ハナ肇の「為五郎シリーズ」
ハナ肇、山田洋次のコンビは終焉を迎えたが、ハナを主演とした松竹作品は継続されている。それが「為五郎シリーズ」である。
「アッと驚く為五郎」は、ハナが「巨泉×前武ゲバゲバ90分」(69~71年)で発したフレーズで流行語にもなっているギャグである。元々は浪曲「清水次郎長伝」の節回しで、為五郎はその登場人物。この部分がハナのお気に入りで、ふと彼が言ったところウケて、番組で使われるようになったようだ。
番組のヒットを受けてクレージーキャッツによるシングル「アッと驚く為五郎」も69年末に発売され、これもヒットした。当時は何かしらヒットすれば映画化されるような風潮もあり、すぐに松竹によって映画化されることになった。
タイトルはそのまま「アッと驚く為五郎」(70年)で、主演はもちろんハナ肇だ。共演は梓みちよ、尾崎奈々、佐藤友美、財津一郎、谷啓、監督は瀬川昌治が務める。
この「為五郎シリーズ」は、全部で五作品あり、第2弾が「なにがなんでも為五郎」(70年)で、共演が谷啓、光本幸子、小沢栄太郎、有島一郎である。
第3弾が「やるぞみておれ為五郎」(71年)で、共演が谷啓、光本幸子、緑魔子、財津一郎、伴淳三郎などである。
第4弾が「花も実もある為五郎」(71年)で、共演が藤田まこと、光本幸子、林美智子、范文雀、石山健二郎などである。この2~4作の監督は55号映画の野村芳太郎で、併映作品が渥美清、山田洋次の「男はつらいよ」シリーズになっている。
そして最後となるのが「生まれ変わった為五郎」(72年)で、共演が緑魔子、財津一郎、殿山泰司、三木のり平、桜井センリなど。
ちなみに、71年をもって東宝のクレージー映画は終了しており、ハナの松竹における主演映画もこの72年の「喜劇社長さん」をもって終了し、主に脇役として活躍することになる。
ちなみに、為五郎はドラマ化されており、「男一番!タメゴロー」(70年)のタイトルで、26回に渡り放送されている。制作は松竹ではなく東映で、主演はもちろんハナ。共演は八千草薫、金子信雄、飯田蝶子、なべおさみ、入川保則、丹阿弥弥津子など。脚本には向田邦子が参加している。