石立鉄男の出演映画
今回からは、鈴木ヒロミツと「事件狩り」「夜明けの刑事」で共演した石立鉄男である。
石立は、ホームコメディドラマの主演俳優というイメージが強いが、映画も数は少ないが出演している。
石立鉄男は42年生まれで本名である。男五人兄弟の四男で、弟の和男も一時期俳優だった。19歳の時に役者志望の友人が俳優座養成所を受けると聞き、興味本位で受けたところ約35倍の狭き門をくぐって合格してしまったという、付き添いで行ったら合格したというアイドルのようなエピソードがある。特に役者になるつもりはなかったが、合格発表を見に来ていた佐藤オリエを見かけて、「こんなきれいな子が入るなら」と入所を決めたという。
61年俳優座養成所13期生として入所。同期は佐藤オリエ、佐藤友美、真屋順子、結城美栄子、加藤剛、勝部演之、新克利、横内正、細川俊之などがいた。
63年のテレビドラマ「愛情の系譜」でデビュー。続く「まごころ」では早くも主演に抜擢されている。同年の「夏」というドラマでも主演で、後に結婚することになる吉村実子はその相手役であった。吉村によれば、汚い格好で現れた石立の第一印象は最悪だったが、本読みで一気に印象が変わりその才能に惹かれたという。まもなく押し切られる形で交際が始まったと語っている。

64年、養成所卒業後は文学座に進んだ。この年宝塚映画(東宝)「血とダイヤモンド」で映画デビューを果たしている。神戸税関からダイヤモンドの原石が四人組の強盗によって奪われる。佐藤允がリーダーで、藤木悠、砂塚秀夫、そして石立がその仲間だ。田崎潤率いる一味もその原石を狙っており、それらの計画を察知していたのが悪徳探偵の宝田明で彼が本作の主役だ。刑事役が夏木陽介、内田朝雄で、医者役に志村喬、他に水野久美、中川ゆき、伊藤久哉などが出演している。東宝の人気俳優が並ぶが、石立はオーディションで最後に決まったという。余談だが、本作ではガレージのセット(宝塚撮影所)から火災が発生。けが人などはなかったらしいが、そのステージは燃え尽きてしまった。別のステージにセットは立て直されたが、燃えたステージは再建されず、撮影所が縮小されたという。
64年はもう一本、東映の「仇討」に出演。主演は中村錦之助で、ひょんなことから上役だった神山繁を斬ってしまい、その弟・丹波哲郎に勝負を挑まれこれも斬ってしまう。その末弟が石立で、慕っていた錦之助を仇討しなければならなくなる。その仇討には六人の助太刀が手配されていた、というようなストーリー。他に田村高廣、進藤英太郎、小沢昭一、加藤嘉、佐々木愛、三田佳子など。そういえば、錦之助も石立と同じく男五人の中の四男だ(正確には女五人を含む10人兄弟)。前述のドラマ「まごころ」で石立の相手役が佐々木であった。
65年、NHKの単発ドラマ「ふりむくなマリー」で、吉村と再び共演。共に日米のハーフという設定で石立と吉村の二人だけの会話劇ドラマだったようである。「横浜港にて録画」とサブタイのようなものが付いている。二人が交際中と知っていてのキャスティングではないと思うがどうだろうか。ちなみに、吉村の姉は芳村真理である。

65年の出演映画はまず石原プロ製作、日活配給の「城取り」がある。主演はもちろん石原裕次郎。その仲間となるのが千秋実、中村玉緒、芦屋雁之助、そして石立鉄男だ。石立が演じるのは伊賀の抜け忍である木こりの彦十。タイトル通り彼らが伊達家の多聞山城を奪取するというお話。彼等にとって敵方となるのが近衛十四郎、今井健二である。他に松原智恵子、藤竜也、藤原釜足、鈴木やすし、内藤武敏、滝沢修らが出演。ちなみに中村玉緒は(大映)、近衛十四郎は(東映)、藤原釜足は(東宝)、芦屋雁之助、雁平には(劇団喜劇座)と名の横にクレジットされている。石原プロだから実現したキャスティングなのだろう。これらにまだ無名だった石立が主要キャストで混じっていたわけである。
本作は当初の予定から変更されたキャストが何人かおり、今井健二の役が宍戸錠、松原智恵子の役が緑魔子となっている映画サイトもある。またwikiではノンクレジット出演とされている郷鍈治、上野山功一は実際に出演しておらず、それぞれ柴田新三、河瀬正敏に変更されているようだ。

65のもう一本は松竹の「ぜったい多数」である。曽野綾子原作の青春もので、主演は桑野みゆき、田村正和で、早川保、中村晃子、伊藤孝雄、吉村実子、北村和夫、内藤武敏らが共演。いしだあゆみや倍賞千恵子も「女リーダー」の役で出ていたりする。吉村実子の(同棲)相手役は石立ではなく早川である。