速水亮(炎三四郎)の出演映画 その2
前回に引き続き速水亮の大映時代、つまり炎三四郎だった頃である。
「女秘密調査員 唇に賭けろ」の主演は江波杏子。タイトル通り秘密調査員である。探偵でも警察でもなく産業スパイみたいなものだろうか。長谷川明男、平泉征(後に成)、そして速水はその同僚という役である。共演は藤巻潤、成田三樹夫、赤座美代子、名古屋章、久米明、神田隆、千秋実など。千秋の大映出演作というのは数少ない。
「高校生番長 棒立て遊び」は篠田三郎の項で触れたと思うが、主演は南美川洋子で、他に八並映子、八代順子、篠田三郎、小野川公三郎、加藤嘉、田武謙三など。速水は石田という応援団OBの役である。クレジットは篠田、小野川と同じ二枚目に名があり、後の「ウルトラマンタロウ」「トリプルファイター」「仮面ライダーX」が並んでいることになる。応援団員役で稲妻竜二という人が出演しているが、炎三四郎に近いネーミングセンスを感じる。同じ永田専務の命名かもしれない。
富島健夫原作「おさな妻」と言えば、1年続いたテレビドラマの方が知られていると思うが、ドラマがスタートした翌月に映画も公開されている。ドラマ版は麻田ルミと井上孝雄のコンビだったが、映画版は関根恵子(後に高橋惠子)と新克利である。ちなみに麻田も関根も当時は15歳。井上は35歳だったが、新は30歳であった。映画版の他の出演者は渡辺美佐子、坪内ミキ子、真山知子、福田豊土などである。速水の役は関根の伯母(近江輝子)の息子・淳一。
実はここから約半年出演作が途絶えているので、前述の干された時期というのは、71年前半のことを言っているのではないかと思われる。
約半年の空白期間を経て、71年の初出演作品となったのが「君は海を見たか」である。本作は70年に日本テレビで放送され(全8回)好評を得た倉本聰のオリジナル脚本ドラマの映画版だ。
妻を事故で亡くした増子一郎は9歳の息子正一の世話を妹・弓子に任せて仕事に打ち込んでいたが、その正一がウィルムス腫瘍となり余命三カ月と宣告されてしまう。それをきっかけに増子は息子との触れ合いを取り戻そうとするといったお話である。
日テレドラマ版のキャストは平幹二朗(増子)、山本善朗(正一)、姿三千子(弓子)で、他に小栗一也、野際陽子、下元勉、井川比佐志となっている。
大映版も原作・脚本は倉本聰だが、登場人物らに若干の違いはあるようだ。上記の日テレ版に対応するように記述すると天知茂(増子)、山本善朗(正一)、寺田路恵(弓子)で、他に内藤武敏、阪口美奈子、中村伸郎、中山仁となっており、子役の山本のみドラマ版と同一である。内藤はドラマ版にも出演しているが、違う役である。後、ドラマ版には大映の主演スターだった本郷功次郎が増子の友人役出ていたが、映画版に同役はない。速水の役は天知の部下・田宮で、こちらはドラマ版にはなかった役のようである。なお、ドラマ版では巨人軍の王貞治、長嶋茂雄、高橋一三が入院中の少年を励ます役(つまり本人)で出演しているという。
倉本の大映作品というのは他に無いようで、倉本と天知の組み合わせも他に無いようである(あったらスイマセン)。
なお、82年にもフジテレビでリメイクされ、萩原健一、六浦誠、伊藤蘭、柴俊夫、田中邦衛、関根恵子、大木実、梅宮辰夫、大友柳太朗などが出演している。
速水に話を戻すと実は本作が炎三四郎としての最後の出演となっている。ここからまた五カ月の間があくのだが、その間にダイニチ映配は、日活のロマンポルノ転向により解消され、71年10月に大映配給が新たに設立される。もっとも、それから二月持たず大映は倒産してしまうのだが。
その大映末期に公開されたのが戦記物「海兵四号生徒」である。出演は渡辺篤史、高橋長英、佐々木剛、長谷川明男、伊吹新吾(後に剛)、高城丈二などで、ここでの速水は芸名の変更を承諾され「豊田正文」を名乗っている。これは本作の原作が豊田穣で、役名が十条正文だったのを合わせたもの。しかし、前述のとおり直後に大映が倒産し、結局この豊田正文の使用は本作のみに留まっている。