夏夕介の出演映画 その3
引き続き、夏夕介である。
75年3月にドラマ「愛と誠」が終了した直後から、前年はゼロだった映画出演が相次いでいる。まずは日活の「襟裳岬」。森進一のヒット曲を基にした歌謡映画である。主演は山口いずみで、その相手役として神有介、そして夏夕介である。夏と字面の似ている神有介だが、映像出演作は多くない。その中では同年の「男組青春大革命」での神竜役が目立つ。専ら舞台方面で活動しており、現在も劇団を主宰したりプロダクションの代表だったりする。他の出演者は天知総子、金田龍之介、ハナ肇、そして森進一が本人役で登場する。撮影は実際に襟裳岬周辺で行われたようだ。
本作は、当時はロマンポルノが主軸となっていた日活の製作配給となっているが、実はたまに一般映画を製作することもあったのである。ただ併映作品が製作中止などで中々決まらず、結局東映が7年前にお蔵入りにしていた「雪夫人絵図」を買い取って上映したという。主演が佐久間良子で、共演が山形勲、丹波哲郎、谷隼人、浜木綿子などであった。お蔵入りの理由は当時の東映はエロとヤクザ映画が全盛で東映調の作品ではなかったから。他社から譲ってくれという話もあったが、佐久間の主演作を他社には渡せないと断っていた。その佐久間が東映を退社したタイミングで日活に売ったため公開まで7年かかったというわけである。良質作の二本立てではあったが、興行的に失敗したという。
次が東宝「お姐ちゃんお手やわらかに」。これはホリプロ15周年記念作品であり、ホリ企画制作の製作となっている。主演は和田アキ子で、夏夕介、鈴木ヒロミツ、森昌子といったホリプロのタレントがメインとなっている。山口百恵も本人役で登場。ちなみに同時上映は山口主演の「潮騒」であった。山口百恵が東宝作品で脇役なのは本作だけだそうだ。他はホリプロのタレントではなく、番組上の繋がりでの出演者もいる。せんだみつお、デストロイヤー、ラビット関根(関根勤)、マジシャンの伊藤一葉などは和田メインのバラエティ「うわさのチャンネル」からの出演だ。他に堺正章、研ナオコ、坊屋三郎、小林亜星、藤村有弘、多々良純、砂塚秀夫、塩沢ときといった面々が出演している。
正直、初耳の作品で恐らくソフト化もされていないと思われる。情報も少ないし、レア度の高い作品ではないだろうか。
75年の出演映画はまだある。東宝「花の高2トリオ 初恋時代」は「スター誕生」からデビューして人気となった「花の中三トリオ」こと森昌子、桜田淳子、山口百恵を主演としたアイドル映画。無論、いつまでも中三なわけもなく、当時は高2になっていた。森、山口はホリプロだが、桜田はサン・ミュージックということもあり東宝を加えた三社の提携作品となっている。ちなみに三人揃っての映画は本作だけである。夏はホリプロ映画には必ずといっていいほど出演しており、本作では三人に憧れられる役どころ。他の出演者はフランキー堺、南田洋子、藤田弓子、川口厚、黒部幸英(当時はクロベー)などである。
東映「爆発!暴走族」はタイトル通り暴走族の実態をセミドキュメンタリータッチで描いたもの。バイクチーム・クールスの副団長だった岩城滉一の写真を見て、その主演デビュー作として企画された。
しかし、素人役者で当然名が知られていないこともあり、トップクレジットは千葉真一を据え、予告編も千葉が主演であるかのように作られている。ちなみに千葉は岩城の恋人(藍とも子)の兄という設定。岩城は暴走族ブラックパンサーのリーダーで、メンバーの一人が町田政則で、夏夕介、松平純子が紅バラ会のメンバーを演じる。他に名が知れた役者は名和宏、初井言栄くらいで、暴走族メンバーを演じているのは応募で集まった本物やバイカーで、一回限りの映画出演も多かったようだ。当時の岡田茂東映社長は「新しい企画をまかせられるのは石井輝男しかいない」と石井を監督に抜擢したが、石井本人は暴走族に興味はなく、あまり気乗りしてなかったようだ。藍とも子は「プレイガールQ」にレギュラー出演が決まり、東映に衣装合わせに来ていたところ、たまたま石井が居合わせ、その場で決まっていなかった岩城の恋人役にスカウトされている。
76年はテレビの方で夏は「宇宙鉄人キョーダイン」の主役に佐々木剛と共に抜擢されている。夏の初主演作である「突撃!ヒューマン」の裏番組が「仮面ライダー」で、その2号を演じていた佐々木との共演である。1号の藤岡弘とも後に「特捜最前線」で共演することになるのは周知のことだろう。