【君は小津安二郎で泣けるか?】「東京物語」20年後の号泣『この映画は過激だ』
「熱弁、お笑い担当」コラムニスト
UUUM所属コスプレものまねYouTuber「ダメ沢直樹」です。
このサイトに来る方であれば名前は聞いたことがあるはず
「小津安二郎(おづ やすじろう)」監督
(是枝裕和監督が話題になると家族愛などのテーマからよく引き合いに出される)
黒澤明監督と並び称される「世界の小津」
「東京物語」はあまりに有名。
なのだけど、私、昔(恐らく二十歳すぎ)見たときに少しもおもしろくなかったのだ。
まさに登場人物の子供のように
『なんだい! つまんねーや!』
だったのだ。
それがDVDで鑑賞して夜中に顔が熱するくらい大泣きした。
(記憶にある中では「ヱヴァンゲリヲン破、グリッドマンユニバース、この世界の片隅に」くらい。全部アニメ?ヾ(゚д゚ll))
「東京物語」のDVDは昔から持っていた。
しかし、どうしても観る気になれず、
小説執筆講座の本にも何度も「東京物語」の名前が出る(小説で新人賞を獲るのが目標です)
いよいよ、当コラムを担当するにあたり映画の本を手に取ると
やはり「小津安二郎」が何度も出てくる。
いや、小津さんだけでなく、
「黒澤、小津、溝口健二」でビッグ3
は当たり前であり世界の映画人に影響を与えているというのだ。
特に小津監督の評価はフランスでは黒澤明監督を凌ぐほどの人気、
英国映画協会(BFI)の『Sight&Sound誌』で
- 「映画監督が選ぶベスト映画」の1位
- 「批評家が選ぶベスト映画」3位
という人気ぶり
「映画監督が選ぶベスト映画」トップ10
1位『東京物語』 小津安二郎監督
2位『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック監督
2位『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ監督
4位『8 1/2』 フェデリコ・フェリーニ監督
5位『タクシードライバー』 マーティン・スコセッシ監督
6位『地獄の黙示録』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位『ゴッドファーザー』 フランシス・フォード・コッポラ監督
7位『めまい』 アルフレッド・ヒッチコック監督
9位『鏡』 アンドレイ・タルコフスキー監督
10位『自転車泥棒』 ヴィットリオ・デ・シーカ監督
「批評家が選ぶベスト映画」トップ10
1位『めまい』 アルフレッド・ヒッチコック監督
2位『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ監督
3位『東京物語』 小津安二郎監督
4位『ゲームの規則』 ジャン・ルノワール監督
5位『サンライズ』F・W・ムルナウ監督
6位『2001年宇宙の旅』 スタンリー・キューブリック監督
7位『捜索者』 ジョン・フォード監督
8位『これがロシアだ』 ジガ・ヴェルトフ監督
9位『裁かるゝジャンヌ』 カール・テオドール・ドライエル監督
10位『8 1/2』 フェデリコ・フェリーニ監督
という感じで、どこを見ても
ローアングルショットや真正面から撮る「小津調」というものが絶賛されているのだけれど
それがどうおもしろいのか、まったく説明が昔からわかりづらい。
「独特のリズム」などと言われても
それがおもしろさには直結しないし、
このカットや繋ぎ、相似形の構図など
現代の作品にも無数にあるし、これもおもしろい、には直結しない。
静かな映像、余韻や間、構図、
などと言われるが…
私は普通に
「小津映画は過激なのだ!」と言いたい。
と、いうことで前置きが長くなりましたが
小津安二郎監督「東京物語」が
なぜ感動するのか、を誰にも伝わるように熱弁します!
「酒が飲めるようになった」かのように(私はほとんど飲めません)
「小津映画で泣けるようになった」とめでたい気持ちになれました。
自分の子供が大きくなって小津映画で泣けるようになったら
どれだけ嬉しいだろう。(子供も伴侶もいませんが(;'∀')
観てない人、観てわからなかった人、
手短に書くのでお付き合いくださいませ。
小津映画、わかる人とわからない人の違いはなにか、自分がそうだったので
引き合いに出そう。
「挨拶の意味」がわかる、
「親が大切である」この二つは理解してないと泣けない
これをシステムやしきたりとしてではなく、
心底思えるようになる滋養がないと、言外のやりとりに意味が見いだせず
「つまらない」となる。
さぁ、小津映画「東京物語」は過激、という意味を解くと
「賭博麻雀、不倫の香り」(これはメイン登場人物ではなくモブ)
が出てくる。
直接的に出てくるわけではなく、
メインはみんな普通に暮らす良い人たち、というのが深いポイント
「子供が(戦争で)亡くなると寂しい、じゃが、いると親を邪魔に思う、
二つは手に入らない。」
注:意訳
と酒を飲みながら愚痴る親がいる。
戦争で亡くなったことを揶揄するともとれる父親の生々しい台詞。
お前さんはマシなほうじゃ、と言われる「笠智衆(りゅう ちしゅう)演じる父親」も
「満足はしとらん、
それは親の欲言うもんじゃ。」
と常に泰然自若としている。
中盤辺りからバシバシやりとりが出てくる「生きざまの応酬」
話す人物を真正面からカメラで捉えるショット(普通はやらないカメラの撮り方)が
「殴り合いの喧嘩のように生き様を問いかける」
これが「過激」の理由だ。
中盤までは静かであり、
その返しの「間」で人物の「礼儀の度合い」を示したりする。
余白と無言に意味がある。
こういうとわかるだろう。
「挨拶をして返さない人間」
これ、誰にでも心当たりがあり自分にもあるだろう。
「ただいま」に込められた問いかけ、など
明らかに登場人物の内面を探ろうとする球が投げられる。
この映画、杉村春子(すぎむら はるこ)さんが冷たい饒舌な娘を演じているのだけれど、
この人物を「自分」に当てはめられるようになる、
と「東京物語」は自分のお話になる。
仕事はバリバリするし、
親を気に掛ける、
不幸に涙を流すし、
ジョークも言う、
客観的に見れば立派なはずなのだ。
だが、その生きざまを「恥ずかしいもの」として、
観るものは心を揺さぶられる。
ここが
若すぎてみるとわからない部分だ。
「親や自分の生き方に対する負い目や恥」がないと、
わからないのだ。
「東京物語」のあらすじを二行で書こう
高齢の両親が東京にやってきて、
親族みな忙しい生活の中、さぁ、どう対処する?
最近知った流行りの宿を紹介し、両親に行ってもらう。
当てつけの親孝行だ。
それが悪いことだろうか?
自分は良いところだと、思っている場所なのだから。
「今度来たときは歌舞伎に行きましょうね!」
それが悪いことだろうか?
しかし、両親は行った先の宿、寝室の真下で深夜まで麻雀やらどんちゃん騒ぎが
行われ眠れなかった、という経験をさせられて、それを
娘に言えないでいる。
そんな「当てつけの親孝行」。
「今度は歌舞伎に行きましょうよ」に
なんの幸せがあろう。
なにが悪いだろう?
私たちは同じことをしているのではないだろうか。
事件が起きる物語なら、
私たちは自分を事件を起こす悪役に重ねたりはしない
(例外と当てつけの無理解はまた今度書きましょう)
だから痛いほど、よくわかる。
「親切に押し込まれた親」
外面だけの親切
この怖さを描いている。
「東京は人が多すぎるんや」
と小津監督は誰も悪者にしない。
ラスト付近の
正面ショットの
原節子(はら せつこ)さん演じる「紀子」
香川京子(かがわ きょうこ)さん演じる「京子」の
殴り合いのような言葉の応酬はすごい
(私には彼女が生き様の殴り合いをしているように見えた)
「みんなそうなってしまうの。自分の人生というものを持つから、そうなるのは
仕方ないのよ」(紀子)
「なによ! 他人だってもっと温かいわ。
そんな親子つまらないじゃない!」(京子)
(注:台詞は意訳)
この「つまらない」という言葉が大切だ。
そう、
「つまらない」から現代人は家庭を持つことに魅力を感じない。
そんな親子ならただ、効率と外面だけを整えるだけの
つまらない関係なのだ。
こうして、誰も悪くない物語は終わり、
優しい父のまなざしは
あの最も有名な台詞
「やっぱりあんたは、ええ人じゃよ」(笠智衆演じる父)
に帰結する。
ラストの寂しげな老父に向けて
私たちに何ができるだろう。
メッセージ性に重きを置き、
物語全体は観ないとわからないように書かせていただきました。
わからなくても大丈夫、
私もずっとわからなかったのが、ようやくわかったのだから。
音が不明瞭で聴き取りづらいのは技術的なもので仕方がない。
たまには硬いパン(難解なものの例えでよく使われる)
でも食べてみよう。
こうして時代と切り離せない映像技術を共に歩んでいくと
「映画」はただのコンテンツや情報、ではないことが少しずつわかってまいりました。
「怪物」で話題の是枝監督。
「家族、家庭」をテーマに
現代から古典へ、繋げてみるのもおもしろい。
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(無料お試しもあるツタヤディスカス)
あらすじ、キャストなど詳細もあります
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投稿を表示小津作品好きだった母親と一緒に子供の頃に「東京物語」をテレビで見ました。当然、つまらなかったです。好きな映画を聞かれ「東京物語」なんて言うマセたガキがいたら会ってみたいです。
そんな私が結婚し子供が出来て家庭を持った時、あらためて「東京物語」を見て、初めてこの作品の描く世界が心に突き刺さりました。
昔の家族の形が壊れ核家族化して行く中で取り残される年老いた親。それを受け入れて生きていく親の姿、時の経つことの無情さ、そして哀しさ・・・笠智衆演じる父親の姿を通して、それまで親に感謝など全くした事なかった私は号泣してしまいました。
葬儀を終えてすぐ、長女役の杉村春子が「そういえば、お母さんの紬の着物あったわよね」というような事を言い、形見の品をさっさと貰って行こうとするところは「葬式あるある」で笑え、強く印象に残っているシーンの一つです。
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小津作品の原節子演じるヒロインの名は「紀子」なんですよね。
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