近藤正臣の出演映画 その2
前回に続いて近藤正臣である。
67年はもう1本あり、東映の集団時代劇「十一人の侍」にも出演している。タイトルの十一人の一人ではなく、主人公(夏八木勲)の妻(宮園純子)の弟、つまり義理の弟・喬之助を演じている。さすがに十一人全部を描くことはなく夏八木勲、里見浩太朗、西村晃、青木義朗などを除くと、汐路章、唐沢民賢、五十嵐義弘、岩尾正隆、有川正治といった(割と知られている)大部屋の面々が「十一人」のメンバーだったりする。討つべき相手である松平斉厚を演じるのは菅貫太郎。近藤演じる喬之助は単独で狙うのだが、菅が演じる松平を近藤が狙うというこの構図はドラマ「斬り抜ける」(74年)と同じである。こちらは松平丹波守ではあるけれども。
68年は映画出演の記録はなく、69年に飛ぶのだがやはり東映時代劇である「妖艶毒婦伝人切りお勝」に出演。主演は宮園純子で、近藤はまたしてもその弟役だ。父親役が西村晃で、この父と弟を殺された宮園の復讐物語なのである。その復讐相手が今井健二や曾根晴美だったりする。宮園に協力するのが大信田礼子であり、若山富三郎だったりするのだが、大信田は当時人気ドラマだった「旅がらすくれないお仙」のかみなりお銀のようなコスチュームで登場。若山も本作の半年後に公開される「賞金稼ぎ」シリーズの市兵衛のようなスタイルで出てくるのである。個人的には予告編のみ見たことはあるのだが、そこに近藤の姿はなかった。
「日本暗殺秘録」は二時間半近いオムニバス形式の映画だが、大半が「血盟団事件」を描いており、それだけでも1本の映画になる(約百分)。このパートの主演は千葉真一で、あえて本作に合いそうなヤクザ映画のスターを避けての起用だという。大映を解雇され五社協定のため映画界を干されていた田宮二郎が本作で復帰し、初の東映出演を果たした。近藤もこのパートに出演している。
それと同時期に公開されたのがカルト映画として名高い「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」である。クレジットでは「パノラマ島奇談」よりとなっているが、大半は「孤島の鬼」がベースになっているようである。本作で近藤はセリフもないシャム双生児の片割れを演じているというのは割合知られている話ではないだろうか。
以上のように69年は、ほとんど目立たない役に終始しているのだが、翌70年にドラマ「柔道一直線」に出演し、その結城真吾役で強烈な印象を残すことになったのである。
そんな70年の映画出演は「柔の星」のみである。タイトル通り柔道映画で、主演は桜木健一なので
「柔道一直線」の映画版と思いきや、実は本作は東宝映画。「柔道一直線」は東映なので東宝がその人気に肖って制作したものだ。近藤は本作ではライバルではなく、桜木の親友役だ(柔道部員)。この二人と大野剣友会の面々が共通の出演者で、他は清川虹子、川津祐介、岸久美子、木村由貴子、露原千草などでライバル役は「スペクトルマン」の成川哲夫が演じる。
また本作では製作に、かつて黒澤明映画のプロデューサーとして活躍したが57年に契約を解除された本木荘二郎の名がある。外注作ではあるが東宝作品に10数年ぶりの復帰となった。