僕らは教育テレビで名作を学んだ
昔々、まだNHKのEテレが「教育テレビ」と呼ばれていた頃のお話。夜の9時位から、モノクロ中心の古臭い映画をやっていました。その名も「世界名画劇場」。
改めて調べてみると「1976年に不定期にスタート」だそうで、古典的名作をノーカット、字幕スーパー、CMなし(当たり前か)で放映してくれていた。1985年に月1ペースでの放送となり、2003年まで続いたそうです。
「死刑台のエレベーター」「オーケストラの少女」「天井桟敷の人々」「アパートの鍵貸します」「哀愁」「心の旅路」「大いなる西部」「愛情物語」・・・・この番組で初めて観て、心に残った作品の数々の内、後日劇場で観賞し直した作品も多々あります。
そして世界名画劇場で知った、不朽の名作中の名作3作といえば・・・
ローマの休日(ROMAN HOLIDAY)
(名作過ぎて今更紹介するのが恥ずかしくなる)言わずと知れたオードリー・ヘプバーン主演第1作。今から10年前に「新・午前十時の映画祭」にて観賞。10代の終わりに劇場でも観ているし、家にはビデオもBlu-rayもあるのだけれど、せっかく映画祭のラインナップに選ばれた事だし、シネコンという昔とは隔世の感がある素晴らしい鑑賞環境で観る機会でもあるし、昨今の名画座の凋落を考えればもしかしたら劇場の大画面で観る最後のチャンスかもと思い、足を運びました。
先ず驚いたのが、予想以上に混んでいた事。大体この手の映画は年寄りばかりが観に来るものですが、老若男女、親子連れもちらほら。この作品の偉大さと、オードリー・ヘプバーンの日本での人気の高さを改めて実感したものです。
正直、昨今の作品の解像度やサラウンド方式の音響に慣れた身では、スタンダード・サイズで前方からしか音声が聴こえない状況に、敢えて劇場で観る意義が揺らぎました。
とはいえ数々の傑作を世に送りだした名匠ウィリアム・ワイラー監督の作品の中でもまさに会心の、名作中の名作。上映終了後には、わざわざこの旧作を観に劇場を訪れた観客達の満足感と充足感といった空気で満たされていました。
何度観ても、ラストシーンに切なさ胸張り裂ける、正真正銘の不朽の名作であります。
カサブランカ(CASABLANCA)
NHKときたら、あの名台詞「君の瞳に乾杯」を「わが命に」とかなんとか訳していやがって、ガッカリさせられた覚えがあります。大学時代、今はなき渋谷東横劇場にて「愛情物語」「カサブランカ」「麗しのサブリナ」の3本立てオールナイトで観賞。
この不倫映画(失礼)、最初に観た時はあまりピンとこなかったのだけれど、再見してバーグマンの美しさにも、リックの男気にもシビれた覚えがあります。
"Here's looking at you, kid."
リックにこう言わせるイルザの美しさといったら・・・彼女の事になると彼ほどの男でさえ未練がましい男に成り下がる。主演女優の美しさ、主演男優の美学、戦時下にリックの店に集う男女の人間模様、心に残る主題歌と、恋の行方に男の友情、、、不朽の名作には映画の魅力が玉手箱のように詰まっている。ニクい名台詞の数々が味気ない翻訳で台無しになる事が多い中、思わぬ意訳が作品と共に不朽の名台詞も生んでしまった。本作が米国で公開されたのは1942年。第2次大戦の真っ最中だというのに、未だ輝きを失わないこんな作品を生んでしまうのだから、日本が戦争に負けるわけだ。
最愛の女性から自ら身を引いて、ささやかなる友情を手にしたリックの男気に乾杯!
第三の男(THE THIRD MAN)
劇場で観る機会が未だにない本作。オーソン・ウェルズ演じるハリーが暗がりから姿を現すシーン、ツィターの奏でるメロディと共に男と女がすれ違うラスト、こちらも痺れる作品でした。
放送当時の朝日新聞の「シネマガイド」という欄で映画評論家の山田宏一氏が、劇場公開版はホリー役ジョセフ・コットンのナレーションで話が進んでいたのに、NHKの放映版のナレーションはトレバー・ハワード(MPの大佐役)だった。実は「第三の男」には米国版と英国版とがあって、TV放映されたのは日本では珍しかった英国版だった。というウラ話を披露して下さっていました。
いずれの3作も1940~50年代の作品。三四半世紀という時間の波を乗り越えて今に至る、これぞ正真正銘の“THE 名画”ですね。たまに無性に観返したくなる作品達です。
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投稿を表示懐かしいです。あげていただいた3本は今も色あせていません。わたしは「禁じられた遊び」を見て泣きました。ほかにも「心の旅路」「肉体の悪魔」「レベッカ」など大好きです。見やすい時間帯に放映してくれるといいですね。
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