大瀬康一の出演映画
今回からは、大瀬康一である。元祖テレビヒーローである「月光仮面」や「隠密剣士」で主演を演じた元祖ヒーロー俳優だ。「月光仮面」なんかは自分の生まれる前だし、リアルタイムでその活躍を見た記憶もないが、存在は子供の頃から知っていた気がする。
大瀬康一は37年生まれで、本名は大瀬一靉(かずなり)といい、見たこともない難しい字を使う名前である。役者としてのスタートは東映で、龍崎一郎の紹介だったと言い、大部屋俳優だったという。この時代に関しての記録などは無いので、通行人とかセリフもないような役ばかりだったのではないだろうか。
そんな彼が20歳のとき、58年2月スタートの連続テレビ映画「月光仮面」の主演に抜擢されたのである。オーディションがあり、声が良く、子供に好かれそうな顔立ちだったからというのが採用理由だそうだ。無名の大部屋俳優ということで出演料を抑えられるという側面もあった。本名だと難しすぎるので、原作者である川内康範から一文字もらい、大瀬康一を芸名とした。「月光仮面のおじさんは~」などと歌われているように20歳には見えなかったが、「おじさん」はないようなとも思ったりする。
「月光仮面」の後、同じスタッフによる「豹の眼」(59~60年)にも主演し、ヒーロー「笹りんどう」を演じている。
この「豹の眼」終了後に大映と契約し、10数本の映画に出演しているのだが、その出演作についてははあまり知られていない気がするので、それを追っていきたい。
その一作目となるのが「弾痕街の友情」(60年)で、いきなりの主演である。大瀬と三田村元、大辻伺郎が少年院を脱走。大辻のみ成功する。残る二人も一年後には退院し、大瀬はボクサーに、三田村は刑事になる。消息不明だった大辻は殺し屋になっており、最終的には二人と対決することになる、というようなストーリー。共演は江波杏子、三木裕子、見明凡太郎、中条鈴夫、守田学哉など。
三田村元は35年生まれで、57年のミスター平凡に選出されたのを機に大映に入社。60~61年あたりは主演または準主演格だったが徐々に助演に回り63年には大映を退社。大辻も35年生まれだが、三田村とは逆に大部屋からその個性でのし上がっていった。我々世代には「ハレンチ学園」のヒゲゴジラ役で印象に深い役者だ。三田村は70年代の日活で「復活」するが、72年頃引退。実は大瀬も72年に引退している。大辻は73年に自死と、ほぼ同時期に姿を消したのである。
中条静夫の本作での役は「ザギンの三太」といい、三下で殺されてしまう役である。「ザ・ガードマン」で知られるようになる前はこういった役も多かったと思われる。
「若い仲間」(61年)は源氏鶏太原作のサラリーマン恋愛物とでも言うのだろうか。主演は本郷功次郎と叶順子。銀行が舞台で大瀬はその新入社員だが、実は財閥の御曹司。それを知った叶が彼を狙い、本郷と偽装恋人になって気を惹かせようとする。しかし偽装のはずが、いつしか本気になって…、というようなお話。共演は大辻伺郎、江波杏子、片山明彦、宮川和子、潮万太郎、三角八郎、丸井太郎など。
「投資令嬢」(61年)は、女子大生を主人公とした恋愛ドラマだが、そこにタイトル通り投資などビジネスの話が絡んでくる。主演は叶順子で、その親友が野添ひとみ、宮川和子。彼女らの憧れの大学教授が根上淳。叶が助けられたことをきっかけに恋する青年が大瀬康一だが、彼は野添と見合いをすることになる、というような話。東野英治郎が大瀬の父役で、松村達雄、藤間紫が叶の両親で、渥美清が叶の見合い相手役で登場。クレジットでは6番手の扱いだった。他に丸井太郎と三角八郎の「ピンボケコンビ」などが出演している。
「背広姿の渡り鳥」(61年)は、日活の「渡り鳥シリーズ」の影響を受けているであろうアクションドラマである。その「渡り鳥」が大瀬で、クレジットもトップだが、ストーリー的には佐川満男(当時ミツオ)が主役っぽい。80年代以降は、主に役者として活躍している佐川だが、元々は人気歌手である。ちなみに、あの佐川一政は甥にあたる。この後、病気などもあり低迷期もある。伊東ゆかりと71年に結婚するが、75年に離婚している。他の出演者は、三木裕子、村瀬幸子、友田輝、上田吉二郎などである。