藤岡弘の出演映画 その4
藤岡弘に関しては前回で終了と思ったが、松竹時代以降についても1回だけ触れておこう。
「仮面ライダー」終了後の映画に関してだが、ここまで縁のなかった東宝の作品が続くことになる。
その第1弾が「野獣狩り」(73年)で、藤岡が刑事に扮するアクション映画である。伴淳三郎がその父親でやはり刑事をしている。つまりは「おやこ刑事」なのである。松竹時代に共演はほぼなかったと思う。
「黒の戦線」なる組織が登場し、そのリーダーが富川澈夫。屈折した青年といった役が似合う役者で、ちなみに「すみお」と読む。他のメンバーが菅原一高、樋浦勉、山口嘉三、中村まり子など。菅原は現状は幻の特撮となっている「サンダーマスク」の主演である。藤岡の上司役で加藤和夫、稲葉義男。稲葉は殉職してしまう。他に渚まゆみ、西本裕行、中条静夫など。渚まゆみは大映の出身。この年27歳上の作曲家・浜口庫之助と結婚し、まもなく引退するが後に復帰する。この辺りから藤岡にハードボイルドなイメージが付いていったように思える。
73年の年末に公開されたのが小説、映画共に大ヒットした「日本沈没」である。個人的にも小説を読み、映画も見に行った記憶はあるが、小学生だったし、よくわかってなかったかもしれない。藤岡演じる小野寺はイメージ的に科学者だと思っていたが、あくまでも深海潜水艇の操縦者である。
主演扱いは博士役の小林桂樹で、総理役の丹波哲郎が次に来る。いしだあゆみが藤岡の恋人役。他に夏八木勲、中丸忠雄、村井国夫、神山繫、滝田裕介、角ゆり子、島田正吾、二谷英明など。角ゆり子は72-75年辺りに活動していた女優。本作にはノンクレジットで原作の小松左京、プロデューサーの田中友幸、物理学者の竹内均などが顔を見せている。
74年に入り藤岡は「野獣死すべし 復讐のメカニック」の主人公・伊達役に抜擢。他の出演者は黒沢年男、緑魔子、村井国夫、小松方正、真理明美、加藤嘉など。これは二度目の映画化で、最初は59年に同じ東宝で監督も同じ須川栄三での映像化あった。ちなみに主演は仲代達矢である。ただ、「野獣死すべし」と言えば、80年の角川映画・松田優作主演のものがイメージに強いのではないだろうか。
74年の年末に公開されたのが「エスパイ」である。
「日本沈没」と同じ小松左京原作のSF特撮だ。藤岡は主人公の田村良夫を演じる。こう言ってはなんだが、主人公らしくないネーミングである。草刈正雄演じる後輩の三木次郎とか敵役の内田勝正演じる巽五郎の方がまだ主人公っぽい名前に感じる。ヒロインは松竹時代に共演もあった由美かおるで、他に加山雄三、睦五郎、岡田英次、そして若山富三郎。日本ではお馴染みのウィリー・ドーシー、フランツ・グルーベル、ロルフ・ジェサーといった外国人俳優も大勢出演している。
そして75年は水谷豊の項で紹介した「東京湾炎上」。藤岡はテロ一味に乗っ取られるタンカーに乗り組んでいる地質学者という役柄である(もちろん強い)。この年は映画出演はこれ一作だったようだが、テレビ出演も多かったためであろう。
以上のように、70年代のこの時期は東宝のアクションやパニック系の特撮作品で活躍していたのである。