手作り感ムンムンのみんなのパイプライン爆発大作戦『HOW TO BLOW UP』
〈作品データ〉
気候変動学者アンドレアス・マルムの著書「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」を基にした群像クライム・サスペンス!母親を亡くしたソチ、あることが原因で重病を患うテオ、石油会社に恨みを持つマイケルなど若者たちが集結し、石油会社に対してある作戦を企てる。中心人物のソチ役をアリエラ・ベアラーが脚本と製作も兼ねて演じ、他サッシャ・レイン、ルーカス・ゲイジ、フォレスト・グッドラック、クリスティン・フロセス、マーカス・スクリブナー、ジェイミー・ローソン、ジェイク・ウェアリー、アイリーン・ベダードが出演。
・6月14日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー【PIC12】
・上映時間:104分
・配給:SUNDAE
【スタッフ】
監督・脚本・製作:ダニエル・ゴールドハーバー/脚本・製作/アリエラ・ベアラー
【キャスト】
アリエラ・ベアラー、サッシャ・レイン、ルーカス・ゲイジ、フォレスト・グッドラック、クリスティン・フロセス、マーカス・スクリブナー、ジェイミー・ローソン、ジェイク・ウェアリー、アイリーン・ベダード
原題:How to Blow Up a Pipeline/製作国:アメリカ/製作年:2022年
〈『HOW TO BLOW UP』レビュー〉
キャスト・スタッフにメジャーな名前がなく、まるでイケメン俳優の舞台劇の劇場公開タイトルのような邦題もあって思わずスルーしそうになった『HOW TO BLOW UP』。
あー、なるほど、大手石油会社に恨みがある若者たちが全米から集まって、みんなでひと泡吹かそうとする手作り大作戦な映画で、やや粗い脚本ではあるが、手作りの感覚がよく出ている佳作である。
石油会社の大きなパイプラインを破壊するために、シカゴやノースダコタ、オレゴンやテキサスなど全米各地にいた若者たちがテキサス西部に集結して、各班ごとに分かれて、作業をし、それが大作戦へと繋がる。途中でそれぞれの過去エピソードを挿入しながら、現在進行の作業&作戦遂行を群像的に展開。その過去エピソードの出し方も前半にまとめてやるのではなく、バラバラに、小出しにするように出す。
この中で
「あれ、この人は過去エピソードはなしなのかな?」
とやきもきさせられる部分があったりはするが、それにもちゃんと理由があるので脚本のテクニックと考えたい。
それにしてもよく出来たアイデアで、『現金に体を張れ』や『オーシャンズ11』の系譜のクライム・サスペンスとドキュメンタリー映画『不都合な真実』や『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』を掛け合わせたような社会派クライム・サスペンスである。それも作戦の肝の一つが手製の爆弾作成で、この制作過程が生々しい。その後の作戦遂行時のトラブルや警備のかわし方など数々のクラシック映画のやり口を踏襲していて見応えがある。
できれば大手石油会社の視点も入れればグッと大作の感覚が出せただろうし、過去エピソードの出し方や群像的な視点にもまだまださらなる練り込みが出来ることもあり色々と惜しいが、これはこれで悪くはない。それこそスティーブン・ソダーバーグ監督が手掛けたら社会派要素があるエンタメ作品になった可能性が高い。『ファイブ・イージー・ピーセス』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』といった石油採掘映画に思いを馳せながら、
21世紀のパイプライン破壊大作戦と考えればちょっとは感慨深さもある。