石橋正次の出演映画 その2
前回の続きである。石橋正次はテレビの方で忙しくなったせいか、映画では「あしたのジョー」以降に主演となることはなかった。
「望郷」というタイトルの映画はいくつかあるようだが、石橋が出演したのは71年の松竹映画である。本作は森進一のヒット曲「望郷」の映画化、つまり歌謡映画で、松竹や東映に多いイメージだ。主演は森進一本人で、その歌謡映画は数本存在する。
ストーリー上は三田佳子と榊原るみが主演という感じ。二人は姉妹という役柄で、三田は妻子のある江原真二郎と不倫中で、榊原は中学の同級生の森田健作と再会する。江原の役がレコードディレクターで、彼が担当しているのが森進一だ。ちなみに役名は森川信一郎という。石橋正次も森田、榊原の同級生という役で当時のポスターに顔(姿)は載っていない。森田健作と石橋正次の共演と言えば「おこれ!男だ」(73年)があったが、それ以前に共演があったわけである。そういえば、三田と江原は共に東映出身だ。
「夏の妹」(72年)は大島渚が監督した創造社、ATG制作という作品。返還直後の沖縄で全編ロケが行われている。主演は栗田ひろみで、当時15歳の中学生。71年にNHKドラマ「さすらい」でデビューしたばかりで、映画は初出演でもあった。出演者は大島の妻である小山明子はじめ、大島映画常連の戸浦六宏、小松方正、佐藤慶、殿山泰司といった顔ぶれ(ちなみに小山、戸浦、小松は創造社のメンバーでもある。翌73年に解散)。こういったベテラン勢の中に石橋正次と歌手であるりりィが加わっている。
本作では、石橋が鼻歌で「シルバー仮面」(71年)の主題歌「故郷は地球」を口ずさむ場面がある。これは本作にもシルバー仮面にも脚本で参加している佐々木守が打ち合わせで口ずさんでいたからだという。石橋は「シルバー仮面」には出演していないが、後番組である「アイアンキング」(72年)で主演となっている。脚本は全話佐々木が担当した。
「飛び出せ!青春」(73年)は大ヒットドラマの映画版。再編集ではないが、ドラマ撮影終了後に新たに撮影された総集編的な内容となっている。引き続いての撮影だったせいか主演の村野武範以下、ほぼ同じスタッフ、キャストが参加しており、石橋もテレビと同じ高木勇作役で出演している。しかし、ヒロインの酒井和歌子と石橋の出演回のみセットで出演していた生田みどり役の太田黒久美は出演していない。
ドラマの時期は石橋の「夜明けの停車場」が大ヒットしたため歌手活動が忙しくなり、14~27話まで休学したという設定で出演していない。このドラマ中に披露したのがヒットのきっかけだったという。映像上は村野を前に石橋がギターを弾いて歌っているが、実はギターが弾けず、実際は村野がギターを弾いているという。