日活俳優録1 宍戸 錠
このタイミングで日活編がスタート。恐らく3~5回で終了だろう。

54年、日活が映画製作を再開することになり、新人スターが必要となり第1期ニューフェイスの募集が行われた。知っている人も多いだろうが、宍戸錠はその第1期ニューフェイスの一人である。
宍戸錠は33年生まれ。芸名っぽい名前だが本名である。錠という名の由来は子だくさんで、最後の子にしたい母の想いからだったそうな。とは言っても当時では普通の4人目の子供で、4年後には弟の鍈治(郷鍈治)が誕生しているけれども。
小学校6年の時に東京大空襲で家を焼かれ宮城県白石へ疎開、高校までそこで過ごした。高校ではバスケ部だったが、演劇部にも助っ人として参加したりしており、この頃には映画スターになろうと決めていたという。
大学は日本大学芸術学部に進み、二年の時にニューフェイス募集の記事を目にする。それを知らせにきた友人の友人が当時早稲田の学生だった菅原文太である。同い年で宮城の高校に通っていたという共通点がある。
第1期ニューフェイスは全部で21名いた。男性は宍戸と名和宏、牧真介、北原隆、野村隆(須藤孝)、鈴木伸一、今村弘、林隆の8人。女性は木室郁子、佐久間玲子、武藤恒子、堤知子、星野晶子、長谷川てる子、明石淳子など13人であった。宍戸の著書を読む限り、男性陣は4人4人に分かれており、宍戸の組は林、鈴木、今村で特に親しかったのは今村のようである。著書で触れられるのも彼らが多い。今村弘は端役がほとんどだが、62年まで出演記録がある。しかし、鈴木や林については、見当たらない。一方で他の四人はそれなりに活躍したが、名和と北原は57年には松竹に移っている。名和は宍戸と同じ日芸で同級生(年齢は名和が1つ上)という関係だが、二人が特に親しかったという様子はない(著書においては)。同じ大学の同級生ならもっと親しくても良さそうなものだが、仲が悪かったということでもないようだ。
宍戸錠と言えば、やはり豊頬手術が思い浮かぶ。普通に二枚目だった宍戸がわざわざ頬を膨らませたのである。宍戸はこれを役作りのためではなく、あくまで美容整形だと言い張っている。
そのきっかけはどうやら、大女優田中絹代の言葉にあったようである。「月は上りぬ」(55年)という田中絹代が自ら監督する作品の出演面接に宍戸と同期の今村弘が呼ばれたのである。そこで宍戸が田中に言われたのが、「いい顔だけど、現代的で少し痩せすぎかな」続いて歯を見せてと言われ「色ももう少し白くして、前三本差し歯になさい。もっといい顔になるわよ」と言われたのである。結局、選ばれることはなかったが(安井昌二、三島耕が選ばれている)、田中の言葉はずっと頭に残っていたという。
約一年後、宍戸は初の時代劇「朝やけ血戦場」(56年)への出演がきまり、「時代劇に金歯があってはいけない」と、これを機に田中に言われたとおり歯を治したのであった。

さらに、その一年後「川上哲治物語・背番号16」(57年)への出演が決まる。川上本人も出演するが、その若い頃をニューフェイス同期の牧真介が演じ、熊本工時代にバッテリーを組み共に巨人軍に入団した名捕手・吉原正喜(戦死)を宍戸が演じるのである。重要な役どころであり、チャンス到来と考えた宍戸は今までと違った何かがいると考えた。
そこで行きついたのが豊頬手術だったのである。顔が痩せていると言われていたことや、捕手ならばどっしりとしていた方が良いと思ったわけである。一人黙って手術したわけではない。両親には「好きにしていい」と言われたが、今村や弟の郷暎治には反対されたという。美容整形外科の先生も十分にいい男だからと反対したが、結局は決行し頬にオルガノーゲンという物質を注入した。

豊頬してからの活躍は今更書くまでもないと思うが、それ以前の代表的作品といえば「警察日記」(55年)であろう。舞台が東北の田舎町の警察署なので、宮城に七年住んでいた宍戸が抜擢されたのである。ポスターにも森繁久彌、伊藤雄之助、宍戸錠(新人)、杉村春子、三國連太郎と錚々たるメンツの真ん中に名前が載っていたのである。


専ら日活アクションの小林旭、赤木圭一郎主演作の敵役として活躍していたが、61年からは主演に昇格。これは石原裕次郎のケガ(骨折)という事情があった。赤木圭一郎の事故死はその後の(公開は赤木の完成品での遺作「紅の拳銃」が早い)出来事だ。「ろくでなし稼業」が初主演で、「早撃ち野郎」「用心棒稼業」と立て続けに主演が続いたのである。
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投稿を表示多分、コメントは初めてになります。さっちゃんと申します。
宍戸錠の豊頬手術のきっかけが田中絹代というのは初めて知りました。tetsu8さんの記事はときどき拝読しておりますが、私も宍戸錠が好きなので書かせていただきました。
彼の出演作をすべて観てはおりませんが、ハードボイルドとも言える自分の中に規律を持っている男を演じることが多く、あの片頬を上げて笑うのが好きですね。
そういう意味では『拳銃(コルト)は俺のパスポート』が一等、好きです。ラストの単身、組織と渡り合う姿は格好いいというのを超えて堪らない緊張感とカタルシスを感じます。
残り少ない時間ですが、これからも楽しみにしています。
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投稿を表示川上哲治物語はテレビで観ました。吉原捕手が宍戸錠が演じてたとは知らなんだ・・・
川上本人が出てきて、本人のプレー映像が出てくるのですが、ずいぶんアッパースイングだなという印象でした。解説ではダウンスイングとうるさく言ってたんだけど、あれがダウンスイングなのか?