イーストウッドの「ダーティ ハリー」全5作品
法の盲点をついて巧みに逃げ延びる凶悪犯を、問答無用に撃ち殺してしまうアンチ・ヒーローがスクリーンに登場した。
演じるのは勿論クリント・イーストウッド(1930.05.31 サンフランシスコ生まれ)で、彼の代名詞ともなったシリーズで、全5作品が製作された。
「ダーティ ハリー」(1971年) : ドン・シーゲル監督
サンフランシスコのビルの屋上から、一般市民が銃撃される事件が起きた。犯人は10万ドルを要求し、支払わなければ次の犠牲者を狙うと警察に通告する。殺人課の敏腕刑事ハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)は、上司のブレスラー(ハリー・ガーディノ)や市長(ジョン・ヴァーノン)らの意向を無視し、犯人を待ち伏せするが、激しい銃撃戦の末に取り逃がしてしまう。その後、犯人は14歳の少女を誘拐し、20万ドルの身代金を要求してきた。ハリーは犯人の指定したマリーナへと向かう。
ハリーの性格は本質的に‘勧善懲悪’の西部劇ヒーローと同じであり、それを現代に置き換えた存在だ。犯人を捕まえる能力は素晴らしいが、警察として許される法の限度内にとどまることが出来ない。
その無鉄砲ぶりをイーストウッドが実にダイナミックに演じている。
イーストウッドはスタントマンを立てることを拒否してこの映画に臨み、無表情で冷ややかな性格付けは、 ‘ダーティ・ハリー’ のイメージに大きく寄与している。
犯人サソリを演じたアンドリュー・ロビンソンの狂気凄まじい演技も見どころ。
走るスクールバスの上に、橋の上から飛び降り、殺人犯と闘うクライマックス・シーンは有名な名場面である。
「ダーティ ハリー2」(1973年) : テッド・ポスト監督
冒頭のシーンが実にいい。
クリント・イーストウッドのパイロット姿である。とにかく制服が似合っている。
ハイジャック事件をあっさりと片付けて本作に入る流れ、実にいいです。
山手の別荘で殺人事件が発生、家族ともどもマシンガンで虐殺されたのは大悪党だった。さらに麻薬組織や売春組織の大物が次々と殺される。そしてハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)の友人、チャーリー・マッコイ(ミッチェル・ライアン)までもが殺されるに至り、ハリーは黒人警官スミス(フェルトン・ペリー)と共に捜査に乗り出す。結果、犯人とおぼしき人物は、なんと4人の新米パトロール警官だった...。
犯人グループのリーダー格ベン・デイヴィスに扮しているのはデヴィッド・ソウル。
米TV「刑事スタスキー&ハッチ」(75年~79年)で、ハッチを演じた俳優。
本作出演時は30歳だったが、今年(2024年)1月4日、80歳で世を去った。
射撃大会で腕前を競うハリーとベン・デイヴィスの迫真の場面は実に見応えがある。
「ダーティ ハリー3」(1976年) : ジェームズ・ファーゴ監督
シリーズ第3作。
すっかりお馴染みとなったハリー刑事の毒舌に加え、本作では彼の相棒に女性刑事が登場。
ラストは、脱獄不能と云われたアルカトラズ刑務所廃墟でのシーンであり、バズーカ砲まで飛び出すサービスぶり。
ハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)は、相棒のフランク(ジョン・ミッチャム)と市内をパトロール中、強盗事件に借り出される。現場に直行したハリーは、強盗一味の要求の一つである車に乗るや否や、そのまま店の中に突っ込み、犯人達にマグナム44を見舞った。ところがハリーの事件処理が乱暴だということで、マッケイ刑事課長(ブラッドフォード・ディルマン)に怒鳴られ、人事課に配属されてしまう。そんなある日、ボビー・マックスウェル(デヴェレン・ブックウォルター)をリーダーとする若い過激派グループが陸軍の兵器庫に押し入り、ダイナマイト、自動小銃、新型バズーカ砲を盗み出した...。
本作にはハリーと組む2人の相棒が登場する。
最初に登場するのはジョン・ミッチャム扮するフランク。
言わずと知れた名優ロバート・ミッチャムの実弟である。
そしてもう一人、刑事に昇進したばかりの女性ケイト・ムーア。演ずるのはタイン・デイリー。
彼女の初々しい女刑事の姿は、ハリーと好対照で、それが作品にほどよいスパイスを効かせている。
ハリーが人事課に配属されるに際し、上司のマッケイに悪態(特に口の悪さ)をつくハリーが何ともユニークで面白い。
「ダーティ・ハリー4」 (1983年) : クリント・イーストウッド監督
シリーズ第4作で、唯一のイーストウッド監督作品。
12年間に渡り、イーストウッドと暮らした経験をもつソンドラ・ロックが共演しているほか、ハリーが連れているブルドッグ犬が何ともいえない愛嬌を振りまいている。
ゴールデン・ゲート・ブリッジ近辺の丘で、男が股間を撃たれて死亡する猟奇事件が発生。捜査を担当するハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)は、別件での殺人犯の判決に立ち会うため裁判所へ向かう。犯人は無罪釈放となり、ハリーは行き過ぎる捜査に警告を受けた挙句、ほとぼりを冷ます意味もあってサンパウロへ出張を命ぜられる。早々に銀行強盗事件を解決したハリーは、ジェニファー(ソンドラ・ロック)という女性と恋に落ちるが...。
「俳優イーストウッド」の特徴を代表するのが、本シリーズのようなアンチ・ヒーローだとすれば、「監督イーストウッド」の歩みは、このアンチ・ヒーローをいかに救うかにあったと言える。
本作は彼の監督作品として10本目であるが、既に、アンチ・ヒーローには謝罪が必要になることを見抜いていたのかもしれない。
「ダーティ ハリー5」(1988年) : バディ・ヴァン・ホーン監督
自らも標的にされた連続殺人事件に立ち向うハリー・キャラハン刑事の活躍を描くシリーズ第5作。
実に足かけ17年の長きに渡ったシリーズも、本作で終了した。
サンフランシスコの賭博の元締めルー・ジャネロ(アンソニー・チャルノータ)が逮捕された。持ち前の強引な手法で逮捕したハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)は、一躍市民の有名人となるが、ジャネロの部下に襲撃される。だが愛用マグナムであっさり片付け、上司のドネリー部長(マイケル・カリー)やアッカーマン課長(マイケル・グッドウィン)から西部劇まがいの強引さを非難されるも意に介さない。ある日、人気ロック・アーティストのジョニー(ジム・キャリー)が致死量の麻薬を打たれて殺された。中国人の相棒刑事クワン(エヴァン・C・キム)と現場に駆け付けたハリーは、前々から彼の捜査方法に興味を持っていたという女性レポーターのサマンサ(パトリシア・クラークソン)に出会うが...。
本作にはリーアム・ニーソン(出演時36歳)やパトリシア・クラークソン(同29歳)、ジム・キャリー(同26歳)といった顔ぶれが登場、さすがに時代の流れを感じさせる。
時代の流れ....
「ダーティ ハリー」シリーズが最後の公開となったこの年、まったく異質の刑事アクション「ダイ・ハード」のシリーズ第1作が公開されている。
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投稿を表示こんばんは😃🌃
クリントさんといえば、やはりダーティハリーシリーズですよね!
カッコ良くて渋くて最高に面白いシリーズですが、やっぱり第1作目が一番面白かったように思います。
一応全部見ていると思うのですか、これを機に第一作目から見直ししてみようかなぁ。
クリントさん、もうすぐ94才になるのですね!まだまだお元気で映画を作って欲しいですね。
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投稿を表示『 ダーティー・ハリー 』は拙レビューを見ていただければわかりますが、個人的に思い出のある作品です。 (笑)
さそり役のアンディー・ロビンソンはこの後同じドン・シーゲルの『 突破口 ! 』に出てますね。
シリーズで次に好きなのは『 3 』です。
脚本は「 夜の大捜査線 』『 ポセイドン・アドベンチャー 』などのスターリング・シリファント。
監督のジェームス・ファーゴはずっと助監督だった人でイーストウッドとも「 アイガー・・サンクション 』「 アウトロー 』など4本助監督でしたが、『 3 』で監督デビュー。
たぶんイーストウッドの意向ですね。
ハリーの相棒は『 ダーティーハリー 』でメキシコ人、『 2 』でアフリカ系とマイノリティで、マッチョな白人男性のハリーが言動から見下してるように見えて実は信頼し認めているパートナー。
『 3 』では女性だったわけですが、当時はアメリカでもフェミニズムはまだまだで男尊女卑はあたりまえ。 ですから最後は切なかったですね。
タイン・デリーはこれで人気が出て、テレビでも「 キャグニー&レイシー 」で刑事役で主演でした。
アルバート・ポップロックというアフリカ系のバイプレーヤーがおなじみですが、最初は銃を突きつけられてブラフをかまされる銀行強盗だったのが1作ごとに役が大きくなって『 4 』まで出てましたね。
きっとイーストウッドのお気に入りだったんでしょう。
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