西郷輝彦の出演映画
今回からは、西郷輝彦である。
「大岡越前」の休止期間に放送されていたのが「江戸を斬る」で、その主役遠山金四郎を演じていたのが西郷ということで彼にした。知っての通り、歌手としてデビューし、橋幸夫、舟木一夫と共に「御三家」と言われた人気者だ。「どてらい男」とかテレビのイメージが強いと思うが、橋や舟木もそうだが、特にデビュー時は多くの映画に出ているのだ。
西郷輝彦は47年生まれ。本名は今川盛揮で、鹿児島の出身。鹿児島と言えば薩摩、薩摩と言えば西郷隆盛ということで、その芸名が名付けられている。高校時代(鹿児島商業)は、映画俳優にも憧れていたので、各社のニューフェイスに応募しているが、全て落選だったという。
62年、高一の時点で中退して上京。バンドボーイをしていた時に龍美プロに誘われて入社(マネージャーは後のサンミュージック社長・相澤秀禎)し、64年に「君だけに」で歌手デビューするが、これが大ヒット。

同年の4枚目シングル「十七才のこの胸に」もヒットし、同タイトルの東映映画にて役者デビューした。タイトル通り十七才だったわけである。
主演は西郷と本間千代子。二人は鹿児島の高校に通う優等生だったが、ひょんなことから停学処分となる。千代子は一人東京へ行ってしまい、西郷はその後を追う。というような青春映画で、西郷の母が沢村貞子、千代子の母が笠置シヅ子。同級生役が長沢純、新井茂子で、千代子の入院中の親友に園まり、その主治医が波島進だ。本間はこの頃、西郷だけでなく舟木一夫の相手役もしていた。

二本目は65年になり、同じ東映の「あの雲に歌おう」である。こちらは主演は本間千代子で、西郷は友情出演となっている。もちろん高校が舞台で、千代子の同級生に長沢純、新井茂子は同じだが、加えて優等生の太田博之、島かおり、不良の岡崎二朗、そして剣道部主将の西郷だ。新任の先生が千葉真一で、彼に千代子は憧れるが、結局は西郷の姉で同校教師である宮園純子と結ばれることになる。本作には元祖ジャニーズの四人(あおい輝彦、真家ひろみ、中谷良、飯野おさみ)も出演している。
65年はあと4本あり、まず松竹「我が青春」。西郷が主演で、その兄役が三上真一郎だ。その三上が当初歌手として成功しスターになり、西郷はそのマネージャーを務めていた。それを妬んでいるのが先輩の手塚しげおで、三上は彼の雇った愚連隊により負傷する。代わりに舞台に立って歌ったのが西郷で、結果は大成功で彼が大スターにのし上がっていくというような話。他の出演者は菅原謙次、夏圭子、ロミ山田、五月女マリなど。
ここまでは青春映画だが、大映「狸穴町0番地」はコメディである。ちなみに狸穴は「まみあな」と読む。あらすじを見てもすぐに理解できなかったが、要するに狸穴町の住人の正体はたぬきなのだということのようだ。クレジットのトップは高田美和で、次に西郷、川崎敬三、そして花菱アチャコで、(吉本興業)付である。他に丸井太郎、春川ますみ、玉川良一、左卜全、坂本スミ子、田端義夫など。

東映、松竹、大映と来たら日活である。「涙をありがとう」は、西郷のシングルタイトルでもあり、本作の主題歌でもある。クレジット上は西郷がトップ扱いだが、実質的には高橋英樹が主役のアクション映画のようである。西郷の姉が山本陽子、GFが和泉雅子で、その姉が久保菜穂子で、その夫・二本柳寛は沢島組の組長だ。組の幹部が藤岡重慶、宮部昭夫などで、雇われた殺し屋が深江章喜だ。高橋の殺された父(刑事)を演じたのは中村歌門。名前の通り歌舞伎役者で、詳しくはわからないが13年生まれで、33年から市川菊之助、55年に中村歌門(二代目)を襲名したようだ。

「星と俺とできめたんだ」も西郷のシングルタイトルでもあり、本作の主題歌でもある。「決めたんだ」と漢字にしたくなるところだが、平仮名が正解だ。こちらは名実ともに西郷が主役のアクション映画。西郷は大学の剣道部員で、クラブで歌手のバイトをしているが、技術者の兄(弘松三郎)が殺され、その仇を討つというお話。十朱幸代はその兄の婚約者で、松原智恵子は西郷の居候先の娘。黒幕は西郷がバイトしているクラブの経営者(神田隆)で、その愛人が香月美奈子。渡哲也が西郷の助っ人として登場するが、香月は実の姉である。神田の妻が奈良岡朋子で、神田の部下が高品格、野呂圭介など。弘松三郎の詳しいプロフィールは不明だが、54年に再開した日活にその初期から末期まで大部屋俳優として在籍していたと思われる。悪役が多いが、ドラマ「ハレンチ学園」では教師の一人を大辻伺郎、井上昭文らと演じていた。