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私の好きな映画

tetsu8
2024/10/18 02:37

中村敦夫の出演映画

今回からは、岸田森のところでも話題に出た中村敦夫である。自分の中では木枯し紋次郎はもちろん、水滸伝」「必殺仕業人」「おしどり右京捕物車といった少年時代に見た時代劇ヒーロー役者である。別に中村目当てで見ていたわけではなく、たまたまどれも彼が主役だったということである。
 

中村敦夫は40年生まれで、本名は敦雄。高校時代まで遠藤姓であったが、離婚により母方の中村姓を名乗るようになった。60年に東京外大を中退し、俳優座養成所に12期生として入所した。同期には山本圭、松山英太郎、東野英心(孝彦)、樫山文枝、長山藍子、芳村真理、応蘭芳などがいた。また1年後には出席日数不足などで留年した伊藤孝雄、成田三樹夫らが加わったという。
三年の養成期間を終え、63年に俳優座の準劇団員となる。そのまま俳優座に合格したのは中村、山本、東野ら男六人だけだったという。しかし、舞台ではチョイ役ばかりだったという。
 

64年に初の映画出演が決まった。小泉八雲原作の怪談である。制作は文芸プロダクションにんじんくらぶで、配給は東宝であった(一般公開は65年)。にんじんくらぶは54年に岸恵子、久我美子、有馬稲子の三女優によって設立。当時、岸は松竹、久我と有馬は東宝の専属だったが、五社協定による専属しばりから他社出演を実現させるための設立である。

「怪談」黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中の4つの怪談話によるオムニバス作品。中村は「耳無芳一の話」のパートへの出演である。他の3パートに比べ出演者も多い。主演の芳一役は中村嘉葎雄で、他に丹波哲郎、志村喬、林与一、村松英子、田中邦衛、北村和夫、近藤洋介など。長山藍子もチョイ役で出ている。中村は戦死した幽霊の一人・平教経の役で、セリフは一行もなかったという。ただ監督の小林正樹を初めとする制作陣は中村を売り出す気でいたようで、新聞のインタビューが殺到していたという。
しかし、180分を超える上映時間も災いしてか海外では高評価だったが、日本では当たらなかった。これが原因でにんじんくらぶは倒産した。小林監督の次回作には「敦煌」が予定されていたが、これも無期限延期となった。実はこの作品で中村は大役を約束されていたというが、それも流れてしまったのである。
 

そんな中、大映から新鞍馬天狗出演のオファーが来た。主演は市川雷蔵で、共演は中村玉緒、藤巻潤。新選組は中村竹弥(近藤勇)、五味龍太郎(土方歳三)、浜田雄史(沖田総司)などで、中村敦夫も新選組の隊士・村尾真弓役でクレジットでは七番手。他に杉作役は「マグマ大使」のガム役で知られる二宮秀樹、新選組隊士にデビューまもない平泉成(当時は平泉征七郎)なども出演していた。浜田雄史は脇役専門で、ヤクザ一家の兄貴分・代貸といった役が多く、こういった二枚目役は珍しい。雷蔵や勝新とはデビュー作が一緒(花の白虎隊)なのだが、雷蔵の吹き替えを担当することも多かったという。本名を奥村俊雄というが、勝新の本名も奥村利夫と言い、読みが全く同じである。

中村は雷蔵との初対面時、作法を知らなかったので、土下座に近い挨拶をしたというが、雷蔵は「そんなに硬くならんでええよ」と気さくな感じだったそうだ。普段の見た目はあまり特徴のないサラリーマン風だったという。

 

65年に中村は二年の準劇団員期間を経て、俳優座の正劇団員に昇格した。正劇団員になるやいなや最初の選挙で幹事に選ばれてしまう。当時25歳で、劇団史上最年少幹部の誕生である。他の幹部は若くても40代後半で、50~60代がほとんどだったので異例中の異例であった。古い体質だった劇団に対する一般劇団員の「反抗」の現れだったようだ。
その65年、留学生募集の知らせが劇団にもあり、先輩の付き添いのつもりで、受験した中村が合格してしまったのである。劇団側があっさりと許可したため。ハワイ大学への留学が決った。幹事会も異端児である中村がいない方が都合がよかったようである。留学の終盤はハワイから本土へ渡り、約三カ月アメリカを横断している。
 

日本にいなかったので、66年は映画やテレビの出演はなかったが、67年、連続ドラマ氷壁の主役に抜擢されている。「氷壁」は井上靖のヒット小説で、共演は有馬稲子、芥川比呂志、江原真二郎、姿美千子など。特に「映画スター」有馬稲子のドラマ出演は話題になった。芥川比呂志は芥川龍之介の長男だが、舞台中心だった為、テレビドラマ出演は多くない。当時の中村は舞台芝居が染みついており、他の共演者の自然な芝居とはかみ合わなかったという。前半の監督だった弓削太郎はそれを直すようなことはせず、プロデューサーと対立し解任されてしまう。数年後、弓削は自殺してしまうのだが、中村はそれを自分のせいであるかのように感じているという。

この「失敗」で、映画やテレビからは当分声がかからないと思っていたところに、68年東宝斬るへの出演が決まった。「斬る」は岸田森のところでも紹介したが、監督は岡本喜八、主演は仲代達矢、高橋悦史。中村の役どころは七人の青年武士のリーダー格・笈川哲太郎。同志の侍が久保明、中丸忠雄、地井武男などで、笈川の恋人役が本作での紅一点である星由里子だ。中村と星は67年にドラマ「さくらんぼ」で兄妹役をやっていた。ちなみに、星のドラマ初出演作である。

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2 件の返信 (新着順)

「怪談」に出演してたのは、わかりませんでした。平家の亡霊は丹波哲郎が目立っていたので。
木枯し紋次郎以外なら「帰らざる日々」の着流しのやくざですね。
テレビで「中村敦夫の地球発22時」というドキュメンタリーなのかな?報道特集のような番組がありまして、放送時間変更で怒り「どうせ電波芸者だから。どこのお座敷でも行け~」のような発言して番組は消滅。制作が大阪局で、東京局にその時間をもぎとられ、平日19時台へ時間移動によることに対しての発言。
けっこう、面白い番組だったんですけどね…


tetsu8
2024/10/25 00:03

「怪談」はセリフがないので、分かりにくいと思います。
「地球発22時」ありましたね。中村敦夫は若い頃から言いたいことは言う人のようなので、遅かれ早かれだった気もします。

椿五十郎 バッジ画像
2024/10/18 12:27

なんとGoodなタイミングで『斬る』を見てました!(10/17)
中村さんの凛々しい佇まいは、飄々とした仲代達也と豪快な高橋悦司とのおにぎりのやり取りで個性で引けを取っておらず素晴らしかったですね!
この後またどんな作品が語られるのか楽しみです!(血を吸うも出てきます?)


tetsu8
2024/10/24 23:59

コメントいつもありがとうございます。
映画出演は少ない役者を選んでいるつもりなので、デビュー初期の方の作品はなるべく飛ばさないようにしていますので「血を吸う」にも触れますよ。