【実話】15歳少女と32歳青年のひと夏の情愛
「お金持ちのあなたが好き」
「愛人/ラマン」
原題:L' Amant
1992年公開 116分
制作国:フランス・イギリス
監督:ジャン=ジャック・アノー
音楽:ガブリエル・ヤレド
キャスト:ジェーン・マーチ、レオン・カーフェイ他
「お金持ちのあなたが好き」
ここだけ聞くと、なかなか挑発的で薄情な響きに聞こえるこの台詞
映画を観る前と観た後では、ガラリと印象が変わります
今回は、「恋愛映画ってちょっと苦手」な方にもぜひ観てほしい、
私がラブストーリーの中でも群を抜いて大好きな
原作者の実体験を元にしたロマンス・官能作品「愛人/ラマン」をご紹介します
15の夏、少女は17と「嘘」をついた
時代は1929年、フランス統治下のインドシナ(現ベトナム)
寄宿学校へ向かう船の上で、主人公であるフランス人の少女は
自身の運命を大きく変える出会いを果たす
「いかがですか?」
ガタガタと震える手で緊張しながらタバコを差し出してきたのは
32歳の裕福な中国人青年
当時は人種差別があからさまにはびこる時代で、
特に中国人へのイメージや扱いは良いものではなく、
白人女性と中国人の恋沙汰というのは
かなり考え難い状況下での出会いだったとのこと
しかしまだ15だった少女は、そういった事はあまり深くは気にせず
寄宿舎まで送ってくれるという青年の提案で車へ乗り込み、
道中、歳を聞かれた少女は「17よ」と実際の年齢より二つ背伸びした答えを伝えます
自分の家庭環境に絶望していた彼女は、この時
いちはやく“大人”になりたかったのです
貧困の中、召使を雇わなければならなかった白人至上主義時代
少女は、母と二人の兄の4人で暮らすも、その生活ぶりは決して裕福といえるものではなく、
過去に財産を奪われたことにより、生活は困窮
そのため少女が着ていた服には綻びが生じ、
くたくたになった靴をすり減らしながら履く日々
毎日食べていくことに必死な状況でありながら、
当時の一般的な風潮だった「白人としてのプライド」を守るため、
召使やドライバーを雇い、形だけ裕福な暮らしをしていました
下の兄は病弱で、上の兄に至っては暴力的かつずる賢く、
母親のお金を盗んではアヘンにつぎ込む始末
そんな、何の楽しみも見出せないような生活にうんざりした少女にとって
新しく出会った「友達」は、新世界への入口だったのです
繋いだのはお金?それとも心?
青年は、彼女に対していつでもまっすぐな愛情を向け、二人は深い関係に
しかし彼には、親が決めた許嫁がおり、後には結婚する身
ということで少女はあくまでも彼の「愛人」
彼と一緒にいると、食事にも困らない彼女は
自分が愛人だという事にもまったく傷つかず、むしろ気に入ってる様子
それに対し、青年は色んな言葉で彼女の愛を確かめようとします
「僕がお金持ちだから好きなんですか?」
少女の外泊が続き、学校は自宅に連絡
とうとう少女の母親に、新しい友達の存在がバレてしまう…
🐈ここミロポイント🐾
はじめて少女と青年が心を通わせるシーンは、絵になるほど美しく、
ふたりの緊張感が画面越しにひしひし伝わってくる珠玉のシーンなので
実際に観て、初々しい恋のはじまりをぜひ味わってほしい
また、こういった歳の差恋愛、さらにはお金で繋がる男女を描く作品において
どうしても年上の男性に対して嫌悪感を抱く内容のものが多い中、
「愛人/ラマン」に至っては、自然とこの中国人青年の気持ちに寄り添い、
一緒になって胸が苦しくなってしまうのも、この映画が大好きな理由のひとつ
ちなみに、他のラブストリーとは違い
お互いに盲目になって燃え上がる場面は一切ありません
(ただし、官能的なシーンはあります)
少女は世の中に対して冷めた視点を持っており、
青年の前でも常にあっさりした態度なので
観方によっては「これって恋愛物語なんだろうか?」と
感じたときもありました
これが、愛だったのか、そうじゃないのか
それは、著者であり、主人公本人であるマルグリット・デュラスが
晩年になってから筆をとり、この物語を書き綴ったというのが答えなのかもしれません
ミロシネマ🐾
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