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tetsu8
2025/10/25 13:13

東宝俳優録13 二瓶正也、古谷 敏

東宝ニューフェイス15期には、「ウルトラマン」に出演した二人の名がある。二瓶正也と古谷敏である。
 

二瓶正也は40年生まれで、父親はドイツ人、国会議事堂のある永田町の出身である。高校三年の時東宝芸能学校の夜間部に入学し、60年に第15期東宝ニューフェイスとして入社している。
 

61年に岡本喜八監督の「暗黒街の弾痕」の殺し屋B役で本名である二瓶正典でデビューを飾るとウィキペディアなどではなっているが、それ以前に通行人役で守屋浩主演の「僕は泣いちっち」(60年)が最初だったと思うと本人は語っている。ちなみに殺し屋Aは桐野洋雄だがハーフである二瓶よりも外国人っぽく見える。入社してからは大部屋のB2を半年やって、B1を1年、そしてすぐにAフォームに上がったという。-
 

ハワイの若大将」(63年)では、ずっと若大将の友人・江口役を務めていた江原達怡が、海に落ちるシーンを嫌って降板。江原はカナヅチだったのである。代わりに江口役に抜擢されたのが二瓶であった(本作のみ)。加山雄三がメンバーを集めて結成したランチャーズの結成時のメンバーでドラムス担当が二瓶だったという縁からかもしれない。
 

岡本喜八作品やクレージー映画等を中心に活動していた二瓶であったが、「ウルトラマン」(66年)でイデ隊員役に起用されたのである。実はこの役は当初は石川進に決まっており、実際に撮影も始まっていた。当時の石川は「おはようこどもショー」の司会やアニメソングの歌唱などで子供人気も抜群にあったが、出演料の安さなどから二日で降板してしまったのである。

そこで急遽決まったのが前作「ウルトラQ」に三度出演していた二瓶であった。

これですっかりお茶の間の人気者になった彼は、「マイティジャック」(68年)にも源田隊員として出演している。イデ隊員に比べると二枚目よりだったが、1クールで番組打ち切りが決まり二瓶と南廣の二人を残して「戦え!マイティジャック」にリニューアルされている。同じ源田ではあるが、また違う人の感じだったと本人は語っている。69年に東宝を退社した後はテレビが活動の中心となっている。
晩年は、すっかり太って昔の倍くらいになったように見えた。2021年、80歳で亡くなっている。

古谷敏は43年生まれ、二瓶が永田町なら古谷は西麻布の生まれである。二瓶と同様に60年に第15期ニューフェイスとして東宝に入社した。デビューして「モスラ」「世界大戦争」(61年)といった特撮作品に出演しているが、いずれもノンクレジットであった。初めて名前が出たのは「吼えろ脱獄囚」(62年)であった。しかし、その後の作品、やはり特撮作品への出演が多いのだがノンクレジットの端役が多かった。
 

三大怪獣地球最大の決戦」(64年)では、何と四つの役を演じており、さすがに名前はクレジットされているが、クレージーキャッツ結成10周年記念映画「大冒険」(65年)でも三役を演じながらノンクレジットなのである。映像をチェックしていないのであれだが、三役四役といってもセリフはほとんどないだろうし、あまり印象に残るタイプでないことは確かだ。
 

そんな中、65年には古谷は円谷プロへの出向を命じらている。そして「ウルトラQ」に出演することになる。ここで彼は「ぬいぐるみ役者」としての初仕事をすることになる。長身でスマートなところが買われ、ケムール人海底原人ラゴンの中に入ったのである。円谷プロの美術デザイナーである成田亨は古谷が中に入ったことで自分のイメージ通りになったことを喜んだ。
そこで「ウルトラマン」の放送が決定したとき、中に入るのは古谷しかいないと成田自身で彼を説得したのである。顔の出ない役は嫌だと難色を示していた古谷だったが、映画が斜陽になっていた時期でもあり、引き受けることになる。そんな中、イデ隊員役が石川進からニューフェイス同期である二瓶正也に変更となった。お茶の間に認知され、人気者へとなっていく二瓶に顔を出せない古谷は複雑な想いがあったかもしれない。

であるから「ウルトラセブン」においてアマギ隊員役をふられると同時に、成田からはセブンの中に入ってほしいと懇願されるもアマギ役を選択し、セブンの中の人を断ったのは自然の流れであろう。
古谷敏といえば、結局この「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」に集約され、それ以外はどんな役をやっていたか知らないという人も多いと思うが、それもそのはずで、「セブン」終了後まもなくの68年に俳優業を引退してしまったのである。で、始めたのが怪獣アトラクションショーの主催会社「ビンプロモーション」であった。つまり、彼自身は怪獣ショーで司会を務め全国で興行していたのである。
 

ビンプロモーションは91年に解散し、古谷は所在不明となり、一時は死亡説まで流れたらしい。
姿を消していた古谷だったが、07年頃から円谷プロ関係者と連絡をとるようになり、「ウルトラマンになった男」を出版したり、俳優業に復帰したりしている。

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