坂口祐三郎(坂口徹郎)の出演映画 その4
続けて、坂口祐三郎(坂口徹)である。
71年は初の大映映画出演。映画テレビ通じて他社出演は初めてかもしれない。それが渥美マリ主演の「モナリザお京」である。坂口には少ない現代劇で、主演の渥美はスリ、川津祐介が宝石泥棒。坂口はクラブ支配人の仲村隆と結託している盗品宝石ブローカーという役である。主人公たちからは敵の役だ。本作から約半年後に大映は倒産するので、最初で最後の大映出演となったわけである。
坂口徹を名乗っていた時代に出演した映画はまだある。「子連れ狼 三途の川の乳母車」(72年)がその一つだが、「子連れ狼」と言えば、萬屋錦之介主演のテレビ版のイメージが強いかもしれないが、映画版の主演は若山富三郎で、こちらの方が先である(テレビ版は翌73年から)。原作の小池一夫は主役の拝一刀は渡哲也か勝新太郎に演じて欲しいと思っていたが、渡は病気の為断念。そこへ原作のファンで一刀を演じるのは俺しかいないと意気込む若山が小池の元を訪れ、直談判したという。若山は小池の前で殺陣を披露し、一刀役を認めさせたのである。それとは別に、実弟である勝の元にテレビシリーズでの一刀役のファーが行く。勝も乗り気だったが、若山に「どうしてもやりたいんだ」と言われ、勝は「それなら俺がプロデュースするから、兄ちゃんが主演で映画にすればいい」という話になり、勝プロが権利を買い、若山が主演での映画化が決った。若山は当時、東映の専属スターだったため、社長の岡田茂に頭を下げ、出演を認めてもらったのである。勝が所属する大映の配給という前提で撮影に入ったが、大映は潰れると読んでいた勝が、密かに東宝と交渉を進めていた。実際に大映は倒産したため、東宝で公開されることになったのである。
話が横に逸れたが、若山版「子連れ狼」は全6作が作られたが、「三途の川の乳母車」はその2作目である。本作はとにかく刺客が一刀親子を襲う。柳生鞘香(松尾嘉代)率いる八人の別式女(鮎川いづみ、三島ゆり子、東三千、笠原玲子、水原麻紀、池田幸路、正楠衣麻、若山ゆかり)を倒したかと思えば、小林昭二率いる黒鍬衆も倒し、最後は公儀護送役の三兄弟(大木実、新田昌玄、岸田森)と戦う。坂口の役だが、三兄弟を倒そうとして全滅する阿波藩士の一人である。他に阿波藩士は水上保広、平泉征、国一太郎などが演じている。そういえば、坂口はデビュー時、「新黄金孔雀城 七人の騎士」で国一太郎と共に「七人の騎士」を演じていた。
プライベートでは、74年3月に、その「七人の騎士」等で共演した東映のお姫様女優である北条きく子と結婚披露宴を行ったが、翌4月には離婚という出来事もあった。
76年は「玉割り人ゆき 西の廓の夕月楼」に出演。R-18指定の東映ニューポルノ。主演は潤ますみ演じるゆきだが、坂口の役はタイトルにある夕月楼の主人で、準主役といえる。低予算で出演者も少ないが、久々の大役であることは確かだ。他に中島葵、成瀬正、長島隆一、森崎由紀など。潤ますみはデビューは東映だが、72~74年にかけては日活ロマンポルノで活躍。フリーになって再び東映のポルノ路線作品に出演していた。
この後、坂口徹郎に改名。ドラマ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」(78年)に準レギュラーとして出演。映画「宇宙からのメッセージ」のテレビシリーズ。東映の特撮ものだが、東京ではなく京都撮影所が制作を担当している。それもあってか、時代劇がメインの坂口や西田良、白井滋郎などが出演している。主演は劇場版にも出演の真田広之で、共演は織田あきら、島田歌穂、藤山律子、堀田真三など。坂口の役はレジスタンスのリーダー。劇場版にも出演しているという情報もあるが、クレジットに名前は無い。
92年くらいまでは、坂口徹郎だったようだが、最終的には坂口祐三郎に戻している。