舟木一夫の出演映画
西郷、橋と来たので、大方の予想通り今回からは舟木一夫である。
舟木一夫は44年愛知県生まれで、本名は上田成幸という。中学の頃から歌手を目指し歌謡教室に通っていたりしていた。高二の時、名古屋で行われた「松島アキラショー」を見に行ったところ、松島が観客に一緒に歌いたい人を募り、立候補した舟木が(実際は隣にいた友人が彼の手首を掴んで挙げたもの)松島と「湖愁」を一緒に歌いあげた。それを取材に来ていた週刊明星の記者が見ており、東京でホリプロ会長の堀威夫に話したところ興味を持った堀が、舟木に歌のテープを送らせたのだった。それを聞いた堀は翌年彼を上京させ、遠藤実のレッスンを受けさせ、橋幸夫の対抗馬として63年にデビューさせたのである。与えられた芸名は舟木和夫だったが、本人の希望で「一夫」になったという。

63年6月のデビュー曲は「高校三年生」。3月に高校を卒業していたが、学生服姿で歌うことになった。これが大ヒットし、11月には映画化もされている。これが映画デビュー作でもある。
「高校三年生」から数本の舟木が出演している映画にはほぼ堺正章も出演していたので、堺正章の項に紹介してしまっており、だぶる記述もあるが了承願いたい。これは共にホリプロ所属だったからであろう。堺は既にスパイダースに加入はしていたが、レコードデビューはしていない時期で役者として活動していた。
「高校三年生」は大映作品。主役扱いは舟木ではなく、姿美千子、倉石功である。姿は元々、ライバルである橋幸夫の相手役として公募デビューした女優である。倉石も「ミスター平凡」グランプリから大映ニューフェイスとなり、この年デビューした期待の新人であった。「ザ・ガードマン」で活躍するのは周知であろう。同級生役だが、クレジット的には二番手が高田美和で、舟木は四番手である。堺や渚まゆみも同級生の役。中条静夫が姿の家(織物問屋)の従業員役で出演している。

63年はもう一本、日活の「学園広場」がある。舟木の三枚目シングルタイトルでもある。こちらでも舟木は主演ではなく、山内賢と松原智恵子が主演扱いだ。二人は高二の役だが、舟木は勿論高校三年生の役。主題歌は「学園広場」だが、「高校三年生」も挿入歌として使用されている。ちなみに舟木の役名は二作とも船田一夫である。高校生役では堺もそうだが、かまやつひろしや田代みどり、市川好郎、西尾三枝子、谷隼人(当時岩谷肇)、沖田駿一(当時吉田毅)らが出演。舞台は東京の高尾高校となっているが、ありそうで実在しない。ちなみに谷隼人は高尾(八王子)にある高校を中退している。他に桂小金治、清川虹子、トニー谷、佐野浅夫、安部徹、殿山泰司、ミッキー安川(当時安川実)など。

64年は東映、日活、大映各社の作品に出演。「仲間たち」は日活で、舟木の4枚目シングルタイトルでもある。こちらの主演は浜田光夫と松原智恵子で、高校生ではなく、浜田はトラック運転手、松原はバスガイド、舟木は中華料理店の店員である。堺は浜田の助手で、藤竜也(新人)は運転手の一人。まだヒゲはないので、一瞬誰だかわからないが、妙に目立っている。他に松尾嘉代、内藤武敏、桂小金治など。林家三平が本人役で、かまやつひろしが「田辺昭知とザ・スパイダース」のメンバーとして歌っているが、他メンの顔はわからない。単独で「井上高之」のクレジットもある(正しくは孝之/当時、後に堯之)。

東映での二本は、堺正章のところで取り上げているのだが、どちらも舟木が主演なので改めて。
「君たちがいて僕がいた」が初主演ということになるようだ、これまではスケジュールの都合もあり、助演に留まっていたのである。ヒロイン役は本間千代子で、共に高校三年生の役だ。舟木はここまでその名をもじった役名ばかりだったが、今回は何故か「佐藤洋」という一般的な役名になっている。堺正章や新井茂子が同級生役で、千葉真一が先生の役。他に宮園純子、須藤健、佐野周二、高峰三枝子などが出演している。

「夢のハワイで盆踊り」も舟木と本間のコンビ。今回は大学生の役である。タイトル通り長期のハワイロケを敢行しているが、実は東映初の海外ロケ映画だという。他に堺正章、高橋元太郎、大村文武、風見章子、加藤治子、笠智衆など。映画タイトルと同名曲が主題歌だが、舟木に加え本間、高橋、そして出演もしているコロムビア・ローズによって歌唱されている。
二作とも好評だったため、東映サイドは舟木・本間コンビの三作目を企画したのだが、舟木の事務所がギャラのアップを要求。実は前二本も150万円と東映生え抜きスターより高額で、これを耳にした高倉健が不満をぶちまけ、安すぎる自分のギャラも上げるように迫った。東映は仕方なく舟木の出演をあきらめ、舟木・本間のコンビは二本で終了することになり、本間の相手役は西郷輝彦にチェンジされた。