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2024/02/13 14:12

懐かしき1940年代の映画「ヨーロッパ編」

前回まで、1950年代、1960年代、1970年の名作を「アメリカ編」、「ヨーロッパ編」、「日本編」に分けて振り返ってきた。

今回は1940年代の、懐かしいヨーロッパ映画の名作を振り返ってみたい。

 

 

第三の男(1949年・イギリス):キャロル・リード監督

第二次世界大戦直後のウィーンを舞台に、アメリカ人作家が親友の死の謎を探るサスペンス映画。

カンヌ映画祭グランプリを獲得した、映画史上に残る傑作

 

アメリカから親友ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)を訪ねて来た小説家のホリー(ジョセフ・コットン)は、ハリーが事故死したことを聞かされるが、事故時の状況に釈然としないものを感じる。現場にいた2人の他に、もう一人謎の人物が目撃されていたのだ。その ‘第三の男’ を探して、ハリーの元愛人アンナ(アリダ・ヴァリ)などにハリーのことを訊いて回るうちに、ホリーはイギリス占領軍少佐からハリーが実は生きていて、戦争中に粗悪なペニシリンの闇取引で多くの死者を出したために地下に潜っていると聞かされるが...。

 

最も強烈な効果を挙げているのが、遊園地の大観覧車でハリーとホリーが出会う場面。 ⇒ いわゆる「斜めの構図」。コントラストの強い劇的な照明(ラスト近くでハリーがイギリス軍人たちに追い詰められる地下水道の場面)と光、影、靴音などの効果的な使用。

又、映画史上の名シーンの一つに挙げられる、ラストの並木道のシーンは忘れ難い。

 

チターの名手、アントン・カラスの奏でるテーマ音楽の親しみやすさも印象的だ。

 

 

 

無防備都市(1945年・イタリア):ロベルト・ロッセリーニ監督

イタリアン・ネオレアリズモの原点とも言うべき作品で、ナチス占領下のローマで構想され、解放と同時に着手された。ファシズムへの痛烈な批判が込められている。

<ネオリアリズモ = 第二次大戦後に現れたイタリア映画の新しい傾向で、現実を客観的に凝視し、ドキュメンタリー風に描写した作品)

 

ゲシュタポの凄惨な拷問に遭うレジスタンス運動の指導者マンフレディ(マルチェロ・パリエーロ)、抵抗運動を支援する無表情なドン・ピエトロ神父(アルド・ファブリッツィ)、恋人をナチスに連行されるピーナ(アンナ・マニャーニ)の3人を軸に物語が展開する。

 

特に、恋人をドイツ軍のトラックに連行されるのを、ピーナが狂気の叫びをあげて追うシーン。

映画史に残るこの場面は、本作のタイトル・スチールにもなっている。

 

ロッセリーニ監督が私財を投げうって製作した本作に感動したイングリッド・バーグマンが、夫と娘を捨ててロッセリーニ監督のもとに走ったことは周知の事実。

 

 

 

天井桟敷の人々(1945年・フランス):マルセル・カルネ監督

古典の風格を備えた名画で、常にフランス映画の顔として君臨してきた作品。

 

19世紀、パリの「犯罪大通り」にあるフュナンビュール座の天才的パントマイム役者バティスト(ジャン・ルイ・バロー)は、見物人の妖艶な女ガランス(アルレッティ)が泥棒の嫌疑をかけられたところを、コミカルなパントマイムで状況を演じ(説明し)、ガランスの無罪を証明してみせた。
ガランスもしがない女芸人であったが、2人は恋におちる。一座の座長(マルセル・ペレス)の娘ナタリー(マリア・カザレス)は、バティストを愛していた。ガランスに言い寄る男たちは様々で、女たらしの俳優、犯罪詩人、伯爵等...これらの人々が運命に翻弄される波乱万丈の人間ドラマを、第一部「犯罪大通り」、第二部「白い男」の二部構成、190分で魅せていく...

 

そもそも「天井桟敷」とは、劇場の最後方・最上段の天井に近い観客席のことで、舞台から遠いため、最も安価な料金が設定される。本作でも、その「天井桟敷」に陣取った観衆が、悪意のないヤジや指笛、声をからしての声援を送り続ける様子が何度も登場する。

エスプリの効いた名台詞の数々が有名な作品だが、こういった群衆シーンを織り交ぜる構成は、マルセル・カルネ監督の真骨頂であろう。

 

「犯罪大通り」のオープンセットが全長400メートルであることや、群衆のエキストラが実に1500人、製作費16億円は当時としては破格の規模である。

 

主人公のガランスを演じたアルレッティは、本作出演時すでに47歳だったが、独特な気品と妖艶な雰囲気を併せ持つ女優で、この映画が彼女の代表作といっていい。
成熟した女の香気は観る者を圧倒、おそらくアルレッティの存在がなければ、本作は史上不滅の名作と呼ばれることはなかったであろう。

 

 

 

自転車泥棒(1948年・イタリア):ヴィットリオ・デ・シーカ監督

純粋な映画、実に純粋な映画だ。
職を失わないために、生きるために、盗まれた自転車を必死で探す主人公と息子。
その姿には、真実と一握りの幸福を追い求める、戦後のイタリア庶民の姿がダブってみえる。

 

舞台は第二次大戦後のローマ。職業安定所の斡旋で、役所のポスター貼りの仕事にあり就いたアントニオ(ランベルト・マジョラーニ)は、質屋に入れていた自転車を買い戻し、高ぶる気持ちを抑えながら仕事に出る。妻のマリア(リアネーラ・カレル)や、息子のブルーノ(エンツォ・スタヨーラ)も、一家の主の姿を誇らしく思う。ところが商売道具の要の自転車を盗まれてしまい、父子は必死になって自転車を探し回るが、どうしても見つからない。思い余ったアントニオは、息子の見ているまえで、遂に事件を起こしてしまう...

 

印象的なシーンが2つある。
父子が途方に暮れて、あてもなく歩き、サッカーの試合をしているスタジアムの前で座り込む。
スチール写真にも使われているが、落胆した父を、子ども心に気遣う息子の表情が切ない。
もう1つは、雨のシーン。ローマの街中を、傘もささず、上着を端折って足早に歩く父子の姿。
白黒画面に、その雨粒と、石畳の光沢が見事に映し出される。(撮影はカルロ・モンテュオリ

 

ブルーノ少年を演じたエンツォ・スタヨーラは出演時9歳。現在は84歳で御存命。(2024.02.09現在)

 

 

 

美女と野獣(1946年・フランス):ジャン・コクトー監督

「美女と野獣」は映画や舞台、テレビや童話の世界などで、数々の作品が作られている。

あらすじの骨幹は変わらないものの、微妙なストーリーの違いや、作り手側による微妙な濃淡の違いもある。本作は、詩人コクトーが監督と脚本を務めた、最も古い「美女と野獣」の映画

 

昔、年老いた商人がいた。末娘のベル(ジョゼット・デイ)は美しく優しい娘で、いつも意地悪の姉2人にいじめられていた。ベルは腕白な兄(ミシェル・オークレール)の友達アヴナン(ジャン・マレー)から求婚されていたが、父の世話をするために拒んでいた。一方、兄は高利貸に、自分がした借金を支払うことが出来ないならば父を告訴する権利を与える、という契約にサインする。父は自分の船が沈んだので破産を覚悟していたが、その一隻が無事入港したと聞いて喜んだ。父が港に着いてみると船は債権者に押収されてしまい、止むなく夜道を馬に乗って帰って来る途中、いつのまにか道を踏み迷ってこれまで見たことも聞いたこともない荒れ果てた古城に行き当たる...。

 

幻想的なファンタジー・ロマンながら、子どもの気持ちに寄り添った作りになっている。

何処にでも行ける手袋、会いたい人の顔を見ることが出来る魔法の鏡などは、興味深々の「お宝」である。さらに豪華な城や白馬の登場、さほど恐くない野獣(子供目線から見ても)にも愛らしさを感じるかもしれない。

 

 

 

ハムレット(1948年・イギリス):ローレンス・オリヴィエ監督

中世の心理悲劇を再現したローレンス・オリヴィエ渾身の一作で、彼は監督、製作、脚本、そして主演の4役をこなし、アカデミー賞では見事主演男優賞に輝いている。

 

13世紀デンマーク。エルシノーア城の王が毒蛇に噛まれて急死。王位は弟のクローディアス(ベイジル・シドニー)が継ぎ、前王妃のガートルード(アイリーン・ハーリー)とも結婚する。

だが、前王の王子ハムレット(ローレンス・オリヴィエ)は成人するに従い、父の死に疑いを抱きはじめ、その言動は次第に狂気の色を帯びはじめる。重臣ポローニヤス(フェリックス・アイルマー)の娘オフェーリア(ジーン・シモンズ)への恋の囁きも、真実とも戯れともつかない。そんな中、ハムレットは城の高台に父の亡霊が現れることを知り、亡霊の言葉から、父の死は叔父と母とによる謀殺であることを知る。父殺しの証拠をつかまんとするハムレットと、狡猾な叔父との間で陰湿な策略合戦が始まる...
 

このシェークスピア劇を見事に映画として再現したオリヴィエ。

舞台で鍛えぬかれたその類い稀な演技力は、ハムレットの憂鬱を表現する一瞬の表情、しぐさ、あるいはセリフ回しの口跡の見事さなどに遺憾なく発揮されている。

 

共演陣では、オリヴィエから相手役に指名されたといわれているジーン・シモンズ(出演時18歳)をはじめ、ピーター・カッシングクリストファー・リー(セリフ一つの衛士役)という後の怪奇俳優が出演。更にアンソニー・クエイルスタンリー・ホロウェイデズモンド・レウェリンといった錚々たる面々がクレジットされている。

 

上記作品以外にも、「逢びき」(46年・イギリス)、「ヘンリー五世」(45年・イギリス)、「鉄路の闘い」(46年・フランス)、「赤い靴」(48年・イギリス)、「靴みがき」(46年・イタリア)等々、名作が並ぶ。機会をみていつの日か触れてみたい。

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1 件の返信 (新着順)
飛べない魔女
2024/02/15 10:31

洋画さん!「自転車泥棒」は最高に好きな映画です。名作ですね。あの少年役の役者さんはご存命なのですね。今時の84歳は若いですものね!名演技でした。
観たことがない作品は早速リストインしました。すこしづつ消化していきます。命ある限り(笑)


趣味は洋画
2024/02/15 23:01

早速のコメントありがとうございます。

>観たことがない作品は早速リストインしました。
えっ! このなかで魔女さんでも観たことのない作品がありましたか。
意外です。
どの作品レビューが登場するのか、気長にお待ちします。
それが楽しみでもあります。
2024.02.15