沖雅也の出演映画(日活時代)その2
引き続き沖雅也の日活時代の出演作品を追ってみたい。
70年に入って、日活でも任侠映画が多くなっていたが、沖は若い組員役など役にはあまり恵まれていなかった。クレジット順も10番手前後であることも多い状況であった。
「やくざの横顔」「斬り込み」(70年)は、いずれも主演は渡哲也。前者で沖の役柄は丘みつ子の弟というもの。後者では郷鍈治、岡崎二朗、藤竜也と同様の若手組員の一人。敵役は曾根晴美で、東映一筋だったがこの年より日活作品に出演するようになっている。杉良太郎と中村竹弥の「大江戸捜査網」コンビも共演している。
「盛り場仁義」(70年)は、主演が北島三郎、里見浩太朗で思わず東映作品?と思ってしまう。北島は69年から日活作品に顔を出し始めたが、里見は恐らく本作が実質的日活初出演ではないだろうか。東映は任侠映画中心になり、時代劇が製作されなくなっていた。里見は任侠映画は合わないとテレビ中心にシフトしていたが、日活でも結局、任侠映画へ出演することになってしまっている。
実質的と書いたのは、同じ月(1月)に「関東義兄弟」が一足早く公開されたため。これに北島、里見も出演しているのである。主演扱いは村田英雄で、役者としてはやはり東映のイメージだ。ただ、制作はニューセンチュリー映画であり(配給が日活)、日活俳優は梶芽衣子くらいしか出演していない。
「盛り場仁義」での沖の役柄は土建会社(元は組)の社員。二谷英明、川地民夫、梶芽衣子、岡崎二朗、丘みつ子、白木マリ、今井健二らに加え、三波伸介が顔を出している。
「花の特攻隊 あゝ戦友よ」(70年)は、この時期には珍しい戦記物で原作は川内康範。杉良太郎が主演で浜田光夫、藤竜也、岡崎二朗、郷鍈治、川口恒、長谷川明男そして沖雅也らが特攻隊員に扮する。他の出演者は梶芽衣子、和泉雅子、伊藤るり子、三ツ木清隆、曾根晴美、南原宏治、丹波哲郎など。杉はテレビでは既に主演があったが、映画では本作が唯一の主演作のようである。しかも、本作以降は劇場用映画には出演していない。
打って変わって「いちどは行きたい女風呂」(70年)。「ハレンチ学園」がヒットしている時期で、その路線を狙った喜劇という感じである。浜田光夫が主演で、予備校生の役。ちなみに当時26歳だ。他に夏純子、岡崎二朗、深江章喜、長谷川照子、由利徹、小松方正、前野霜一郎など。「ハレンチ学園」にも出演していた星野みどり、増田ひろ子なども出演している。
沖の役柄は高校生だが、銭湯の息子で東雲(しののめ)修次。その兄・建一を演じるのが南雲修治。この人が主題歌である「女風呂の唄」を歌っている。当時ナンセンスフォークの帝王などと呼ばれており、この歌が小ヒットしたことにより本作が作られたとも言われている。沖の役名はこの人から来ているようだ。