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椿五十郎 バッジ画像
2023/12/15 21:32

椿が50回は観た映画!だから面白くない、訳が無い!? パニック映画超大作『カサンドラ・クロス』

▲『カサンドラ・クロス』予告編

皆さん、こんにちは!

椿ですっ。
 

皆さん、1本の映画を何度も見ることって、、ありますか??
 

私は、気にいった映画だと、何度も見たくなる性分でして、小学校の高学年から映画を意識しだして、中学校に入って「レンタルビデオ」屋ができてからというもの入り浸っておりました。家庭にも普通にビデオデッキが普及しだし、毎日のようにやっている民放各局の「洋画劇場」を、『ロードショー』『スクリーン』といった映画雑誌(決して、ステイタスの高い「キネマ旬報」ではないところが中坊!!)でエアチェックして録画。それを、まさに言葉通り「テープが擦り切れるほど」見る!という映画少年生活を送っておりました。
 

そんなわけで、『レイダース 失われた聖櫃』『ゾンビ』は生涯100回以上は見ています。そしてそれより下回って『新サイコ』『オーメン2ダミアン』『新猿の惑星』等が並ぶわけですが、そんな中に、私のとっても宝物にしている映画がありました。
 

『カサンドラ・クロス』(1976)
 

が、それです。

本作は1976年製作、イギリス・イタリア合作の超大作パニック映画です。1970年代というと、かなりの制作資金をかけた、パニック超大作が大ブームで、当時の大スターたちを起用して作られた大迫力の作品が目白押しでした。『タワーリングインフェルノ』『ポセイドンアドベンチャー』『エアポート75』『大地震』等、挙げれば枚挙にいとまがありません。

そんな中、本作は走る超高級ホテルともいえるヨーロッパを横断する、大陸横断超特急内で起きるウィルスパニックを描く、これまでのパニック映画とは一味違った斬新なアイデアで魅せる作品となっています。


おっ、おい!ちょっ、ちょっと待てよ!!
1976年の映画だろ!?
なんで12月期待の映画って!?カテゴリ違いだろ!?
もっ、もしや、投稿に付く1500ポイント欲しさに関係ない作品を!?

いっ、いえ、ちょっ、ちょっと、話きいてちょ~~だいっ!!
 

本作12月22日から来年1月4日まで

『午前十時の映画祭 13として、全国の劇場で上演が決定されておるのですよ!!
 

50回以上観ている本作なのでありますが、大スクリーンで見るのは、今回が初めて!!そんなわけで、「12月期待の映画」なわけです。私の期待もさることながら、皆さんにも、この素晴らしい映画に期待していただきたい!!そういう思いを込めてご紹介いたします!!

【ストーリー】
スイス ジュネーヴ。WHO(国際保健機構)ビル内にゲリラが侵入。警備員と銃撃戦の最中、進入禁止のラボに入ってしまい、そこにあった謎の液体を浴びてしまう。ゲリラの一人は逃げそびれ、一人は逃亡。ジュネーブ駅にたどり着いたゲリラは、そのまま停車していた列車内に潜伏。その列車こそ、本作品の舞台になる「大陸横断超特急」。
 

取り残されたゲリラはアメリカ軍の管理下に置かれ隔離。高熱に侵され気管支病の症状がおき、見る見るうちに悪化。彼らが入ったラボはアメリカが極秘裏に開発していた細菌兵器を研究していたところで、彼らはその細菌兵器を浴びてしまったのだ。

致死率、感染率ともに強力な細菌を保菌したゲリラを探すため派遣されたマッケンジー大佐はゲリラが列車に潜伏したことをつきとめる。たまたま列車に乗り合わせていた医学博士チェンバレンと連絡をとり、ゲリラを発見。しかし、彼はすでに病状がひどく進んでいる。おまけに潜伏していた車両にいた犬にも感染。

やがて徐々に乗客たちも体調不良を訴えるものが現れだす。と、列車は進路を変え、途中駅で停車。そこには大勢の、感染防護服に身を包んだ軍人たちが待ち構えていた。列車の窓をフェンスで塞ぎ、完全隔離状態にしたうえ、外部との連絡手段もすべて絶たれてしまう。

このまま列車はポーランドのヤノフにある管理施設へ移動することとなる。が、乗客の一人カプランは、かつてヤノフにあったナチスの収容所に入れられ拷問を受けた記憶が鮮明に残っておりパニックを起こす。チェンバレンに抑えられ、平静になったカプランだったが、そのヤノフの収容所までの地図を見て唖然とする。収容所の手前には「カサンドラ大鉄橋」という、廃線になりボロボロになった鉄橋があるからだ・・。そんな鉄橋に乗り上げれば、橋は崩れ、列車は瞬く間に谷底へ・・・。

マッケンジーの企みを知ったチェンバレンはほかの乗客とともに反旗を翻し、橋に到達するまでに列車を止めようと車内でテロを起こす。果たして、細菌による病から人々を救い出せるのか?そして、列車を止めることができるのか!?

 

【豪華出演陣】
 

 70年代パニック映画のセオリーに則って作られた本作は、出演者の豪華さに目を奪われます。
医師チェンバレンに『ワイルドギース』『グラディエーター』『ハリーポッター』シリーズの初代ダンブルドア等を演じた、リチャード・ハリス。その別れた妻に『ひまわり』『ふたりの女』のソフィア・ローレン、マッケンジー大佐には『OK牧場の決闘』のバート・ランカスター、イングマール・ベルイマン監督作品の常連女優イングリッド・チューリン、『地獄の黙示録』のマーティン・シーン、『キリマンジャロの雪』等の往年の名女優エヴァ・ガードナー、その他、ジョン・フィリップ・ローアリダ・ヴァリO・J・シンプソンレイモンド・ラブロックライオネル・スタンダールと、この年代を活躍した国際色豊かなスターたちが集結。

中でも、アクターズ・スタジオの立役者としてメソッド演技を指導し、ジェームズ・ディーン、マリリン・モンロー、マーロン・ブランド等を育てたリー・ストラスバーグがカプラン役として出演。彼の数少ない映画出演での演技を見ることができます。非常に心根の優しい老人ながら、ナチスの収容所時代の深い傷を抱え生きている男性を見事に演じています。彼の芝居を見るだけでも一見の価値があると言えるでしょう。

【監督は若干35歳】
 

本作のプロデューサーはイタリアの大物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスと肩を並べる、大物カルロ・ボンティ。彼が本作の監督として見出したのは、ギリシア人のジョルジ・パン・コスマトス。当時若干35歳。まだ劇場作品は1本しか監督したことがない、という人物。そんな人に、これだけ大スターがそろい、製作費をかけた作品を監督させることができるのか?
しかし、さすがは名プロデューサー。彼の目に狂いはなく、コスマトスは実に見事に作品を作り上げます。サスペンスシーンの緊迫感、アクションシーンの目まぐるしさをスクリーンいっぱいにはたきこむことが実に巧み。それだけではなく、冒頭のジュネーヴや、列車が走る自然の山波などの風景描写の美しさは特筆すべきものがあります。
彼は本作以降、特にアクション映画で活躍。スタローンと組んだ『ランボー 怒りの脱出』『コブラ』、B級モンスターホラーの傑作『リバイアサン』等を監督しました。名前こそ、世にボン!と出てきた監督ではありませんが、堅実に映画を作る職人技を見せてくれました。 

【素晴らしすぎる音楽】

 本作はとにかく音楽が素晴らしいのです。音楽は巨匠ジェリー・ゴールドスミス。ジョン・ウィリアムズと並ぶ映画音楽の巨匠中の巨匠ですが、18度もオスカーにノミネートされながら受賞は『オーメン』の1度だけ。サスペンスやアクション、ホラーといった作品では他の追随を許しません。音楽にも理解の深い映画監督に大変重宝され、素晴らしいスコアを残しています。また映画のシーンに対して音楽の使いどころを最もよく理解し押さえている作曲家としても評価が高いです。(そのためよく監督と衝突することも・・。『エイリアン』でのリドリー・スコットとの対立は有名)
 そのゴールドスミスの仕事らしさは、特に60~70年代の映画に充てられた作品のスコアで顕著に表れています。(余談ですが、この時代のゴールドスミスのスコアは、70~80年代に幼少のみぎりにTV『水曜スペシャル』の「川口浩探検隊」を見た人たちならば超お馴染み。『猿の惑星』『カプリコン1』そして本作からの音楽がよくBGMで使われていました)
この『カサンドラクロス』のスコアも非常にエキサイティングにアクションを盛り上げてくれます。それだけではなく、テーマ曲、「愛のテーマ」と言われる楽曲ではとてもメロウな美しい曲を提供。冒頭のジュネーヴの河からの空撮の美しい風景と音楽が見事にマッチ。ここだけですでに引き込まれます。

【みどころまとめ】
 

▲ソフィア・ローレン
Portrait of Sophia Loren, probably taken for publicity use.
▲エヴァ・ガードナー
Photo of Ava Gardner from her role in Show Boat

① 軍対一般市民
 一般の乗客が銃をとり、防護服着た陸軍軍人と対決する。しかも戦場は狭い列車内。普通なら考えも及ばない対決。一般市民はどう、アメリカ陸軍と対峙してゆくのか

② 感染防護服を着た軍人
 真っ白く全身を覆った感染防護服にガスマスク。この軍人が銃を構えて行き来する姿が、カッコ怖い。途中停車した夜の駅。暗闇からいきなり車両全体にライトが照らされると、列車がこの集団に全包囲されているシーンがゾクッとします。
 この防護服は以後、この手の作品でよく登場するようになりました。(実際には『ゾンビ』のジョージ・A・ロメロの『ザ・クレイジーズ』という作品の方が、先にこの手の軍人を登場させています。日本では劇場未公開で、テレビ放送された際には『第2のカサンドラクロス』なるタイトルがつけられてしまいました(笑)

③ 往年の美人女優の競演
 ソフィア・ローレン、エヴァ・ガードナーといえば、若いころものすごーーーーーーーーーーく、美人な女優さん。歳を重ねて芝居にも深みが増し、誰もが評価する大女優です。このお二人、お顔のパーツが非常にはっきりしており、そこがチャームポイントとなったわけですが、お年を召されてからの本作を見ると、そのチャームポイントが余計に強調されて更なる魅力を振りまいています。
 イングマール・ベルイマンの作品にはなくてはならない女優のイングリッド・チューリン、『第三の男』等に出演しているイタリアの名女優アリダ・ヴァリ(ホラーファンには『サスペリア』の鬼教師で有名)も出ていて、名女優の魅力的な競演作でもあります。

④ とにかく音楽 

 前述のとおり

⑤ 名演技
 アクターズ・スタジオの指導者として、数多くの名優を輩出。今もアメリカの演劇人に多大な影響を与え続けているメソッドを広めたといっていい、リー・ストラスバーグ。彼の演技が本作最大のみどころです。どの演技も素晴らしいですが、食堂車内でずっと懇意にしていた車掌と二人だけで話すシーンが、椿は非常に心打たれました。車掌役はこちらも大ヴェテランのライオネル・スタンダール。スタンダールは70年代の映画を見ていると、わりによく見る顔ですが、若い頃、ハリウッドの汚点である「赤狩り」に合い、20年近く干されていました。
この二人がしみじみ語り合うシーンは短いですが、非常に趣のある場面となっています。 

⑥ アクションシーンの数々
 トレインアクション、ヘリコプターアクション、暴走列車アクション・・・
 CGの無かったこの時代に、「すげぇ、どうやって撮ったんだろう」とうなりたくなるアクションシーンの数々を楽しめます! 

この名作を、是非皆様にはスクリーンで体験していただきたい!という気持ちでまた語りすぎました・・。

クリスマスからお正月にかけて、この作品を持ってくるという『午前十時の映画祭』の関係者のセンスの良さには脱帽いたします。
しかも、通常2本の作品を2グループの劇場に分けて、1週間交代で上演する方式をとるこのイベントですが、この『カサンドラ・クロス』は2週間、どちらのグループも本作での上映となります。

いやっ!ほんと、分かってるぅっ!

そんなわけで、皆さま、観て損はありません!
いや、絶対「見てよかったぁ!!」となること請け合いますから、どうか、どうか、劇場で本作、体験されてみてくださいっ!!

最後に、午前十時の映画祭選考委員の笠井信輔さんによる作品紹介をご覧ください
(私の紹介よりためになる!?)
 

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