夏夕介の出演映画 その2
引き続き夏夕介である。
71年は、日活の野良猫ロックシリーズ以外にも、松竹の「おんなの朝・あまから物語」に出演している。女性が主人公のようなタイトルだが、主演扱いは加東大介である。その妻が京塚昌子で、その子供たちが森次浩司、尾崎奈々、そして夏夕介である。他に三木のり平、フランキー堺、河内桃子、美川憲一、水前寺清子など。ほとんど東宝の作品のようなキャスティングだが、五者協定が事実上崩壊した頃というのもあるのだろう。ちなみに美川憲一は大映ニューフェイス(17期)に合格していたが入社はしていない。
72年は映画出演はなかったようだが、初のテレビ主演を得ている。それが「突撃!ヒューマン」である。舞台公開形式のヒーローものという斬新なスタイルで、人気絶頂だった「仮面ライダー」の裏番組として放送されたが、受け入れられることはなく1クール(13回)で打ち切られている。自分も子供ではあったが、存在すら知らなかった(実際北海道では放送されていなかったようだ)。再放送は直後に1度だけされたらしいが、その後はソフト化も含め、映像が世に出たことはない。これは収録がVTR形式で行われた為、当時はテープは高価で上書きする慣習があったことから、その上書きにより映像は世に残っていないからだと言われている。
出演は夏のほか、西島明彦、八代駿、キャンディーズのスーちゃんこと田中好子などである。ちなみに、キャンディーズは既に結成されていたが、本格デビューは翌73年のことである。
73年は、まず松竹の「男じゃないか 闘志満々」に出演。これは森田健作の項で書いたと思うが、森田と沖雅也が兄弟の役である。夏の役柄はよくわからないが、どちらかの友人といった感じだろうか。
続いて、松竹「としごろ」に出演。本作はホリプロとの提携作品で同社の歌手・タレントが多数出演しており、主役扱いが和田アキ子そして森昌子である。加えて石川さゆり、山口百恵そして当時はホリプロだった堺正章といった顔ぶれで華やかそうに思えるが、あらすじを見た限りでは暗い映画である(未見なので)。
和田アキ子は中学バレー部のコーチで、その部員が森昌子、石川さゆり、秋谷優子で、山口百恵もバレー部だがストーリーにはあまり絡まない。秋谷は当時16歳だが松竹の女優である。デビュー作は前述の「男じゃないか~」である。
森昌子は進学せず工場勤務となるが、そこで知り合うのが夏夕介である。夏は彼女をかばって大けがをするが、二人は惹かれ合うようになる。一方、秋谷は高校バレー部コーチ(森次浩司)の力添えもあり進学するが、その妻はその関係を良く思わず実家に帰ってしまう。しかも秋谷は足を骨折しバレーを断念せざるを得なくなる。そして石川は不良たちに絡まれレイプされるという衝撃展開(おそらく吹替あり)。そして悩み多き同級生(川口亮)と一緒に心中してしまうのである。川口は後に阿部健太→柴本浩行と名を変え主に声優として活動している。
石川さゆりは森昌子と同い年でこの時点ではデビューしたばかりなのにこの扱い。やはり同い年の山口百恵は歌手デビュー直前で、出番も少ないが、映画タイトルの「としごろ」は彼女のデビュー曲のタイトルでもあるのだ。ただし挿入歌として使われているわけではない。森、山口、石川のホリプロ三人娘で売り出す計画だったそうだが、石川はサンミュージックの桜田淳子にとって代わられ「中三トリオ」として人気になってしまったのである。ちなみに本作での石川の役名は「淳子」だった。デビュー時の石川さゆりは不遇だったのかなと今になって感じてしまう。
73年の映画出演はこの2本だけだが、10月から「顔で笑って」「ラブラブ・ライバル」という2本の大映テレビ制作のドラマのレギュラーを務めている。どちらも脇役のようだが、翌74年の3月まで続いている。
その74年の映画出演は調べたところ1本もなかったようだが、ドラマのゲスト出演が多かったようだ。
そして10月になり「純愛山河 愛と誠」がスタートし、夏は主演の誠役に抜擢されている。愛役は当時15歳の新人だった池上季実子である。高校生役だが、夏は当時24歳で、岩清水役の中島久之も22歳であった。ちなみに、映画版も第1作がこの74年に公開されたが、誠役は西城秀樹で、愛役は役名をそのまま芸名にした早乙女愛が務めている。
ドラマ版の他の出演者は平泉征、高橋昌也、鳳八千代、苅谷俊介、名古屋章、子役だった戸川京子、そして原作・梶原一騎の実弟である真樹日佐夫が特別出演。真樹はケンカシーンの監修も担った。製作はアニメでお馴染みの東京ムービーで、本作が唯一のテレビドラマ製作となっている。2クール26話で終了したが、スタッフへのギャラ未払い騒動などがあったための打ち切りだったという。