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tetsu8
2024/10/24 23:49

中村敦夫の出演映画 その2

続けて中村敦夫である。

68年に中村が出演したもう一本が松竹復讐の歌が聞えるである。主演は俳優座の後輩である原田芳雄で、これが映画デビュー作でもある。原作は石原慎太郎「青い殺人者」だが、石原が自ら脚本も担当している。俳優座と提携して製作されているので、原田、中村以外にも東野英治郎、浜田寅彦、滝田裕介、福田豊土、菅貫太郎といった俳優座所属の役者が多く出演している。内容は原田扮する主人公が復讐のため、人を殺しまくるというもの。本編は未見なのだが、予告編によれば「二十四の華麗な殺しのテクニック」などと謳っているので、24人殺すということだろうか。それも爆弾とかで一度にではなく一人一人違った方法で。ラスボスは内田良平で、その妻で兄の元恋人が岩本多代。岩本は内田の悪事を知らなかったという設定で殺されはしないようだが、原田も岩本も当時20代には見えない。原田の元恋人役は鵬アリサという人だが、映画はこの一作のみ。少ない情報では、日劇ミュージックホールのダンサーだった人らしい。
中村の役も殺される中の一人で、ポスターに名前は載っていないようだ。予告編でビルの工事現場で逆さに吊るされているのが中村のようだ。
 

69年は戦争映画トラ・トラ・トラのオーディションが行われた。米国側をリチャード・フライシャー、日本側は黒澤明が監督するということで始まり、中村も直接黒澤監督に会いスパイだったハワイ滞在の日系米人役に合格した。実際にハワイに留学していたことが大きかったのではと語っている。しかし、黒澤は米国側と対立し結局降板し、中村の役もマコ岩松に知らぬ間に変更され米国側で撮影されていたという、しかし本編ではカットされてしまっている。

70年の出演作品には幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形がある。岸田森の項で紹介した「血を吸う」シリーズの第1作である。2、3作目の吸血鬼を岸田森が演じていたが、1作目は誰かというと中村敦夫ではない。東宝の若手女優だった小林夕岐子である。東宝ニュータレント6期生で、同期に菱見百合子、牧れい、九条亜希子、小西まち子など特撮ヒロインになったメンツが多い。父は水島道太郎、母はタカラジェンヌだった山鳩くるみ。「ウルトラセブン」へのゲスト出演(アンドロイド少女)や「怪獣総進撃」「南海の大決闘」といいた東宝特撮への多かったことからの抜擢であろうか。
「血を吸う人形」では小林の婚約者役だったのが中村である。彼女に会いにその屋敷を訪れたまま行方知れずになる。その消息を追って、妹である松尾嘉代と恋人である中尾彬が屋敷を訪ねる。といったストーリーで、結局中村は死んでいたので、松尾、中尾コンビが主役という感じになる。他の出演者は宇佐美淳也、南風洋子、高品格、浜村純など。
 

71年は大島渚監督の儀式に出演。製作は大島が率いる創造社で配給はATGである。大島がどこからか俳優座の異端児であった中村に目を付けたらしい。主演は河原崎建三と賀来敦子で、他に大島の妻である小山明子、創造社のメンバーでもある小松方正、戸浦六宏、渡辺文雄、大島作品常連の佐藤慶、殿山泰司、乙羽信子、小沢栄太郎など。建三の実母である河原崎しづ江も出演しているが、本作が最後の出演作品となっている。賀来敦子は詳細不明だが、62~63年にかけて数本のドラマ、映画への出演記録があるが、64年以降はなく本作で復活した形となっている。

物語は「テルミチシス テルミチ」という奇妙な電報で始まるが、そのテルミチ(立花輝道)を演じるのが中村である。
 

また、この71年にはNHK大河ドラマ春の坂道に石田三成の役で出演。しかし、初任給1万5千円程度の時代にギャラが1本4千円という安さで、しかも週に5日拘束されてしまうということで、「一刻も早く処刑されて消してほしい」という異例の申し出をしたという。ギャラは安くても、天下のNHKで目立つ役をやるのは光栄だというのが常識だったので、当然関係者は激怒し、お望み通り降板させようと思っていたところに、中村へのファンレターが多くNHKに届き始めたのである。マスコミからの取材も殺到し、NHKもその人気を無視できなくなり、5~6話だった出演予定が16話に伸ることになったのである。普通なら役者として嬉しい誤算という出来事だが、中村にとっては薄給で4カ月働かされることになったので、非常に迷惑だったと語っている。

 

また俳優座においては、中村ら中堅・若手が上演を希望した「はんらん狂騒曲」が幹部が反対したことで俳優座首脳との対立が決定的なものとなった。中村は劇団の許可を得ず「はんらん狂騒曲」の上演に踏みきったのである。公演が終了すると経済的に追い詰められ、すぐにでも収入を得なければならない状態となっていた。
幸いにも「春の坂道」で名が売れ、ドラマへの出演依頼が殺到していた。中村の答えは「ギャラの高そうなもので」。内容はなんでも良かったのである。劇団の映画放送部としてはそうもいかず、二本の連続時代劇ドラマに絞り込んだきたが「そちらで決めてください」と他人任せであったという。後日、それとは別に市川崑監督が時代劇の主役を探しているから会いに行けという。候補作があるのに、必要ないではないかと思ったが、巨匠の希望だからと渋々向かった。相手が自分を選んでくれる保障はこの時点ではなかったのである。
 

お分かりだと思うが、その時代劇こそが木枯し紋次郎である。市川監督は待ち合わせの喫茶店に中村が入って来たのを見た瞬間に彼を紋次郎役に決めたと言う。

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