森次晃嗣(浩司)の出演映画 その2
引き続き森次晃嗣(浩司)である。
70年は、まず4度目の映画化となる「姿三四郎」。43年の東宝・黒澤明の監督デビュー作として初映画化(続編あり)、55年の東映版(主演波島進)、65年に再び東宝で(主演加山雄三)、そして今回の松竹版で主演は竹脇無我である。4度目と書いたがそれは「姿三四郎」というタイトルでの話。前回書いたとおり、森次の映画デビュー作「柔旋風 怒涛の対決」も中身は「姿三四郎」なのである。そこでは津崎公平役だった森次だが、今回は同じ四天王でも戸田雄次郎の役だ。矢野正五郎役は高橋幸治、乙美役は尾崎奈々、村井半助役は堀雄二、檜垣源三郎役が高城丈二である。他に加賀邦男、白木マリ、曾我廼家明蝶など。
「波止場女のブルース」は森進一のシングル曲を題材とした歌謡映画で、主演は岡田茉莉子。当時37歳だが、この時点で既に出演映画は130本を超えていた。ポスターを見ると岡田と森進一の姿が大きく載っているので、この二人のラブロマンスかなと思いきや、岡田の相手役は森次なのである。森進一は森次の友人という役柄なのだ。当時、森は24歳で岡田とは年が離れすぎかなとも思うが、森次だって27歳だった。岡田は美人ではあるが、既にベテランの風格のようなものがあった気がする。他の出演者だが、小川ひろみ、西尾三枝子、野々村潔、西村晃などである。
71年の森次と言えば、ボウリングドラマ「美しきチャレンジャー」での熱血コーチ役が印象に残っている人も多いのではないだろうか。ヒロイン役の新藤恵美も松竹の女優だったが、ドラマが松竹製作というわけではない。新藤自ら歌う主題歌も印象に深いが、この歌はレコードが競作で堀江美都子版、藤田淑子版、中村晃子版などがあったりする。
このドラマが始まる直前に公開されたのが「めまい」である。主演は辺見マリで、そのポスターでの表情とタイトルからエロい映画なのかと勘違いした人がいたかどうかは不明だが、「めまい」は辺見のシングル曲のタイトルで、つまりは歌謡映画である。辺見はこれが初の主演作だ。これも未見なのだが、あらすじを見た限りでは、辺見と森次、萩原健一とジャイアント吉田が高校の同級生という設定のようだ。辺見と萩原は同じ50年生まれだが、森次は43年、吉田にいたっては36年生まれでかなり無理があると思う。萩原はテンプターズ解散後で、当時はPYGに所属していた。萩原がソロで映画に出たのは本作が最初である。
ジャイアント吉田は元ドリフターズのメンバーだが、リーダーのいかりや長介のワンマンぶりに反発し、小野ヤスシ、猪熊虎五郎、飯塚文雄と共に脱退し、ドンキー・カルテットが結成された。そのドンキーは70年に解散。芸名はジャイアントだが、かなり小柄であった。
話が大きく逸れたが、他の出演者は范文雀、小川ひろみ、城野ゆき、ケーシー高峰、有島一郎など。
「可愛い悪女」は当時の風俗とエロティシズムを盛り込んだサスペンスと解説にはある。主演はおそらく初であろう范文雀。「プレイガール」や「サインはV」などで人気があり、映画も東宝、日活、そして松竹と各社に登場していた。彼女は週刊誌のカメラマン役で、編集長が中丸忠雄、社長が滝田裕介、その妻が生田悦子で、森次は編集部員であり、范のベッド・フレンド(あらすじより)でもあるという設定だ。ちなみに監督は井上梅次である。
その3か月後年を跨ぎ72年になるが、シリーズ2作目である「可愛い悪女 殺しの前に口づけを」が公開されている。主演は同じ范文雀だが、役名も設定も違う。ここではGSのボーカルだ。森次は役名は前作と同じ「旗」だが、今回は刑事の役である。他は前作とは違うキャストで、入川保則、藤村有弘、赤座美代子、財津一郎、フランキー堺など。
72年は「可愛い悪女」以外にも4作ほど出演している。まずは「喜劇・誘惑旅行」は森田健作の所で取り上げたかもしれないが、旅行シリーズの9作目である。主演はフランキー堺と倍賞美津子。舞台はフィリピンのマニラである。他の出演者は森田健作、尾崎奈々、川口まさみ、佐藤允などで森次の役は「司会」となっている。クイズ番組の商品がフィリピン旅行なので、その司会ということだろう。
「あゝ声なき友」は原作を読んだ渥美清が映画化実現のため「渥美清プロダクション」を作り、松竹と提携製作をした作品だ。戦友たちの遺書を預かって一人生還した男が、その全国の遺族を訪ね歩くという内容だ。渥美は企画の他、当然主演でもある。ポスターには渥美を先頭に、それ以外の出演者は五十音順で30人近くの名前が並んでいる。主な出演者は倍賞千恵子、小川真由美、市原悦子、大滝秀治、江原真二郎、長山藍子、長門裕之、香山美子、田中邦衛、財津一郎など。森次の役柄はよくわからないが、松村達雄の息子のようである。