ジャンヌ・モローの「突然炎のごとく(Jules et Jim)」
■「突然炎のごとく(Jules et Jim)」 (1962)
ジャンヌ・モロー主演のフランソワ・トリュフォー監督の代表作で、キャストにはオスカー・ウェルナー 等が登場する。 後の作品で、女二対男一の「恋のエチュード」(1971)と並び、一人の女を二人の男が、三人での友情と育みながらも争う。この2つの作品は、同じアンリ=ピエール・ロシェによる原作による。
モンパルナスで出会ったジムとジュール。文学青年同士の二人はやがて無二の親友となり、美しい娘カトリーヌと知りあった時も彼女に惹かれる。だが熱烈にアタックしたジュールは、カトリーヌと結婚し祖国オーストリアに連れ帰る。第一次大戦後、久方ぶりにライン河畔の夫妻の家を訪ねたジムは、ジュールからカトリーヌと一緒になって欲しいと請われる。
シナリオ全体を通し、マリー・ローランサンと付き合っていた原作者ロシュと、マリーの恋人の詩人アポリネールの3名の関係がモデルともみなされている。
■楽曲とモローのシャンソン
作品の最初に流れる優雅で幸せに満ちた曲は、ジョルジュ・ドルリューによる作品。劇中でカトリーヌが歌うシャンソン「つむじ風(Le Tourbillon)」は、撮影中に恋人役のボリス・バシアクがモローのために遊びでつくったものが、トリュフォーが即興で映画に取り入れた。女優のかたわら、モローは、この「つむじ風」を代表作として歌手活動もしている。
■ジャンヌ・モローの公私共の生き方
この作品で、カトリーヌがセーヌ川に飛び込むシーンは、スタントの女性がやりたがらなかったので、モロー自身が飛びこんだり、即興を是とするトリュフォーの、自由な映画制作のスタイルともマッチしていた。
モローの初期の作品では、ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」(1958)や「恋人たち」(1958)等で注目を浴び、「雨のしのび逢い」(1960、マルグリッド・デュラス脚本)でカンヌ国際映画祭女優賞を得て、60年代は女優としての不動の位置を獲得した。
他人の評価は気にせず、自由奔放に演技する、このアンニュイな女優の存在は、フランス映画界の至宝である。私生活でも美男のピエールカルダンに一目ぼれし恋愛関係になったのは、高い美意識を象徴している。
女流小説家デュラスの脚本や監督作品には、女優やナレーターとして出演しており重なる部分がある。
●スリルというより刺激的な映画
ジャンヌ・モローの演技の妙で、即興による演技が取り入れられた作品とされる。最後の??
のシーンも、破滅的というか、刹那的な瞬間がなまなましく描かれている。
当時は、このマニッシュでかっこいいモローの存在が、女性に勇気や刺激を与えたのも当然と思う。
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