沖雅也の出演映画(日活時代)その3
今回も沖雅也の日活時代の出演作品を。
71年なので、日活が一般映画の製作を休止して、日活ロマンポルノに移行することになる年である。配給も大映と統合し、ダイニチ映配となっている頃だ。
「男の世界」(71年)は、日活と石原プロの製作で石原裕次郎にとって最後の日活出演となった作品である。沖雅也が日活時代に裕次郎と共演した作品は本作のみだが、数年後にご存知の通り「太陽にほえろ」でレギュラーとして共演することになる。裕次郎が自ら企画製作したアクション作品で、一匹狼のヤクザという役柄。カナダに移住していたが突如帰国したため、宍戸錠扮する警部が付けまわす。悪役となるのは内田良平、大滝秀治。沖はフーテンとして登場するが、クレジットは三番手となっている。トップは勿論裕次郎だが、じゃあ二番手はというと何となべおさみ。
未見なので何とも言えないが、なべの役柄は洗車屋の店長で、役名も設定がないようだ。あらすじを見る限りでは、重要な役というわけでもなさそう。以前から書いているが、この頃(70年前後)のなべは不思議なほど、クレジット的には大物扱いされていたのである。他の出演者は川地民夫、杉山俊夫、武藤章生、小高雄二といった日活メンに加え、菅原謙次、二瓶正也、鳥居恵子といった他社イメージの強い面々も顔を揃える。ちなみに二瓶は東宝を離れフリーになっており、鳥居は石原プロの所属で、彼女は最初で最後の日活作品だったようである。
「流血の抗争」(71年)は宍戸錠主演で、沖の日活出演最後となった作品である。宍戸錠は出所したての秋葉組幹部で、藤竜也や沖はその弟分である組員。佐藤允は他の組だが宍戸の幼馴染で、梶芽衣子がその妹。敵役はここでも内田良平で他に戸上城太郎、三田村元、深江章喜、三条泰子、郷鍈治など。宍戸と郷の日活での兄弟共演はこれが最後となった。
沖は「流血の抗争」が最後と書いたが、実は日活製作の一般映画最終作となった「八月の濡れた砂」(71年)の主演に抜擢されていたのである。しかし、撮影開始直後にバイクで転倒しケガをして降板となってしまったのである。藤岡弘とか岡崎徹とか、この辺りの時代は撮影中のバイク事故が多かったように思う。
沖の代わりに急遽選ばれたのが広瀬昌助だった。俳優座養成所出身でこれが映画2本目であった。広瀬と並んで主演扱いだったのが村野武範。翌72年の「飛び出せ青春」でブレイクすることになる。ヒロインのテレサ野田は大人びているが当時14歳の中学生。関根恵子(現・高橋惠子)辺りもやっていたが、この年齢で全裸シーンとか現在では許されないと思われる。ちなみにテレサは本人のクリスチャンネームである。本名は西園寺環だが、野田環としている資料も見受けられる。三人とも日活映画(旧)では最初で最後の出演となっている。他に隅田和世、藤田みどり、中沢治夫(剛達人)、地井武男、渡辺文雄、原田芳雄など。テレサと隅田和世は現在消息は不明となっているようだ。
沖雅也日活では唯一のチャンスを逃し、松竹へ移籍することになる。出演作は意外と多いのだが、役柄には恵まれず日活出身というイメージは薄いものとなっている。