私の好きな映画

『邦画ではない邦画』 国宝

タロ感想 

*内容に触れています。
*ネタバレを含みます。
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2025
監督 #李相日
撮影監督 #ソフィアンエルファニ
6.4/10 点

『邦画ではない邦画』
鑑賞中この感覚が終始頭をよぎっていた。

 

ほぼ邦画を観ないタロ、
ただ本作を観ていてタロの知っている“邦画感”
いい意味でない。

このような目を持った監督と撮影監督が
日本にいるのか、、。画角やライティング、
編集を観ながら不思議な感覚に陥る。

編集が特に邦画らしくない。
これは気づいた方もいらっしゃるかもしれないが、
キャラクターがセリフを言い終える前や
アクションを”終える前”
次のカットに切り替わる。

これが見事に不意を突く役目を果たし、
物語をテンポよく進める点で成功している。

また画角、構図、レンズチョイスやライティングが
見ていて気持ちいい・・・撮影監督の腕が光る。
歌舞伎の舞台裏の狭さから舞台に出て解放される
瞬間の役者視点など唸る箇所が多々見受けられた。
言い方が悪いかもしれないが、
撮影映えしない日本人エキストラなども輝いていた。

効果音の使い方。
これも絶妙。おそらく実際の歌舞伎では
聞こえない微かに擦れる衣装の音や息遣い。
それらが音楽を奏でるように収録され、
気持ちよさを足す。

 

ただ、これらの手法は決して新しくないことは
言っておく。ブラックスワンやバードマンなどから
インスパイアされていると感じた。
また、フラッシュバック的な感覚でワイプで入る雪景色。
これは、ノーランのオッペンハイマーへの
オマージュだろう。
ノーランのプレステージなどの雰囲気もちらつかせていた。

サントラ。
音量が大きめに収録された壮大なオケは、
聴いていて気持ちが良い。入るタイミングも
悪くない。ただ、一般的なコード進行ではあるが

これはこれで腕の鳥肌が立つ。原摩利彦の他のサントラが気になる。

個人的には主題歌以外で、
国宝ならではのずば抜けた旋律を聴きたかった。
一つ残念なのが、サントラはダウンロードのみで
CDの発売がない。おそらくブルーレイ発売時、
豪華特典DXパッケージに同梱されてくるのだと想像している。

肝心のストーリーについて。
弱い..このレベルの脚本で、人間国宝を語るものではない。
主人公は最初から神的スキルを持ち、
なぜこのすごさを持ち寄ったのかが語られず進んでいく。
そこに焦点を置いていないのは分かるが、
稽古のシーンはさそど厳しくない上、
舞台で一切のミスも起こさない主人公を見ていると
歌舞伎俳優になる難しさが弱まってしまう。

歌舞伎俳優という一般人では経験できない
別世界での生活をもっと見たかったのが正直なところ。
ただ、あえて緩急を少なくし歌舞伎ならではの
繊細な動きにストーリーの波長を合わせたのかと感じた。

また、歳を増すごとに増える人間関係の折衝や
困難を歌舞伎舞台のストーリーをうまく
重ねながら伝えているのは褒めたいポイント。

点数だけを見たら低く感じられる方もいるかもしれないが、
十分タロの血を騒がせる作品であった。
上映後本物の歌舞伎を見たくなる自分がいたのは言うまでもない。

演技も申し分ない。2トップはもちろん、
その他ベテラン俳優もだが、子役の#黒川想矢
一番驚かされた。格がちがう

ただ、最後・・・あのセリフは口にしてほしくなかった。
表情のみで我々に気持ちを伝えてほしかった。

無言で終わり、エンドクレジットへと幕を閉じたらどれだけインパクトがすごかったか。
あと、とあるカメラマンがあの人でした・・・というのは
都合が良すぎなのでは。

上映時間の3時間は長すぎる。
内容を無理に詰めすぎた。これなら
実際の歌舞伎同様、前半と後半に分け、

ブルータリスト形式で、中休憩を挟むべきだった。

終始感じていた、『邦画でない邦画感』・・・
エンドクレジットで監督と撮影監督が外国の方と知る。

納得。


大ヒットに合わせ、IMAX上映を追加でやるような予感もする。
まちがいなくロングランは確定と思われる。


*パンフレット、表紙と背表紙はマットなのに中身は艶加工。

全ページ和紙的なものにしてほしかった。

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by タロ映画館

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