大瀬康一の出演映画 その3
引き続き大瀬康一である。62年の後半だ。
「あした逢う人」は本郷功次郎、橋幸夫主演の青春もので、タイトルは橋幸夫のシングルのタイトルでもある。ヒロイン役に叶順子、三条江梨子。橋と三条は高校三年生の役だが、当時は共に19歳で年相応の役だった。デビューが若いためもう少し年長なイメージがあった。前作の「江梨子」でのコンビであり、三条は魔子から江梨子に芸名を変えている。彼女は新東宝から59年に「シークレットフェイス」としてデビュー。別に覆面をしていたわけではなく、正確には「シークレットネーム」というべきか。翌60年から三条魔子を名乗り、61年新東宝の倒産により大映に移籍していた。最終的には魔子に芸名を戻し、71年の大映倒産と共に引退している。橋はデビュー3年目だが、この62年は13枚ものシングルをリリースしている。大瀬は平井という役だが、その役柄は不明だ。
「秦・始皇帝」は、タイトル通り秦の始皇帝の生涯を描いた大映オールスターキャストによる2時間40分の超大作。大映創立20周年記念作品で、「釈迦」に続く2作目となる70ミリ映画である。主演つまり始皇帝役は勝新太郎で、出演者クレジットは縦スクロール形式なので、正確にはピンではないが一人独立したピン扱いなのは勝の他、市川雷蔵、長谷川一夫、山本富士子、叶順子、山田五十鈴、若尾文子である。何気に叶順子が混じっているのが凄いが彼女は翌63年に引退。これは強い照明により眼を悪くしたためで、このままでは失明してしまう恐れがあったためだという。大瀬は趙の貴公子の役で、勝、本郷功次郎、川口浩、川崎敬三、宇津井健に続く6番手に名前がある。他にも高松英郎、根上淳、中村玉緒、東野英治郎、宮口精二、中村鴈治郎など。制作費もかかっているが興行的には失敗に終わったようである。
テレビでは、62年から始まった「隠密剣士」は人気を呼び、高視聴率をマーク。65年第10部まで続くことになる。大瀬は63年はこれに専念したようで、映画出演はなかった。64年になっても番組は続いていたが、この「隠密剣士」が映画化されることになったのである。しかも古巣である東映が製作することになった。
「月光仮面」映画版は大村文武に取って代わられたが、映画「隠密剣士」は基本的なスタッフはテレビ版と同じで、監督は船床定男、脚本は伊上勝が務める。秋草新太郎・大瀬康一、霧の遁兵衛・牧冬吉は当然同じだが、馬場周作少年は大森俊介ではなく竹内満になっている。吞海和尚もテレビと同じ宇佐美淳也で、テレビ版では美川洋一郎、大宮敏が演じた松平定信を加賀邦男が演じた。逆にこの後、放送された8部9部の定信役も加賀が演じることになる。
対峙する甲賀竜四郎役は天津敏。テレビ版でも風摩小太郎、甲賀の金剛と敵忍者の首領といえば、天津敏が演じているので、妥当なキャスティングではあるが、これは大瀬とは大映で共演した友田輝が演じていたキャラである。第2部「忍法甲賀衆」で登場するが、天津敏、牧冬吉もこの2部から登場。共に敵キャラの甲賀十三忍の一人を演じていたのだ。
映画オリジナルキャストは藤純子、品川隆二、尾形伸之介、国一太郎など東映勢で、藤はデビューして1年くらい、竜四郎の妹であるくノ一を演じる。ちなみに父である俊藤浩滋も本作には「企画」として関わっている。品川は伊賀同心つまり遁兵衛の同僚の役。尾形や国は通常は悪役が多いが役名だけだと伊賀か甲賀か不明である。他に唐沢民賢、大前均、有川正治、川浪公次郎、岩尾正隆、宍戸大全など。
その約5か月後に「続隠密剣士」が公開される。大瀬、牧、宇佐美、加賀などは前作と同役だが、周作役はテレビ版の大森俊介に戻っている。前作はスケジュールの都合だったらしい。天津敏は5部6部に登場した風摩忍者の首領・風摩小太郎として登場。その妹のくノ一・朧もテレビ版と同じ佐賀直子が演じた。敵の風摩忍者を原健策、吉田義夫、楠本健二、大前均、有川正治、加藤浩、岡田千代などが演じる。花沢徳衛も風魔の老忍者だが小太郎の考えには疑問を持っているという設定だ。
この時期に放送されていた第8部「忍法まぼろし衆」は東映京都で撮影が行われ、東映の大部屋役者も結構出演しているようだ。
大瀬はこの64年には、もう1作映画に出演している。松竹の「忍法破り・必殺」で、これが初の松竹作品出演となる。これも忍者がらみの時代劇で、主演は長門勇。大瀬と丹波哲郎と当時のポスターではその三人の名が大きめに載っている。しかし三人とも忍者ではなく、長門は足軽、丹下は武将、そして大瀬は少林寺拳法の使い手という役だ。意外なのは彼等より竹脇無我の扱いが小さいこと。長門の仲間の足軽役で、女好きという設定。調べて見ると竹脇の初主演は翌65年になってからで、まだ「スター」ではなかったようだ。他の出演者は路加奈子、山東昭子、堀雄二、名和宏など。
ちなみに、この64年に大瀬は7歳年上の女優・高千穂ひづると結婚している。特に共演経験は見当たらず、その出会いは不明だが、高千穂は53~57年まで東映に所属していたので、同じ東映の大部屋にいた大瀬と出会っていた可能性はある。とはいえ、スター女優と無名の大部屋俳優しかも年下と付き合うという可能性は低い気がする。まあ、ある程度大瀬の名が知れてから、映画共演以外で会ったのだろうと推測する。