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私の好きな映画

tetsu8
2024/09/12 15:22

本郷功次郎の出演映画 その4

もう一回だけ本郷功次郎である。

前回の続きで、65年で気になった作品を挙げておく。
 

大捜査網(65年)は、解説には1年間の訓練を終え、城南署警ら課かに勤務することになった三人(本郷、藤巻潤、丸井太郎)と赴任してきた講師だった警部(宇津井健)とある。爽やかな警官成長物語というわけでもなく、本郷のミスでパチンコ店主が殺され、宇津井は刺され、藤巻は殉職するという展開。他に姿美千子、藤村志保、千波丈太郎、神田隆など。なお、本作公開の2か月後に「ザ・ガードマン」(65~71年)がスタートし、宇津井、藤巻らが出演する。
 

掏摸(すり)(65年)。品行方正で正義のヒーロー的な役を演じることの多かった本郷が、ここではタイトル通りスリを演じる。解説を読んでも時代背景がよくわからなかったが、どうやら明治時代らしい。登場人物が本郷の「仕立屋銀次」をはじめ、「巾着屋勝蔵」「おいらん小市」「濡れ燕の健」「細目の安」といった具合である(普通の名前もいる)。共演は高田美和、早川雄三、成田三樹夫、滝田裕介、久保菜穂子、内田朝雄、渡辺鉄弥など。渡辺は本郷の弟分役だが、52年の「二人の瞳」で出演者に名前がある。(劇団東童)とあるので子役出身のようだが、詳しいプロフィール等不明なので当時何歳だったかも不明だ。
 

本郷と言えば、大映特撮作品だろうという人も多いかもしれない。ただ、本人は文芸志向が強く、当時は本当に嫌だったようで仮病まで使って逃げようとしていたらしい。「スター街道を歩んできた自分が何故「子供向け映画」にというようなプライドや偏見もあったようだ。
 

仮病を使っても「治るまで待つ」と言われ、出演せざるを得なかったのが大怪獣決闘ガメラ対バルゴン(66年)である。「大怪獣ガメラ」(65年)のヒットによりシリーズ第2弾として急遽企画された。ゴジラシリーズより子供向けな印象のあるガメラシリーズだが、実はこの「対バルゴン」には子供は一切登場しない。「子供を出すように」という会社側からの要請はあったが、ベテラン田中重雄監督は無視して一般向けの内容に仕立て上げている。
主演は本郷で、共演は江波杏子、早川雄三、藤山浩二、藤岡琢也、夏木章、北原義郎、見明凡太郎、星ひかるに加え若松和子、紺野ユカ姉妹も出演している。西尋子は後に東映に移り賀川雪絵と改名する。星ひかるは宝塚女優のような名前だが、ベテラン男優(船長役)である。本作の特撮監督である湯浅憲明の実父でもある。

この「ガメラ対バルゴン」の併映作品が「大魔神」だったのである。特撮二本立ては特撮の本家といえる東宝でも実現できなかった形体である。
その第2弾が大魔神怒る(66年)だが、今度はそちらの主演が本郷に回ってきたのである。これもストーリーに絡むような子供はほぼ登場しない。本郷の役名は千草十郎時貞で、何をもじったかは明らか。ヒロインは藤村志保で、他に丸井太郎、内田朝雄、藤山浩二、上野山功一、神田隆、平泉征など。大魔神役の橋本力は元プロ野球選手(大毎オリオンズ)。本作では顔出し出演(池長俊平役)もしている。現役時代に親会社(大映)の依頼で「一刀斎は背番号6」(59年)に出演するが、その際に骨折し自由契約となってしまう。これを大映側が気の毒に思い俳優転向を打診して、入社の運びとなったのである。
 

大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス(67年)は、ガメラシリーズ第3弾。前作で特撮監督だった湯浅が本編監督も合わせて担当した。湯浅やプロデューサーである永田秀雅の意向もあり、このシリーズは子供を対象とした娯楽映画に路線変更されることとなった。引き続き本郷が主演扱いだが、実質的には英一少年(阿部尚之)が主役のようなものである。共演は新人の笠原玲子、丸井太郎、北原義郎、村上不二夫、上田吉二郎など。

ガメラ対宇宙怪獣バイラス(68年)は、ガメラシリーズ第4弾。本作から予算が前3作の三分の一に。正確には前3作が通常より3倍の予算を得ていたのであり、通常扱いになったということである。ここでも本郷が主役扱いで、ボーイスカウト隊長を演じる。その指導者として八重垣路子、八代順子、渥美マリの大映19期ニューフェイスの新人三人娘が出演している。前作までは大人も楽しめる作りであったが、本作は完全に子供向けに作られたという。
 

本郷もずっと嫌々ながらの出演で、当初はプロフィールからもこれらの作品を消していたというが、特撮映画が再評価される時代となり、本郷も「出演して良かった」と考えが変わったたようである。

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1 件の返信 (新着順)
椿五十郎 バッジ画像
2024/09/15 12:10

本郷さんが特撮映画(子供向け映画)への出演をそんなに嫌っていたとは知りませんでした。でも確かに『ガメラ対ギャオス』や『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』は、もう何度となく観ているのに、本郷さんの印象よりも子どもの印象の方が強いよなぁ、と振り返ってみて思いました。バイラスに至っては、コラムを拝読して「あれ?本郷さん、出てたっけ??」ってなってしまいました(恥ずかしい・・)
バルゴンと大魔神怒るが同時上映というのもすごいですね!大魔神に至ってはシリーズ3本が一年で上映されているし、当時の大映特撮陣の層の厚さと技術の高さは、東宝円谷特撮とはまた違った意味で素晴らしい仕事ですよね。バルゴンは確かにしっかり大人の観賞にも耐えられるつくりで本郷さんの仮病明けを待ってでも彼を起用して作ったというエピソードは面白いし、それだけちゃんと作りたかった?監督の心意気も感じられて素敵です


tetsu8
2024/09/18 23:40

コメントありがとうございます。本郷氏は長いことプロフィールにも「ガメラ」や「大魔神」を入れてなかったくらい黒歴史扱いだったようです。
でも昔の特撮が評価される時代となり、会う人ごとにプロフィールのことを言われ、以降は入れることにしたようです。平成ガメラの出演依頼があった時は嬉しかったそうです。