沢田研二の出演映画 その2
今回も沢田研二である。
79年は「太陽を盗んだ男」で主役を演じている。彼の演じる城戸は無気力な中学の理科教師。ある日社会見学で彼と生徒たちを乗せたバスが大量の火器を持った老人(伊藤雄之助)にバスジャックされる。要求は「皇居へ行って天皇陛下に合わせろ」というもの。しかし、丸の内警察の山下警部(菅原文太)の活躍もあって事件は解決する。
その日から城戸は変わり、原爆の作り方を授業で行うなどの奇行が始まる。そして東海村の原発から液体プルトニウムを強奪し、自宅で原爆を完成させ日本政府を脅迫し、交渉相手に山下警部を指名する。
とまあ、序盤のあらすじを書いただけでもヤバイ話なのがわかる。城戸の要求が「プロ野球ナイターの完全中継」だったり「ローリングストーンズの日本公演」だったり、振り回される警察。次いで「5億円」を要求するが、城戸に被爆の症状が現れる。といったような展開。当時でもよく映画化できたと思うような内容だが、これは監督の長谷川和彦自身が胎内被爆者であるというところから考えた企画でもあるようだ。
前述以外の出演者は池上季実子、佐藤慶、北村和夫、神山繁、風間杜夫、水谷豊など。刑事役が汐路章、石山雄大、市川好朗、森大河と普段は悪役の面々である。草薙幸二郎と草薙良一も出ているが、顔も結構似ているので兄弟(親子)と思われがちだが、二人に血縁関係はない。配給は東宝だが日活や東映の大部屋出身者が多く出演している。
81年の映画主演作に「魔界転生」がある。制作は東映、角川春樹事務所で、原作は山田風太郎だ。ちなみに「てんせい」ではなく「てんしょう」である。主演は柳生十兵衛を演じる千葉真一、そしてW主演という形になるのだろか天草四郎時貞を演じる沢田研二だ。山田の原作とは異なり最終的には、この二人の対決となる。千葉真一は他作品でも十兵衛を演じており、本作は4度目の十兵衛となる。
悪魔の力により甦った四郎は自分と同様に無念の死を遂げた者を甦らせ魔界衆に引き入れていく。その面子が宮本武蔵(緒形拳)、細川ガラシャ(佳那晃子)、宝蔵院胤舜(室田日出男)に加えオリジナルキャラの伊賀の霧丸(真田広之)。四郎を含め当初はこの五人であったが、後に十兵衛の父・柳生宗矩(若山富三郎)が加わる。他に丹波哲郎、松橋登、神崎愛、大場順、島英津夫、久保菜穂子、成田三樹夫、鈴木瑞穂、犬塚弘、また角川春樹も板倉内膳正役で顔を出している。
82年、本業の歌手活動では77年辺りから続いていたシングル曲でのヒットは37枚目の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」が最後となり、以降オリコン10位以内にランクインすることや「ザ・ベストテン」のソロでの出演も無くなった。
映画ではシリーズ30作目となる「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」に出演し、ここで2番目の妻となる田中裕子と出会うのである。田中はマドンナ役ではあるが、今回の寅さんは沢田と田中の恋のキューピッド係といった感じ。まさか現実でも不倫関係に発展していくとは誰も思ってなかっただろう。
84年は「ときめきに死す」で主役のテロリストを演じている。82年に発表された丸山健二の小説が原作だが、舞台が北海道だったり、暗殺対象が宗教家だったりと原作とは違いが多い。謎の組織から沢田の世話を命じられた医師に杉浦直樹、途中から組織に派遣されてきた女に樋口可南子。この三人による奇妙な共同生活が描かれている。他に日下武史、加藤治子、矢崎滋、宮本信子、岸部一徳など。暗殺対象の宗教家を演じるのは岡本真は役者ではなく漫画家・白土三平の実弟で、当時は赤目プロ(白土のプロダクション)のマネージャーであった。ちなみに本作の映画化権を持っていたのは内田裕也だったという。沢田の役はアル・パチーノ、杉浦の役を内田がやる予定だったが、沢田からの懇願で権利を渦ったのだという。
そして85年は「カポネ大いに泣く」。監督は鈴木清順で、主演は萩原健一、そこに沢田研二、田中裕子である。二人の関係を知ってか知らずかのキャスティングだ。他の共演者は高倉美貴、柄本明、樹木希林、加藤治子、牧伸二、峰岸徹、梅宮辰夫、平田満、たこ八郎など。タイトルにもあるアル・カポネ役はチャック・ウィルソンである。チャックは当時のクイズ番組「世界まるごとHOWマッチ」に出演していた米国人タレント(スポーツ・インストラクター)だが、映画出演は本作が初であった。本作で沢田と田中の仲が加速したかどうかは不明だが、87年に沢田と伊藤エミとの離婚が成立した。そして89年に沢田と田中は結婚したのである。