生きてきた人の言葉 生きていた人の面影
原爆というテーマは、あまりにもすさまじい地獄絵図に打ちのまされ、僕はいつまで経っても苦手でたじろいでしまいます。
日本被団協のノーベル平和賞受賞は朗報ではありますが、一方で意外な予期せぬサプライズと感じました。 世界の現状とのギャップによる無力感から頭と心はかたまり、無知と無関心のループの中にずっと僕は逃げ込んできている一人と感じるからです。
同じ日本人だからといって、自分に対してのご褒美ではない。
ご紹介する2本のドキュメンタリーはヒバクシャに関するものです。
『 ヒロシマ ナガサキ 』(2007)
監督はスティーヴン・オカザキ 日系3世のアメリカ人ドキュメンタリー監督
彼は語る。
「 ヒバクシャにただ経験を語らせるだけの映画はなかった。
英雄か犠牲者かではなく、あなたや僕と同じ人間として示した作品はなかった。
怖がらせもせず政治的でもなくただヒロシマとナガサキを語る。
なんら手を加えなくても力強く重要な物語です。
ただ語れる限りのことを語ればそれでいい。
ロマンティックに語るのではなく観客を引き込むドラマを作らないと、目をそむけたくなるような映画を作っても誰も観てくれません。 」
言葉通り14人のヒバクシャ と 開発・投下に関わった4人のアメリカ人へのインタビューと関連映像で構成されています。
想像を絶する過酷な人生を生きてきた人の言葉に心動かされる
「 きのこ雲は “雲 “ ではなく “火柱” 」
これは証言者の一人 肥田舜太郎氏( 陸軍医としての投下直後から戦後は赤十字原爆病院でヒバクシャの治療にあたってこられた医師。 ご自身もヒバクシャ )の言葉。
原題は『 White Light , Black Rain : The Destruction of Hiroshima Nagasaki 』
一瞬の閃光による都市の破壊と無差別大量虐殺、黒い雨を浴びての放射線障害による時間をかけた虐殺。 原爆によってヒロシマとナガサキに対して行われた破壊がどういうものかをよく表しています。
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もう1本は『 ひろしま 石内都・遺されたものたち Things Left Behind』
広島のヒバクシャの遺品を撮影した写真の展示会が、2011年10月から2012年2月までカナダのブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館で開催された。
撮影したのは写真家・石内都。
無惨な死体や破壊された街の白黒写真ではありません。
彼女が撮ったワンピース、ブラウス、背広、メガネなど遺品の数々のカラー写真は、ヒバクシャが生きていた息遣いを感じさせ、心に響きます。
特典映像のリンダ・ホーグランド監督ら4人による対談も必見。
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