夏夕介の出演映画
今回からは、「特捜最前線」繋がりで夏夕介である。彼もテレビで専ら活躍していたイメージが強いと思うが、70年代には映画出演も結構あるのだ。
夏夕介は50年生まれで、本名は田浦久幸という。出生地は熊本で、小学校は千葉、中高は大阪と各地を転々としている。大阪で、グランプリーズというバンドでオルガンを担当しており、その時のボーカルが和田アキ子である。69年ホリプロにスカウトされ上京し和田はソロデビューする。その頃、人気絶頂だったGSであるオックスのオルガン担当赤松愛が失踪し、そのまま脱退。その後釜に選ばれたのが夏であった。本名から一文字抜いた田浦幸(ユキ)として参加するが、赤松のファンからは誹謗中傷を受けていた。
70年、オックスに在籍中だったが芸名を夏夕介と改めソロ歌手デビューを果たし、同時に俳優業をスタートさせた。デビュー作となったのが日活の「野良猫ロック」シリーズ第2弾である「野良猫ロック ワイルド・ジャンボ」である。このシリーズはホリ企画つまりホリプロが製作に絡んでいることもあり、ホリプロのタレントが多く出演している。
シリーズ第1作「女番長野良猫ロック」の主演は和田アキ子だし、夏もその流れからの出演であろう。「ワイルド・ジャンボ」はペリカンクラブという不良の若者集団が主役でメンバーが梶芽衣子、藤竜也、地井武男、前野霜一郎そして夏夕介だ。そんな彼らに范文雀扮するアサ子が、とある宗教団体の寄付金・三千万円の強奪を持ちかける。彼女はその教祖の愛人だったのである。その計画にのった彼等だったが、警官隊と銃撃戦となり、ついには全滅してしまうというストーリーである。個人的にも、中学生だか高校生の頃に確か日曜夕方にテレビで放送されたのを見た記憶があるというくらい印象に残っている作品だ。
和田アキ子は特別出演扱いでポスターにもでかでかと顔が載っているのだが、実はほんのわずかの登場で、しかも前作のフィルムの引用だったりする。
続けて夏が出演したのが71年の1月に公開されたシリーズ第5作にて最終作の「野良猫ロック 暴走集団'71」である。今回は不良ではなく、新宿をネジロにするヒッピー集団という設定。そのメンバーが藤竜也、梶芽衣子、地井武男そして夏夕介というワイルド・ジャンボ同様の顔ぶれに加え、常田富士男、司美智子、青木伸子、小磯マリ、高野沙里、そしてリーダー格が原田芳雄である。地井は来海町々長(稲葉義男)の息子であり、町長は彼を連れ戻そうとブラックSSという怪しげな集団(メンバーは郷鍈治、藤木孝、前野霜一郎、安岡力也など)を使う。地井と梶が二人でいる際に襲われ、地井は弾みで力也を刺殺するが連れ去られる。梶が殺人者に仕立てられ女子救護院に送られるが、久万里由香を伴って脱走。梶は単身で来海町に乗り込むが他のメンバーも後を追う。そしてヒッピーグループと町長、ブラックSS団との戦いが始まると言ったストーリーだ。
71年5月にオックスは解散し、夏は役者業に力を入れ始めている。ドラマ「美人はいかが?」にレギュラー出演したり、藤岡弘や佐々木剛も学んだ劇団NLTの研修生になったりしている。