Discover us

私の好きな映画

tetsu8
2024/05/28 22:55

中田博久の出演映画 その2

前回の続きで、中田博久である。

66年は「黄金バット」。戦前からの人気紙芝居の実写化である。主演は千葉真一で、ヒゲを蓄えヤマトネ博士という役でありバットに変身するわけではない。黄金バットは元からあの姿である。他の出演者は筑波久子、山川ワタル、高見エミリーなどで、中田は泉石捜索隊員の一人を演じている。アニメ版の主題歌がそのまま使用されているが、東映アニメではなく第一動画の製作である。声もアニメ版と同じ小林修が演じている。
 

66年の映画出演記録はこの1作だけのようだが、テレビでは「名探偵明智小五郎シリーズ 怪人四十面相」の主演つまり明智小五郎役に抜擢されている。東映ではなく「月光仮面」「隠密剣士」などで知られる宣弘社の製作である。当時は「007」の影響でスパイアクションブームでもあり、明智の乗る特殊カーなどそういったテイストが強くなっている。
四十面相は二十面相と同一人物で、原作で一時期バージョンアップ的に使用されたのだが、また二十面相に戻っている。その四十面相を演じたのは「隠密剣士」でも敵の首領を演じた天津敏。他に秘書役の梓英子、小林少年役が関口守一、刑事役の幸田宗丸など。少年探偵団には内田喜郎がいた。梓英子はデビューこそ成人映画であったが、すぐに清純派女優へ転身している。前述の「昭和残侠伝」にも出演していた。
全13回でモノクロということもあり、あまり知られていない作品である。「黄金仮面」「天空魔人」に4話づつ「透明怪人」に5話という配分である。ゲストは牧冬吉、初名美香、国景子、今井健二などであった。

67年は映画出演はなかったようだが、それもそのはずで特撮ドラマ「キャプテンウルトラ」の主役に抜擢されたためである。
円谷プロの「ウルトラQ」「ウルトラマン」は大人気となり怪獣ブームを呼び、視聴率も良かったのだが製作が追い付かなくなり終了せざるを得なかった。放送局のTBSは放送継続を望んでいたこともあり、テレビ特撮番組への参入を目論んでいた東映が企画を持ち込んだ。資本提携下にあったNET(現テレビ朝日)以外で放送枠を獲得したいという狙いもあった。
こうして、ウルトラシリーズ第3弾として「キャプテンウルトラ」がスタートしたが、元々半年間限定であった。円谷プロが制作体制を整える間の繋ぎという意味合いがあり、実際半年後にスタートしたのが「ウルトラセブン」だった。
中田の抜擢は前年に「歌人四十面相」で明智小五郎を演じていたのが大きかったのかもしれない。他にレギュラーとしてアカネ隊員役に城野ゆき、キケロ星人ジョーに小林稔侍、ロボット・ハックに佐川二郎(スーツアクターと声)、ムナトモ博士にベテラン伊沢一郎が配された。城野は65年にスカウトされての入社で、専ら大人向けの映画に出演していたが、初の子供向け作品だった。小林は第10期ニューフェイスではあるが、大部屋役者として活動しておりチンピラ役や悪役がほとんどだった。佐川も大部屋役者で、顔の見えない本作が代表作といえるかもしれない。12話で小林が降板した(させられた)のはアンケートの結果、人気がなかったからというのは有名な話。その後また悪役に戻って行き、現在のような地位を築き始めるのは80年代になってからである。
そういえば、キャプテンの本名は本郷武彦というが劇中でこの名が出たたかどうかは定かでない。後の「仮面ライダー」の本郷猛に似ているが、原作の石ノ森章太郎が考えたとしたら偶然だろうが、東映のプロデューサーは同じ平山亨なので、東映側の命名ではないだろうか。

本作にも劇場版は存在するが、テレビの2話と5話を再編集したものである。
 

68年も映画出演は「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊」だけのようである。これは、東映オールスターキャストによる戦記物。鶴田浩二、松方弘樹、梅宮辰夫、伊丹十三、千葉真一、山田太郎、待田京介、里見浩太朗、志村喬、山城新伍、池部良、近衛十四郎、藤山寛美、小川知子、佐久間良子、藤純子など。中田は望月少尉という役である。高倉健も出演予定がったが、ギャラで揉めていたことやヤクザ映画ばかり充てられることへの不満、本作も添え物のような役だったということもありドタキャンしたという。
 

さて、中田博久だが69年以降はテレビでは正義路線に行くことはなく、悪役が目立つようになっていく。それは映画でも同様であり、不良番長シリーズの「練鑑ブルース」「どぶ鼠作戦」新網走番外地シリーズ「さいはての流れ者」「他人岬の決闘」などで印象のある悪役をこなして行く。この両シリーズには70年代に入っても、たびたび出演している。 

コメントする