井上順の出演映画 その2
続けて、井上順である。

73年末に公開されたのが井上が主演の東宝「グアム島珍道中」である。ちなみに、堺が子供の頃に出演したのは「ハワイ珍道中」だ。実はこの作品「喜劇やさしくだまして」というタイトルで72年に完成していたのだが、お蔵入りになっていたのである。その理由は不明だが、基本的にはプロデューサー判断だと思われる。その短縮改題版が「グアム島珍道中」なのである。短縮版なので上映時間は72分と短い。しかし同時上映があの「日本沈没」で、140分の大作である。途中から「日本沈没」の単独上映に変更されている。
「グアム島珍島中」は井上の他、酒井和歌子、青木英美、徳永礼子、名古屋章、安芸晶子、藤木悠、森光子などが出演している。安芸晶子とは市地洋子のことで、73年頃のみ安芸晶子を名乗っていた。主題歌は井上と酒井による「やさしくだまして」で、旧タイトルがここに残されている。実は「喜劇やさしくだまして」のポスターはなぜが出回っており、井上は順之だし、市地洋子はそのままである。酒井と青木と言えば共に「飛び出せ青春」にそれぞれ先生役、生徒役で出演していたが、前述の「愛ってなんだろ」にはやはり生徒役だった降旗文子が天地の同僚役で出演している。

74年は松竹「ムツゴロウの結婚記」で主役を務めている。ムツゴロウとはもちろん動物王国でお馴染みの畑正憲のこと。睦五朗(むつみごろう)ではない。畑の書いた同名エッセイが原作である。
同時上映がスパイダース仲間である堺正章主演「街の灯」だったが、見た感じは堺の方がムツゴロウに似ていると思う。
畑は福岡生まれで、父親からは東大医学部への進学を望まれていたが、無断で理学部動物学科へ入学している。この辺りは映画における展開も同じである。
恋人役が松坂慶子で、父親役が佐野浅夫、大学での友人役が蟹江敬三、松山省二(後に政路)、岸部シロー(後に四郎)である。当時の蟹江はまだ不気味な悪役といったイメージが強く、本作のような役は珍しかった。善人役に転向するのは80年代になってからである。ちなみに、日ごろの蟹江はとにかく無口で、自己主張をすることもほとんどなく、人付き合いも少なかったという。
他の出演者は夏純子、なべおさみ、夏八木勲、南利明、谷啓、ハナ肇などである。監督は「愛ってなんだろ」と同じ広瀬襄である。
実はこの後、井上の映画出演は82年までなかったりする。前回も触れたとおり70年代は「ありがとう」を皮切りに、約1年スパンのTBSのホームドラマにレギュラー出演している。
「明日がござる」(75~76年)、「三男三女婿一匹」(76~77年)、「今日だけは」(77年)、「晴れのち晴れ」(77~78年)、「三男三女婿一匹第2シリーズ」(78年)、「三男三女婿一匹Ⅲ」(79~80年)と全てにレギュラー出演している。個人的にはこれらのドラマは一切見たことがない。「三男三女婿一匹シリーズ」は、主人公・森繫久彌はいずれも桂病院院長の桂大五郎を演じているが、他は役者は同じでも役柄や役名が変わったりしている。井上で言えば、第1では大五郎の次男・健太郎、第2では同じく大五郎の次男だが役名は勇気、第3では実子ではなく大五郎の長女(木内みどり)の婿養子・正太郎として出演している。
82年に劇場公開された「装いの街」だが、実は79年の東芝日曜劇場で放送されたものを劇場用35ミリ版にしたものである。なので46分と短い。出演は三田佳子、薬師丸ひろ子、土屋嘉男、井上順など。幼い頃離婚によって父親(土屋)側で育った薬師丸が実の母(三田)と再会するお話。井上は三田に求愛される役だ。薬師丸主演の「セーラー服と機関銃」の「完璧版」の併映作として公開されている。
正確には映画として撮られたものではないので、井上の映画出演は約15年、89年の「善人の条件」までなかったということになるようだ。
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投稿を表示懐かしさを感じるのは歳のせいかな?😅想いながら読んだ☺️