コント55号の映画(松竹版)その2
前回の続きである。
松竹6作目が「コント55号とミーコの絶体絶命」(70年)。ミーコとは由美かおるのこと。水前寺清子のチータ程には浸透してないような気がする。他の出演者は大地喜和子、倍賞美津子、財津一郎、田中邦衛、小松政夫、和田アキ子など。作詞家のなかにし礼やプロボクサーの西城正三なども顔を見せている。
また、タイトルに55号がつかない55号映画がいくつか存在する。
まずは「泣いてたまるか」(71年)。これは66~68年にかけて放送された1話完結式のテレビドラマシリーズの映画版である。そこでの主演は渥美清、青島幸男、中村嘉葎雄の3人が務めたが、映画版では彼等ではなく坂上二郎が主演になっている。萩本欽一も準主演的な役(腹違いの兄弟)なので、55号映画にカウントしてもいいかもしれない。他の出演者は榊原るみ、倍賞千恵子、高橋長英、佐藤蛾次郎、浜村純、ミヤコ蝶々などである。倍賞千恵子は、妹の美津子とは対照的に55号映画だけでなくドリフ映画にも出演していないので、珍しいと言えるかもしれない。
「初笑いびっくり武士道」(72年)は、タイトルだけ聞くと時代劇コメディのようなものを予想してしまうが、実はこれ原作が山本周五郎の「ひとごろし」なのである。未見なので、本作が原作どおりにやっているかは不明だが、ここまで原作を想像できないタイトルは中々ないのではないか。この4年後には原作どおり「ひとごろし」のタイトルで萩本が演じた双子六兵衛を松田優作が、坂上が演じた仁藤昂軒を丹波哲郎が演じているのである。このキャストだけでも、原作が同じとは考えづらい気がする。
「びっくり武士道」の他の出演者だが、岡崎友紀、榊原るみ、宍戸錠、ピーター、森田健作、光本幸子、田中邦衛、フォーリーブス、野呂圭介、そして嵐寛寿郎と多彩な顔ぶれである。後輩のコント0番地や坂上の師匠にあたる阿部昇二も出演している。自分の記憶では「55号決定版」か何かで阿部昇二を見た記憶がある。小柄なしょぼくれたオジサンという感じだった。
もう1本は時代が前後するのだが「俺は眠たかった」(70年)。これは萩本欽一が制作・監督・脚本・音楽・主演という一人五役を務めた作品である。坂上二郎はそれに対抗して?本人役を含む一人五役を演じている。55号が所属する浅井企画の浅井良二が製作としてクレジットされている。他の出演者は、前田武彦、青島幸男、左とん平、名古屋章、伴淳三郎、石立鉄男など。DVD化などはされていないようである
コント55号としての映画は68~72年の4年足らずに集中しており、以降はない。萩本はバラエティ番組をいろいろ立ち上げ、坂上は俳優としてそれぞれ活動して行くことになり、70年代中盤からはコンビとしての活動はほとんど見られなくなっていく。唯一、「ぴったしカン・カン」(75~86年)で二人が揃って解答者として出演していたくらいだろうか。