にっぽん親不孝時代
「にっぽん親不孝時代」というタイトルだけだと何の映画だかわからないかもしれないが、これはザ・スパイダース主演の映画なのである。
60年代後半から70年代初頭のGSの中でも最も成功したグループの1つで、一応メンバーを紹介しておくと、リーダーが田辺昭知(ドラムス)で、以下かまやつひろし(ギター、ボーカル)、井上孝之(ギター、ボーカル)、大野克夫(キーボ-ド)、加藤充(ベース)、堺正章(ボーカル、タンバリン)、井上順(ボーカル、タンバリン)の七人組だ。
堺正章、井上順、かまやつあたりは説明不要だろう。井上孝之(堯之)や大野克夫は作曲家、ミュージシャンとして大活躍し、田辺昭知は田辺エージェンシーの社長として「芸能界のドン」と言われる存在となっている。
ザ・スパイダースの主演映画は5本あり、これはGSの中では最も多い。出演作を含めると10本を超えている。主演作の4本は日活なのだが、唯一の東宝(東京映画)での主演作品がこの「にっぽん親不孝時代」(68年)なのである。東宝ということでクレージー映画「ニッポン無責任時代」に引っ掛けているのだろうか。
日活作品での役柄は基本本人役だったが、本作では役名が付いている。堺正章(杉本邦雄)、井上順(録郎)、井上孝之(戸田菊男)、大野克夫(一の瀬昭)、加藤充(弓岡実)、かまやつひろし(哲)、田辺昭知(一彦)といった具合で、特に本名にひっかけてはいない。
本作では、当初はかまやつ、田辺を除いた五人組バンドで後から二人が合流する形となっている。ゆえに、主題歌となっている「親不孝で行こう」は冒頭の映像上は五人での演奏となっている。ちなみに堺はドラムス、順はギターを持っている。実際、堺はドラムはできるらしいが、順は弾くふりであろう。この「親不孝で行こう」など、本作で初披露されている曲はレコード化、CD化などされておらず、現状ここでしか聞くことができない(はず)。
他の出演者は星由里子、佐原健二、藤村有弘、水上竜子、そして堺の実父である堺駿二など。堺駿二はマチャアキではなく井上順の父親役なのでややこしい(マチャアキの父役は藤村有弘)。堺駿二は、本作が公開される前の68年8月に舞台で倒れて54歳の若さで急死している。ゆえに、最後の親子共演となっている。
本作のDVDのパッケージタイトルには「ザ・スパイダース」の文字が入っているようだが、実際の本編には入っていない。劇中でも特にバンド名はなかったように思う。