲を引き寄せる。バーナード・ハーマンの遺作となった、甘美なアルト・サックス(奏者はトム・スコット)の音色と不安げな調べとが交錯する魅惑のテーマ曲と共に、印象的なオープニングで幕を開ける。

ベトナム帰りの不眠症の若者が選んだ、深夜のタクシー・ドライバーという仕事。
常識に欠け、社会にも溶け込めない彼が、大都会ニューヨークで一人孤独に苛まれる中で育む身勝手な論理。モノローグ嫌いの私ですが、日記調に語られるこの作品のそれは恐ろしいまでの効能を発揮しています。

6月29日、彼が日常からの決別を宣言したその日から始める肉体改造と武器の準備。元海兵隊員としての戦歴も漂わせながら戦闘力を高めてゆくそのシーンに思わずゾクゾクしてしまう。
そして彼の狂気と暴走とが最後に辿り着く、驚くべき結末。粛清の対象でしかなかったゴミ溜めのような街と図らずも迎合した彼の前に現れるベッツィ(シビル・シェパード)の濡れた瞳がまたなんとも印象的でした。

この作品で描かれる孤独な若者の狂気は、今の世にも横行する理不尽な通り魔事件や国内外のテロ行為が抱えるそれとほぼ同一性を持つものでありながら、媚薬のように魅力的な描写とシナリオをもってして一級品の娯楽作品に仕立て上げられている。恐るべき映画の魔法が掛かった作品。

改めて1970年代を代表する1本であると、この時再認識しました。パルム・ドール受賞に納得。アカデミー賞は「ロッキー」に譲ったのか(ちょっと苦笑)。
浮気妻を見張るタクシーの客を演じているのがスコセッシ監督その人だとは全く気付けませんでした。38年後のお姿の方が格好良かった。

 

パンフレット(¥300)

<CONTENTS>
・おそろしいニューヨーク映画 筈見有弘(映画評論家)
・解説
・ハリウッド第9世代とは(※)
・ストーリー スタッフ/キャスト
・トム・スコットについて
・スターメモ ロバート・デニーロ
・スターメモ シビル・シェパード
・スターメモ ジョディ・フォスター
・監督紹介
・Synopsis(英語のあらすじ)

※ハリウッド第9世代とは(パンフレットより)
“アメリカ映画の父”デイビッド・ウォーク・グリフィスから数えて第9の世代という意味で、次のような若く才能のある人たちが名前をつらねる。
スティーブン・スピルバーグ、ジョン・ミリアス、トニー・ビル(「スティング」の制作者)、ジョーン・チュークスベリ(「ナッシュビル」の脚本家)、グロリア・カッツ(「ラッキー・レディ」の脚本家)等をあげることができる。

ちなみに第8世代はというと、フランシス・F・コッポラ、ピーター・ボグダノビッチ、ウイリアム・フリードキンが、第7世代はピーター・フォンダにデニス・ホッパー、ジャック・ニコルソンの名が挙がっていました。映画関係者が一緒くたにそう呼ばれていたみたいです。日本のお笑いなんかと定義の仕方が同じなんですね(笑)。

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1 件の返信 (新着順)
LOQ
2023/06/27 14:58

こんにちは。

おっしゃる通り袖口から銃が飛び出す装置を作るシーン、それまで鬱屈していたトラヴィスが暴力性に目覚めて、キャラの暴走を始めるのがおもしろいです。

1968年から1970年代、いわゆるアメリカン・ニューシネマの時代ともかぶりますが、この時期ニューヨークを舞台にした名画が多いですね。
『 真夜中のカーボーイ 』『 ゴッドファーザー 』『 フレンチ・コネクション 』『 セルピコ 』『 アニー・ホール 』『 サブウェイ・パニック 』そして「 タクシー・ドライバー 』
1977年の「 結婚しない女 』もそうでしたし、テレビでは「 刑事コジャック 」
アイ・ラヴ・NY の時代でした。

1976年は「 大統領の陰謀 』「 ウディ・ガスリー わが心のふるさと 』「 アウトロー 』「 ネットワーク 』の年ですが、アメリカ独立200年の年にオスカーを獲ったのは「 ロッキー 』  ベトナム戦争も前の年に終わって、長らく続いた反逆とバイオレンスの反体制の時代が終わって、トレンドが変わったんでしょう。

脇役もけっこういろいろ目について、タクシー会社の先輩がピーター・ボイルですし、前にもかきましたが、ポルノ映画館の受付が当時のデ・ニーロ夫人のダイアン・アボット。
このパンフレットではスコセッシはまだ統一表記ではなくて、マーティン・スコルセーセでしたね。