近藤正臣の出演映画
70年代青春スターシリーズ、今回は近藤正臣である。この人がブレイクしたと言えるのは「柔道一直線」(70~71年)の結城真吾役であるが既に29歳になろうかという時である。若々しく見えるとはいえ、その年齢で高校生役だ。足でピアノを弾くシーンは有名であろう。ただそれ以前について(特に出演映画)はあまり知られていないのではないだろうか。
42年京都生まれで、高校時代から演劇部に在籍していたが、卒業後は女手一つで育ててくれた母親の小料理店を継ぐために板前修業をしている。しかし、三カ月程度で辞め、アングラ劇団を作って活動を始めた。松竹でエキストラなどをしていた66年には結婚。その年に今村昌平監督が坂本スミ子の息子役を探しているということで、面識のあった近藤のことを思い出した事務所の社長が彼を紹介。そして野坂昭如原作の「『エロ事師たち』より人類学入門」での映画デビューとなった。配給は日活、主演は小沢昭一で、その内縁の妻が坂本である。ちなみに当時29歳で、息子の近藤は24歳だ。他に中村鴈治郎、ミヤコ蝶々、菅井一郎、園佳也子、西村晃、殿山泰司、内田朝雄、浜村純、菅井きんなど。
続いて出演したのは東映の「893愚連隊」(66年)である。これは監督の中島貞夫が「人類学入門」を見て、近藤を気に入りキャスティングしたものだという。主演は松方弘樹で、その仲間に荒木一郎、広瀬義宣で、そこに刑務所帰りの天知茂が加わろうとする。広瀬は東映の大部屋俳優だが、本作では大抜擢といえる。悪役が珍しく高松英郎で、近藤は松方らを裏切ると言った感じの役だ。他に宮園純子、桑原幸子、稲野和子、三島ゆり子、ケン・サンダース、待田京介など。
67年は東映京都での任侠映画の出演が続いている。まずは「懲役十八年」で、主演は安藤昇で、松竹で俳優デビューしたが、これは初の東映出演作である。主に刑務所の中で話が進むのだが、安藤の他、水島道太郎、山城新伍、小松方正、汐路章らが囚人役でそこに近藤が収監されてくる。彼が部下だった男の実弟であることに気付いた安藤はその唯一の身内である姉(桜町弘子)に会えるように取り計らう。看守役が小田部道麿、西田良、結城哲也そして若山富三郎といった面々。結城がチャンバラトリオに加入するのはこの翌年である。他に小池朝雄、千原しのぶ、菅井きん、志賀勝など。近藤も中々重要な役で出演しているのである。
続いて北島三郎、村田英雄、鶴田浩二による「兄弟仁義」シリーズの三作に出演。「続関東三兄弟」「関東命知らず」「関東兄貴分」の三本だが、この中では「関東兄貴分」で、重要な役柄を演じている。村田英雄の弟でストーリー上では中心となる男を演じている。
「男の勝負 関東嵐」も「兄弟仁義」と同じ山下耕作監督で、村田英雄が主演を務め北島三郎が助演という形。こちらは鶴田ではなく池部良が登場する。近藤は村田が世話になる菅井一郎の息子(養子)という設定。こちらもストーリーに絡んでくる役だ。
あまりイメージにないが、ブレイク前の近藤正臣は血気盛んな若者役で東映の任侠映画に出演していたのである。